資源エネルギーに関する調査会(2017年05月31日)

国際原子力機関(IAEA)による総合規制評価サービス(IRRS)報告に基づく施策

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
 新規制制度について質問をさせていただきます。
 国際原子力機関、IAEAの総合規制評価サービス、すなわちIRRS報告書を踏まえ、原子炉規制法を一部改正したところと承知をいたしております。二〇一六年一月のIRRSの中で、指摘事項、勧告九において、検査制度を改善、簡素化すべき、指摘事項、勧告十では、検査官の訓練について検討すべきとされております。これらを踏まえ、平成二十九年度予算では、原子力規制委員会の組織強化と四十名の増員が図られております。また、検査制度の改善を図ることが重要との認識の上で人材育成を行うこととしていることも理解をいたしております。
 その上で伺いますけれども、規制機関として、これまでの検査制度の問題、課題点について総括をきちっと行っているのか、また、規制制度はどうあるべきであるかとの議論は行ってきたのか、確認をさせていただきたいと思います。

政府参考人(山田知穂君)  原子力施設に係る検査制度の改革につきましては、原子力規制委員会委員や外部有識者などをメンバーとする検討チームにおきまして、IRRSの指摘も踏まえて、過去の累次にわたる規制機関による検討内容も参考といたしまして、被規制者の意見も直接聞きながら、公開の場を設定をいたしまして議論をしてきてございます。
 検討した結果につきましては、現行の検査制度が抱える課題を総括した上で、新たな仕組みの構築に向けた考え方等を示すものということで報告書に取りまとめてございます。
 さきに成立をしていただきました原子炉等規制法の改正の内容につきましては、こうした議論を踏まえたものとさせていただいているところでございます。

三浦信祐君 日本の従来の検査制度について外部機関から指摘を受けたというのは事実です。一方で、自らの反省に基づいて制度見直しを行うのであれば、今後、検査実施機関として、規制の上でやるべきこと、またやってはいけないことなど、哲学、理念は明確になっていると考えますが、いかがでしょうか。加えまして、検査制度見直しのポイントをどのように考えているのか、田中委員長に併せて伺います。

○政府特別補佐人(田中俊一君)  まず、これまでの検査制度について申し上げますと、あらかじめその検査の内容等が決まっておりまして、検査をする期間、日取り等も決まっています。そういうことで、やや、何というんですかね、非常に機械的な検査、それに対応すればいいと、それを、その検査をくぐり抜ければ事業者としては十分だという考え方がどうしてもありました。
 しかし、新しい規制基準では、考え方として私どもが求めているのは、常に自らが安全を確保するために最善の努力をするということであります。そういったことを取り組む、そういった姿勢を慫慂するために新しいこの法律改正、検査制度を導入しております。ですから、私ども規制の立場からいいますと、いつでもどこでも何でも、常に現場に入って、あるいはいろんな点から検査ができるようにということで、それを、そういった検査をしていくことにしております。
 そういう中で、本当に重要なところに、安全上重要なところに絞った検査をしていくことによって、より効果的に安全を高めるということと同時に、被規制者の方、事業者の方はそういったことで、予見できないということにおいて非常に緊張感を持って検査に対応していただくということができるんだろうというふうに考えています。そのためには、私どもの力量を上げるということも重要で、そういった検査官のいろんな教育訓練も含めて、資格制度等も含めて今検討中でございます。

米国の原子炉廃炉監督プロセス(ROP)、原子力規制

三浦信祐君 ありがとうございます。
 安全上重要な点に絞ってというのはこれまでの規制とは大きく違うのではないかなと思いますので、これをしっかりやっていただきたいなと思います。
 その上で、検査制度見直しについて、米国の原子炉監督プロセス、ROPをひな形に設計しているとの認識は正しいかということを伺いたいと思います。
 その上で、米国NRCに人材派遣を行っておりますけれども、なぜ研修先をNRCとしたのか、研修の達成目標、どこまでの能力向上を目指しているのか、加えて、研修成果の達成を今後どのように活用するのか、田中委員長にお伺いします。

○政府特別補佐人(田中俊一君)  御指摘のように、今回の検査制度のモデルにしているのはNRCの検査制度です。これは幾つかの理由はありますけれども、米国の検査制度が世界的に見ても一番進んでいるということ、効果的に機能しているということがあります。それから、フランスもかなり進んでいるんですけれども、語学の問題もありますので、そういうことも含めてNRCということにさせていただいています。
 この検査制度、ROP、米国ではリアクター・オーバーサイト・プロセスということをやって、先ほど申し上げましたように、検査官が常にそこに常駐しながら検査をしていく、その結果をまたいろんな形で公表していく、あるいは評価していくということになっております。そういった考え方を現場で学んでもらうということで、それを学ぶということで五名昨年派遣しまして、新たに今年また更に五名を派遣します。この方たちには、是非これからの私どもの検査のリーダーとして現場を中心に働いていただいて、検査官はたくさんおりますので、そういった人たちの教育訓練等も含めてリーダーシップを発揮していただくということで、実質的に検査制度の充実を図っていきたいと、そういうふうに考えています。

委員会と事業者とのコミュニケーションについて

三浦信祐君 米国においてのROPの実効性が得られているというのは、長年の積み重ねと同時に、規制側と事業者側、これがコミュニケーションを細かくよく取りながら制度設計を進めてきた、これが成功要因であると、私はいろいろ聞いた中ではそう考えております。
 今後、新制度を構築するに当たって、どのような姿勢で事業者とのコミュニケーションを取っていくか、田中委員長の御見解を伺いたいと思います。

○政府特別補佐人(田中俊一君)  検査制度、我が国においては非常に抜本的なものですので、これを円滑に効果的に実施するためには、事業者にその趣旨をよく理解していただくということが必要であります。したがって、その前提としては、事業者との議論、率直な議論が非常に重要だというふうに認識しています。
 そういったことの取組を推進するための議論をするようなワーキンググループというのを規制庁の中につくりまして、そこには事業者の代表者の方にも参加していただいて、どういった検査制度がいいのかということを今検討しているところでございます。
 今後、そういうことをベースに新たな検査制度を導入してまいりますけれども、これは、検査、それを実行しながら更により良いものにするという改善を、これは私どもだけじゃなくて事業者の方から見てもそういった建設的な提案を酌み取りながら改善して、本当に原子力事業の安全の向上に期するように取り組んでいきたいと、そのように考えています。

三浦信祐君 これまでの検査の在り方と決定的に違うのは、受け身型であったと、これを自主規制型、要は能動的な方に変えていこうということだと思うんですけれども、その上で大事になってくるなと思うことがありまして、米国のROPというのは、検査に当たって主観性を極力排除して客観的な判断に委ねることが成功の鍵であったというふうにも聞いております。
 しかし、現状、日本では主観的要素が入る検査制度であった、また、そもそも客観性と主観性に対する議論が行われてきたとはちょっと感じられないのが実情だと私は思っております。
 特に、NRCのホームページでは、ROPに基づいて分かりやすく審査結果が出ておって、そして即時性も確保されている。要は、基本のプラットホームがしっかりしていて、その状態から通信簿のようにはっきり誰が見ても分かるような形態となっています。プラントごとの恣意的評価がない、透明性も高く信頼感がある、これがROPが信頼をされている原因でもあると思っております。
 事業者の自主規制を標榜するのであれば、米国のROPの成功例、特に客観性について学んでいくことが私は大事なのではないかなと思いますけど、委員長の御見解を伺います。

○政府特別補佐人(田中俊一君)  御指摘のように、恣意的な検査というのは排除しなきゃいけないし、予見性とか透明性を持ってきちっとした、事業者も納得できるような検査をしていくという意味で、アメリカの検査制度というのはよくできているというふうに思います。システムもよくできているというふうに私どもは認識しておりまして、それをまずよく学ぶと。実際、現在NRCに派遣されている人間は、現場に一緒に検査に入って現場で学んでいるということで、座学ではなくて体を使って学んでいるところでございます。そういった経験を踏まえて、かつ、そういったことをベースに、きちっとした客観的な検査制度をつくって、その上で検査の充実を図っていきたいと思います。
 それから、検査結果をどういう形で発表するか、公開するかということですが、米国の場合はこれをかなり明確に、フラッグを立てて色分けをして、イエロー、白とか赤とか、そういったことでやっていると思うんですが、そういったことも前向きに取り組んで、我が国に最も適切な検査制度の公開ということも透明性も図っていきたいというふうに思っています。

三浦信祐君 今委員長言っていただいたように、ホームページ見ると、グリーンフラッグ、白、そして黄色、赤とはっきり分かって、なぜ黄色だったのか、また、白でもどう改善すべきかというのが項目別にはっきり分かりやすくなっておりますので、その見える化を図るということも規制側としての矜持でもあるかなというふうに思いますので、是非御検討いただきたいと思います。
 その上で、米国では、ROP制度の導入をした後でも、規制機関と事業者が継続してコミュニケーションを取って、PDCAサイクルを回しながら効果的に改善を行っていると承知をいたしております。この点について規制委員会としてどういう認識を持っているか、伺いたいと思います。

政府参考人(山田知穂君)  安全性の向上には終わりはないという考え方の下、規制の運用の効果なども継続的に分析評価をいたしまして見直しを行っていくということは大変重要だというふうに考えてございまして、検討チームの報告書でも、制度の体系、運用の継続的改善を行う仕組みをあらかじめ構築しておくべきといった指摘もしているところでございます。
 現在は新たな制度の施行を準備している段階でございますけれども、その作業の一環としても、継続的に制度の体系や運用の評価、改善を行っていくための仕組みを整備をしていくという方向で検討を進めているところでございます。

三浦信祐君 その上で、あえて一つ提案をさせていただきたいと思いますが、日本独自の新たな規制制度をつくるというのも大切なことだと思いますけれども、素直に現在成功している米国のROPをそのまま日本に導入して、活用して、よく理解することが実効的規制制度への最短の道であると私は思います。その上で、経験を積んで、ROPをベースに米国とともにブラッシュアップしていけば効率的に最大効果が得られるのではないかなと。また、将来にわたって、今後世界にもそれが展開をされていったときに整合性を得ることにも直結すると私は感じております。
 新規制制度の運用開始である二〇二〇年まであと僅か三年で、中途半端にROPのようなものであったり日本独自のものだけを追求するのではなく、客観性が確立されている米国ROPを一旦そのまま導入していってはいかがかなというふうに私は考えます。
 例えば、飛行機でも、まずは外国の飛行機、ノックダウン制で部品を持ってきて組み立てる、その後はライセンス生産として部品を作ることから始めて同じものを作る。その経験をしっかりとして、新基準また新機体ということで新しいものをつくっていく、そういう考え方もあるのではないかなと思います。
 規制には待ったはなしだと思いますので、その部分に関してどうお考えか、伺いたいと思います。

政府参考人(山田知穂君)  先生に御指摘いただきましたとおり、まず足下を固めるという意味からも現行の米国の仕組みを基本とするということで考えているところではございますけれども、そもそもの法制度が若干違っておりますので、できる限り米国に倣ってというのを基本としてまいりたいというふうに考えてございます。
 さらに、さきに成立いたしました法律では、公布から三年、二〇二〇年の四月までに施行するということで規定をされてございますので、その間に仕組みを整備をいたしまして、その上で試験運用をして、それで直すべきところは直していくといったようなことで進めていきたいというふうに考えてございまして、こういったような取組を通じまして円滑な制度の導入を実現してまいりたいというふうに考えてございます。

検査人材の育成と力量向上について

三浦信祐君 これはもう期限が決められていますので、これは加速化していくことが私は大事だと思います。
 その上で、IRRSの指摘事項、勧告十、先ほども述べましたけど、能力向上について検討すべきとの提言を受けたこともあり、当然今後、委員長から先ほどありましたけれども、原子力規制検査に当たっては、事業者と同様に検査官の力量も問われていくことになると思います。相互の力量向上が制度見直しの成功要因で、実効性担保につながるものと私は考えております。
 その上で、人材育成には、教える側の能力、また何を教えるのかという哲学的問題、そして人材育成のベクトルは誰がどのように調整をしていくのかという三つの課題があると私は思います。これをどう考えているかということを一つ伺いたいと思います。
 加えまして、職員の派遣をNRCにされています。しかし、今後はNRCから人材を原子力規制委員会に派遣をしていただいて、今この試験段階のところも学んでいただいているこれから現場に行かれる方も踏まえて、そのNRCの職員を受け入れて、指導、助言並びに規制制度設計に直接関わっていただいてはいかがかなというふうに考えます。
 相互交流というのは将来の実用時に大いに効果があると私は考えますけれども、取組について委員長に伺います。

○政府特別補佐人(田中俊一君)  新しい検査制度を導入するに当たって、幸いなことに人の枠はかなり認めていただきました。その上で、これから重要なことは、御指摘のように、その質をどうやって高めていくかということになろうかと思っております。
 先ほども申し上げましたけど、こちらからNRCに出向いて学ぶといっても、それは限界がございます。ですから、今御指摘のように、NRCの方の事情もあろうかと思いますが、こちらに来て多くの規制庁の職員等を指導していただくというのは非常に望ましい形だと思っています。これまでも、数年前ですが、一年ほどNRCのベテランに来ていただいていろいろ御指導いただきました。その方が今回の派遣に当たっても、私ども日本の規制機関の職員はどういうレベルにあるかとかということについてNRCで非常に大きな役割を果たしていただいたというふうにお聞きしております。
 これは向こうの御都合もあろうかと思いますが、是非そういう方向で進めていって、総合的にできるだけ相互交流を図りつつ、検査制度の人材、検査に当たる人材の質の向上に努めていきたいと考えております。

三浦信祐君 検査制度の確立、是非皆さんのお力で頑張っていただきたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。