予算委員会(2022年5月30日)

補正予算の意義について

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
 補正予算についてまず伺います。
 コロナ禍に加え、ロシアによるウクライナの侵略の影響により、経済、経営環境が一段と厳しさを増しております。国民の生命と生活、これを守るために、物価高騰への対策、また梅雨どきの豪雨災害などの不測の事態に備えて十分な予算を確保し、そして危機感を持って対応するために、公明党は補正予算編成を強く求めてまいりました。
 当初予算の一般及びコロナ対策予備費を拠出し、現下の対策に充てるとともに、原油高騰対策と、またコロナ感染症対策予備費をコロナ感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費として使途拡大を図り、財源的根拠を明確にした今回の補正予算の意義について、岸田総理に伺います。

内閣総理大臣(岸田文雄君) 足下のウクライナ情勢に伴う原油価格、物価の高騰等については総合緊急対策によって緊急かつ機動的に対応してまいりますが、今後の災害、あるいは新型コロナの再拡大、またウクライナ情勢の長期化に伴う原油価格、物価の更なる高騰など、状況は予断は許されないと思っています。
 このような不透明な状況の中で、公明党の提言も踏まえ、今般の補正予算では、六月以降の燃料油価格の激変緩和事業に加えて、従来のコロナ予備費について、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費として使途を拡大し、一般予備費と合わせて五・五兆円の十分な水準を確保いたしました。
 これ早期成立を図って、これら予備費を適切に活用することで、今後、不透明な状況の中にあっても国民生活を守り抜くための万全の備え、これしっかり固めていきたいと考えております。

燃料油価格の激変緩和事業における公明党の要望の反映と内容について

三浦信祐君 国民生活が懸かっておりますので、一日も早く成立をさせた上で早く現場に届けることが大事だと思います。
 その上で、現場でお話を伺いますと、原油がいかに生活に、企業に影響を与えているかということを痛感をしております。原油価格高騰対策として、本年四月分までの燃料油に対する激変緩和措置を実施してきておりますが、公明党は、現下の市場環境を踏まえ、石油元売事業者に対する補助金について、価格の基準の引下げ、また大幅な上限の引上げ、そして対象拡充とともに延長を要望してまいりました。その上で、明確な財源を確保するために補正予算を充てるべきだと重ねて申し上げて、求めてまいりました。
 要望の反映と対応の内容について伺いたいと思いますし、また併せて、当初予算の予備費活用のみでは補充可能な期間は一か月分程度であるのに対し、六月から九月分の四か月分とした対応と期待、これについての効果、経産大臣に伺いたいと思います。

国務大臣(萩生田光一君) 燃料油価格が高止まりをしている中、国民生活や日本経済を守るために、御党からの御提言も踏まえまして、四月二十六日に取りまとめた総合緊急対策において、支給額の上限を三十五円まで引き上げた上で、基準価格を百六十八円に引き下げました。また、航空機燃料を対象に追加するとともに、今年度上半期中まで事業期間を延長することといたしました。
 ロシアによるウクライナ侵略などの予見し難い影響に機動的に対応するために、本年一月以降、予備費によるきめ細かな原油価格高騰対策を講じてきたところでありますが、引き続き六月以降も切れ目なく事業を実施していくために、今般の補正予算においてはこれに必要となる費用を計上しております。
 また、委員御指摘の効果については、五月二十三日のレギュラーガソリンの平均価格が全国で百六十八・八円となり、今般の激変緩和事業がなければ二百五・二円になっていたと予測されたため、三十六・四円の価格抑制効果が確認されています。このため、価格の急激な上昇を抑制するという本事業の目的は一定程度達成できていると考えておりますし、ガソリン以外の軽油、灯油、重油についても一定の抑制策が講じられていることが確認ができております。
 引き続き、原油価格の動向を注視しながら、国民生活や経済活動への影響を最小化すべく、本事業の実施にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

事業再構築補助金の原油価格・物価高騰等緊急対策枠創設について

三浦信祐君 ありがとうございます。
 コロナ禍で影響を受けております中小企業支援として、事業再構築補助金が実行されております。ロシアによるウクライナの侵略に伴う燃油、物価高騰など、経済環境の激変によりまして更なる業況が厳しい状態であることから、公明党としては、影響が重なっている事業者支援を図るべきだと求めてまいりました。
 これを受けて、今回、事業再構築補助金を拡充して原油価格・物価高騰等緊急対策枠、緊急対策枠と言われておりますけれども、これが新設をされております。事業者の皆様にいち早く届けることが重要であります。
 緊急対策枠の目的、また具体的な対象項目、それと制度設計の状況、また公募の時期について、経産大臣に伺いたいと思います。

国務大臣(萩生田光一君) 新型コロナの影響が続いている中で、原油価格や原材料価格が高騰するなど、中小企業を取り巻く事業環境は先行きの不確実性が増しているため、業況が厳しい事業者が事業転換を行い、新たな事業を開始するなど、今後は事業再構築に挑戦するニーズも高まっていくと認識しております。
 このため、新型コロナの影響に加えて原油高等の影響を受けている事業者の事業再構築の取組に対して可及的速やかに支援策を講じていく必要があることから、事業再構築補助金を拡充し、新たに緊急対策枠を創設することとしました。この緊急対策枠は、原油、原材料価格の高騰などによって今年一月以降の売上高が二〇一九年から二〇二一年の同月比一〇%以上減少していることなどを要件として、補助率を通常よりも引き上げて重点的に支援することを予定をしておりまして、近日中にも申請要件などの詳細を公表すべく準備を急いでおります。
 緊急対策枠の公募時期は、現在、執行団体と調整中でありますが、システム改修などの対応を早急に進めて、速やかに開始できるように準備を進めてまいりたいと思います。

地方創生臨時交付金の拡充と交付金を活用した給食費負担軽減について

三浦信祐君 いろんな補助制度で企業経営を守るということ、これがそのまま雇用を維持することにも直結すると思います。一方で、中小企業の皆さん、なかなか忙しくてこの情報に触れられないというのが最大のリスクになるケースもありますので、是非政府として、ありとあらゆる手段で、この枠を増やしたということ、対象者になるような方々へのプッシュ型で情報提供を是非やっていただきたいと思います。
 当初予算で計上しましたコロナ感染症対応としての地方創生臨時交付金について、公明党は、原油高騰や物価上昇で影響を受ける事業者、生活者への負担軽減へ地方自治体が機動的な対策ができるようにということで、拡充を要望してまいりました。
 物価高騰分が反映されますと、保護者にとって大きな負担になってしまうのが給食費であります。基礎自治体で期待が高いこの給食費の支援としては、一旦給食費を、値上げ分を御家庭に請求した後、払い戻す、若しくは負担額は変わらず物価の高騰分を給食の担当現場のところで充当をしていくということが想定をされます。給食調理に掛かる光熱水料の増加も給食費負担に付加せざるを得ない場合もあります。
 また、自治体が事業者と一括長期契約している場合には、保護者負担を求めないというふうにしました場合には、コスト上昇分を上乗せすることができずに、食材納入業者がコスト上昇分を吸収させられてしまうという可能性もあります。これは下請取引上、問題となります。
 野田大臣、拡充要望へのまず対応について伺いたいと思いますけれども、地方創生臨時交付金を学校給食の費用負担軽減へ、現場の実情に即した自由度の高い対応ができるように、質問や相談を丁寧に行い、具体的事例も示していただきたいと思います。自治体がこれ決断しませんと生活者に届かないというパターンでありますので、これを提供できるように、決断しやすいように是非アドバイスをしていただきたいと思います。大臣、取り組んでいただけませんでしょうか。

国務大臣(野田聖子君) お答えいたします。
 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金については、コロナの影響が続く中で、物価高騰の影響を受けた生活者や事業者の負担の軽減を自治体が地域の実情に応じてきめ細やかに実施することができるよう、コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分を創設し、一兆円を確保いたしました。
 各自治体においては、本対応分を活用し、学校給食等の保護者負担の軽減に向けた取組を行っていただくに当たっては、委員御指摘のとおり、地域の実情に応じて様々な方法があると考えています。本対応分は、コロナ禍において原油価格、物価高騰に直面する生活者や事業者を支援する事業を対象としており、保護者の負担を軽減する取組のほか、学校給食を提供する事業者のコスト低減に資する支援など、地域の実情に応じて活用いただきたいと考えております。
 政府としては、今回、支援措置が円滑に進められるよう、自治体からの質問や相談に丁寧に応じることにより自治体の取組をしっかり後押ししてまいります。

父母からの虐待を理由に避難した大学生等への奨学金支援について

三浦信祐君 是非、自治体の方、どうすればいいかと思ってこのテレビを見られている方は、よし、これで質問しようと思っていただけると思います。我々も、地元の議会の方からもしっかり押し上げて、生活者の一番子育ての部分に負担を掛けないと、そのための地方創生臨時交付金でありますから、是非丁寧に対応いただきたいと思います。
 私の地元、神奈川県横須賀市で、父母からの虐待で民間シェルターに避難された大学生が休学と生活困窮により一時的に生活保護を受けました。その後、復学を目指しましたが、復学すると生活保護が打切りになるために退学か休学の選択が迫られました。生活保護制度見直しを厚労省に相談するも、困難との対応でありました。そこで、横須賀市は、匿名の方からの寄附を財源に市独自の支援制度を設けられました。大変すばらしいことだと思います。しかし、自治体頼みであってはいけません。奨学金制度の対応が必要だと私は考えます。
 日本学生支援機構の奨学金には、学生さんが家計急変した場合に修学継続への支援として随時採用される制度があります。ところが、対象は、学生の父母の死亡、事故、病気、災害やコロナウイルス感染症の影響等に限定をされておりまして、虐待を理由に父母の元から避難した学生さんは対象外になっています。
 文科大臣、修学支援新制度の家計急変の事由に虐待からの避難も追加して、随時採用の対象として運用を変えていただきたいということ、そして教育委員会、各種大学と福祉関係団体等へ通知も発出をしていただいて、即座に決定をして、一人も漏れないように体制構築を図っていただきたいと思います。誰一人取り残さない社会、修学を断念しない社会をつくるためにも、是非御決断をいただいて救ってあげていただきたいと思います。いかがでしょうか。

国務大臣(末松信介君) 三浦先生にお答えを申し上げます。
 経済的に困難な学生等が学びを諦めることのないようにしっかりと支えることが大変重要です。
 御指摘のありました虐待等を理由に避難した学生からの奨学金の申請につきましては、現状、春と秋の年二回の定期採用において受付対象としているものの、家計急変による随時の受付対象とはいたしておりません。しかしながら、三浦先生御指摘のとおり、避難の時期によっては長期間支援を受けられず、修学の継続が困難になることも考えられることから、虐待等を理由に避難した場合につきましては新たに随時受付の対象とするよう制度を改善いたします。その予定でございます。
 今後、児童虐待等を所管します厚生労働省ともよく連携をしまして、学生からの相談を受けることになる大学等や地方自治体の福祉部局に対し早期に周知を行うことで、これら困難な状況にある学生等が進学、修学を断念することのないように制度の適切な運用に努めます。

企業による奨学金返還支援のさらなる拡大へ、文科省の取り組みについて

三浦信祐君 大臣、ありがとうございます。この声は確実にお子さんに届いていると思います。
 父母による虐待はあってはなりません。しかし、政治も、また行政も誰一人取り残さないという社会をつくらない限り、いろいろな政策を打っても一人取り残させてしまってはいけないと、こういう社会をつくり上げる、明確な御決断をいただいたことに心から感謝申し上げたいと思います。
 公明党が国会質疑等にて一貫して訴えてまいりました企業による奨学金返還支援。人材確保、地方創生に効果があり、多くの企業の皆さんに活用していただきたいと思います。
 ところが、企業経営者、担当者も、また受益をする可能性がある大学生も、この制度を意外と知られておりません。奨学金返還の負担軽減へ、文科省が先頭になって、企業による奨学金返還支援を企業に周知をしていただくこと、また導入への努力を重ねて拡大をしていただくこと、末松大臣、是非取り組んでいただけませんでしょうか。

国務大臣(末松信介君) 三浦先生に御指摘をいただきまして恐縮です。ありがとうございます。
 企業によります奨学金返還支援として、奨学金の返還を行っている社員に代わって企業が直接日本学生支援機構に返還するこの代理返還制度につきましては、これまでに日本経済団体連合会等の企業団体に依頼をしまして傘下の企業へ制度の紹介を行ったほか、大学等のこの就職担当宛てに代理返還を行う企業リストを送付をいたしまして学生等の就職活動に活用してもらうよう依頼を行うなど、周知と導入に努めてまいりました。
 こうした取組によりまして、制度開始の直後の令和三年四月時点では六十五社が登録をしまして四十五人が支援対象であったところ、一年後の今年四月時点で三百四十八社、八百九十四人に拡大をいたしております。
 先般取りまとめました教育未来創造会議の提言におきましても本制度の活用を推進するための仕組みの検討が盛り込まれているところでありまして、今後、同会議において夏までに作成される工程表を踏まえまして、その具体化に向けた検討を進めてまいりたいと思います。努力を続けたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

G7首脳会議の広島開催決定への経緯と意義について

三浦信祐君 是非お願いしたいと思います。
 総理に伺います。
 日米首脳会談を含めた平和構築への外交努力について伺いたいと思います。
 公明党は、広島、長崎への原爆投下以降、七十七年に及ぶ核兵器の不使用の記録を継続すること、世界唯一の戦争被爆国として、被爆の実相をG7首脳と共有し、核兵器なき世界の実現へ議論を深める機会とすべく、G7首脳会議を広島で開催すべきことを総理に求めさせていただきました。
 今回、G7首脳会合を広島で開催することを決定されました。この経緯と意義、そして先般の日米首脳会談での核廃絶に対するバイデン大統領との議論について、総理に伺いたいと思います。

内閣総理大臣(岸田文雄君) 山口公明党代表からは、先般、G7首脳会議を広島で開催することなどを求める提言、私自身いただきました。世界がウクライナ侵略、大量破壊兵器の使用リスクの高まりという未曽有の危機に直面している中、来年のG7サミットでは、侵略も核兵器による威嚇も国際秩序の転覆の試みも断固として拒否するというG7の意思を歴史に残る重みを持って示していきたいと考えています。
 その上で、広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はないと考え、来年のG7サミットを広島で開催することを決定いたしました。G7広島サミットでは、核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを世界に示し、G7首脳とともに、平和のモニュメントの前で、平和と世界秩序とそして価値観を守るための結束をしていくこと、これを確認したいと思っています。
 先般の日米首脳会談では私からバイデン大統領にもこうした考え方を伝え、G7広島サミットの成功に向けて共に取り組んでいくこと、これを確認いたしました。また、核兵器をめぐる状況が厳しさを増している今だからこそ、核軍縮・不拡散に関する現実的、実効的な取組を進め、核兵器のない世界に向け共に取り組んでいく、こうしたことでも日米で一致をした次第であります。

日本の安全保障体制強化に資する日米首脳会談の成果と日米安全保障の強靭な体制について

三浦信祐君 極めて大事な御答弁をいただきました。外交努力の、そしてまた総理の決断、これ、しっかりと後押しをしてまいりたいと思います。
 ロシアによるウクライナの侵略により、世界の秩序が乱れ、世界の安全保障環境が激変し、そして日本の安全保障環境も幾重にも厳しさを増しております。日本の安全保障環境の、また体制の強化には、外交力、防衛力、経済、金融、財政のマクロ経済力、技術力などを俯瞰的に整える必要があると私は考えております。その外交、防衛力の基盤となる日米同盟の強化が、日本を含むアジアでの力による一方的な現状変更の試みを抑止することになります。
 先般の日米首脳会談こそ外交努力の結果であります。今回の首脳会談の成果、そして現下の安全保障環境を踏まえた日米安全保障体制の強靱化についてどのような方向性を得ているか、総理に伺いたいと思います。

内閣総理大臣(岸田文雄君) ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序の根幹を揺るがす危機に直面する中、今回の首脳会談において、バイデン大統領との間で、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け日米が国際社会を主導していく、こうしたことで一致をいたしました。
 その上で、今回の会談では、私から、日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン大統領からはこれに対する強い支持がありました。また、現在直面する挑戦に効果的に対処するためには、日米同盟の抑止力、そして対処力、これを早急に強化する必要があり、日米で安全保障、防衛協力を拡大、深化させていく、こうしたことでも一致をした次第であります。

日米首脳会談にて伝達した防衛力を抜本的強化、防衛費の相当な増額の方針について

三浦信祐君 これを示していくということは大変重要なことだと思います。
 私は、十八年間、この議会に送っていただく前は、防衛大学校の教官として幹部自衛官となる学生さんを育成する仕事に携わらせていただきました。今もこの瞬間も国民の皆様の生命と財産を守るために多くの卒業生が幹部自衛官として任務に当たっていただいていること、私にとって誇りでもありますし、感謝もしております。その卒業生が安心して任務に当たれるように、安保環境に即した必要な装備品、また防衛体制を構築する、現に足りていない部分に防衛予算を増額をして充当するなど、これを通して課題を解消することは当然私のルーツから考えても行っていただきたいと、ここはお願いしたいと思います。
 その上で、バイデン大統領に対し、先ほど総理からもありましたが、日本の防衛力を抜本的に強化し、防衛費の相当な増額を確保する方針を伝達したことについて、国民の皆様の不安解消へ、力による一方的な現状変更への試みが生じないよう、必要な取組として総理の決意を重く受け止めていきたいと思います。この決断、伝達の背景について、総理に伺いたいと思います。
 その上で、防衛力について何が必要で何が足らざるかということを明確にするために可及的速やかに議論をしていただきたいと思います。総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがすものであり、また我が国の、我が国を取り巻く安全保障環境、急速に厳しさを増している、このように認識をしています。そのためには、一つは、それに対応するためには、一つは我が国自身の防衛力の抜本的な強化、そしてもう一つは日米同盟の抑止力、対処力の強化、この二つが重要だと認識をしています。
 こういった観点から、日米首脳会談において、日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明したという次第であります。
 そして、今後の議論についてですが、新たな国家安全保障戦略等を策定する中で、国民の命や暮らしを守り抜くために何が必要なのか、十分な装備ができているのか、こういったことについて具体的あるいは現実的にしっかりと議論をし、あらゆる選択肢を排除する、排除せず、スピード感を持って議論を行っていきたいと思います。
 その中で、必要なものが何なのか、そしてそのために予算がどれだけ要るのか、事を具体的に詰めていきたいと考えております。

持続可能な防衛力整備に資する金融・経済・財政面からの脆弱性について、財政制度等審議会の分科会で議論された防衛関係費について

三浦信祐君 スピード感を持ってと御答弁をいただきました。ありがとうございます。
 財務省の諮問機関であります財政制度審議会の分科会における防衛関係費の議論がなされ、先日二十五日には建議が提出をされました。パネルを御覧いただきたいと思います。(資料提示)
 持続可能な防衛体制の構築として二つの視点が論じられております。省略しますけれども、真に有効な防衛力の強化への具体的な議論を求めることと並行して、経済、金融、財政のマクロ経済の脆弱性解消、強化を示しております。
 この提言の背景、なぜ今のタイミングにこれを出されたのか、財務大臣に伺いたいと思います。

国務大臣(鈴木俊一君) 我が国はこれまでアジアの中での立ち位置を常に考えながら安全保障や防衛力について考えてきたと、そのように認識をいたしております。
 昨今、我が国の、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増しておりまして、防衛力の抜本的強化に向け、政府として国家安全保障戦略等の策定に取り組んでおります。
 こうした中、昨今のウクライナ情勢について、これを対岸の火事としてではなくて、我が事として考えれば、軍事的緊張は経済、金融、財政に甚大な影響を与え得るものであり、国家の資金や物資の調達能力の脆弱性、これは安全保障上のリスクに直結する問題であると考えています。
 御指摘の財政制度等審議会においては、こうした問題意識が提示された上で委員間で活発な議論が行われ、防衛力を強化することと、有事に十分耐えられる経済、金融、財政を構築すべくマクロ経済を運営すること、これらを両立させ、持続的に進めることの重要性が共有されたと承知をいたしております。
 私も、歴史の転換点の一つとも言い得る状況の中で、我が国の財政や金融を預かる者といたしまして、責任ある議論が必要であると強く感じております。

防衛力整備強化と財政基盤強化との関係性、脆弱性解消の実行体制について

三浦信祐君 今、これ大切なことを提示されていると思います。
 防衛費を必要な分充足する、これは当然行うべきであります。しかし、防衛費を単発ではなくて、維持、増強するためにやるべきこと。そして、脆弱性が結果として防衛力へ甚大な影響を及ぼす、経済、金融、財政への脆弱性を当局が示したということは、これ、財務省の皆さん、ふだんはよく批判ばかりされますけれども、明確にここは矜持を示したんではないかなというふうに思います。
 次のパネルを御覧いただきたいと思います。具体例が挙げられています。
 日本において、有事に想定される経済、金融、財政の脆弱性として、物資を確保するために必要な外貨確保が急務となること、また経済状況激変による日系企業、金融機関の収益の低下、資金繰り難、国内金融資産からの逃避や物価高騰などが発生することを予想しております。
 平時から、防衛力強化のみならず、有事に耐え得る経済、金融、財政とするマクロ経済運営が必要であります。防衛力の面と金融、経済、財政面における脆弱性の解消というのは両輪であり、両立を図るべきであります。どちらかに偏った議論は決して正しいものではないと思います。
 有事に対する脆弱性解消へ、政府全体として実行体制の具体的な展望、取組についてしっかりやっていただきたいと思います。財務大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(鈴木俊一君) 先週、衆議院の予算委員会で総理から御答弁があったとおり、今後、政府として、新たな国家安全保障戦略等の策定や今後の予算編成過程において、抜本的な防衛力強化の内容、その防衛力強化の内容に相当する防衛費の規模、防衛費増の裏付けとなる財源の在り方を一体的に検討していくことになると、そのように考えております。
 こうした議論は国家安全保障会議を中心に進められていくと考えておりますが、先生御指摘のとおり、防衛力の抜本的な強化とともに、有事に十分耐えられる経済、金融、財政を構築させるためのマクロ経済運営を両立させることが重要であると考えておりまして、私といたしましてもしっかりと問題提起をしていきたいと考えております。
 また、その際、国民的な議論を積み重ねていくこと、これも重要であるということも申し添えさせていただきたいと思います。

防衛力予算と財政基盤強化との両立を図るための決意

三浦信祐君 大事な御答弁をいただきました。
 総理に伺いたいと思います。
 これまでの財務大臣からの議論、答弁を踏まえた上で、総理の見解と、また具体的な取組を伺いたいと思います。
 防衛力の強化というのは防衛省予算のみに注目をされますが、真の国防を考えるならば、持続可能な財源の確保、経済の弱点を解消すること、そして科学技術の発展、また国内産業の強化等、総合力で私は考えるべきだというふうに思っております。国民の生命と暮らし、財産を守るためにも、必要な防衛費の概念を総合的な視点で組み上げていただきたいと思います。改めて総理の見解を伺いたいと思います。

内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、我が国の安全を確たるものにするためには、防衛力の抜本的強化のみならず、政府として総合的な取組が必要であると考えます。
 具体的には、科学技術の発展やイノベーションを強力に進め、我が国産業の国際競争力を高めるといった各種の取組によって経済を再生し、我が国の国力を総合的に高めるべきであると思います。また、有事においても資金や物資を調達できる余力を確保できるよう、経済財政運営を進めていくことも重要であると考えます。
 こうした取組によって、この総合的な取組によって国民の生命と財産を守り抜く体制を万全なものにしていく、こうした発想が重要であると考えています。

真に必要な防衛力整備としての無人航空機の位置付けと国産化について

三浦信祐君 まさに備えるためには、世界に売れるものを伸ばしていくということ、そして価格交渉力を付けていくということが極めて大事だと思いますので、総理のリーダーシップで進めていただきたいと思います。
 真に必要な防衛力整備の基盤として、地上と空中の中間高度となります千メーター以下の高度域の防空体制が重要だというのが今の世界の認識だと思います。
 現下の防衛戦略では、ミサイル防衛等の高い空の部分の体制にリソースを割いているのが今の日本の状況であります。宇宙、サイバー、電磁波に加えて、無人航空機を第四の戦闘領域とも位置付ける、そのようなぐらいの必要性があるというのが私は今考えておるところであります。
 その上で、スピード感を持った装備品導入へアップデート型で開発、試験、運用をサイクル化する、すなわち完成品ができるまで待っていられないというスピード感もありますので、こういうふうな形も取っていただきたいと思いますし、また国内の防衛産業体制を構築すること、研究開発を加速して国産化を無人航空機に対しても図れるように是非取り組んでいただきたいと思いますが、防衛大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(岸信夫君) 近年、経空脅威は多様化しております。
 自衛隊によるドローン等の無人機への対応は、我が国の安全保障上極めて重要な課題であると考えています。
 防衛省・自衛隊として、様々なドローン攻撃に対して万全の対応を図るため、攻撃、小型攻撃型のUAVからの防護手段の研究や高出力エネルギー技術の研究などの各種取組を進めています。また、いわゆる、いわゆるドローンを約千機保有し、偵察など各種任務を遂行するための情報収集等の目的で使用をしています。
 その上で、新たな装備品の導入においては、将来の脅威、要求性能や部隊運用上のニーズ及び費用対効果を踏まえつつ、より短いスパンで設計、製造、配備、運用、能力向上を繰り返すいわゆるアジャイル型研究開発を検討する必要があると考えています。
 防衛省としては、こうした観点を踏まえつつ、我が国の防衛生産、技術基盤の維持強化に向けて取り組んでまいります。

衛星通信を活用した日本近海での艦艇における電子家庭通信の実現について

三浦信祐君 持続可能な防衛力整備には厳しい任務に当たる自衛官の任務環境改善も不可欠であります。
 自衛官の皆さんも家族がおられます。海上自衛隊の艦艇希望者が激減しているのが現状であります。その理由の一つに、出航中に家族や友人と連絡が取れていないということも挙げられます。
 私は、この改善のために、日本の近海で航海中の艦艇乗員と御家族が通信できるように、大容量かつ秘匿性が維持できるKuバンドという衛星を活用すべきだとこれまで提案をしてまいりました。また、艦艇内の特定のエリアでしか利用できないWiFiを隊員の居住区域でも通信可能とするようにも求めてまいりました。防衛省の皆さんは即座に対応していただいて、検証を実施していただきました。
 先日、海上自衛隊の横須賀基地にて検証を行った護衛艦を訪ね、隊員の皆さんから感想を伺いましたところ、任務に支障もなく大変好評で、特に御家族から喜ばれたそうであります。連絡が取れる、特に三月から四月のこの学校が替わっていくときに、相談したいときに今まではできなかったことがその船ではできたということであります。
 日本近海任務における海上自衛官、艦艇乗員が家族等と通信しやすい環境を整えるために、Kuバンド衛星回線を利用した体制への整備、岸大臣、是非実現をしていただけませんでしょうか。

国務大臣(岸信夫君) 今委員御指摘のとおり、海上自衛隊の艦艇での勤務環境が厳しいということがこれまでも敬遠されてきた要因の一つではないかというふうに考えております。
 海上自衛隊の艦艇では、防衛省が整備をしたXバンド衛星と民間の通信衛星であるKuバンドやインマルサットなどを使用して、各種任務を遂行するために必要となる指揮命令の伝達及び情報共有を行っています。また、艦艇で勤務する隊員とその家族等との連絡のため、任務遂行に支障のない範囲でインマルサット衛星を使用した家庭通信を実施しているところであります。
 防衛省として、艦艇における任務遂行のための通信と同様に、福利厚生のための通信も重要と考えております。このため、日本近海において、インマルサットに比べ大容量通信が可能なKuバンド衛星回線の利用拡大を含む、観点の通信環境改善の早期実現に向けて取り組んでまいります。

外交安全保障上の国際交流人的基盤の強化に資する防衛大学校における世界各国留学生の受け入れ拡充について

三浦信祐君 取り組んでいただけること、ありがとうございます。皆さん喜ばれると思います。
 我が国の外交安全保障の強化には、人的側面における強靱化も欠かせません。国際的な交流、人的基盤は、短期的視点ではなく長期的な関係性をつくり上げていくとともに、いざというときへの対処可能な体制を構築する必要があります。特に、アジア諸国との強力な連携体制と友好関係強化は必須であります。防衛力と外交の両輪をしっかりと進めていく必要があります。
 そこで、防衛大学校の果たす役割は重要でありまして、将来を担う国防のリーダーとなる各国の留学生の防衛大学校への受入れの更なる拡充、充実、また防衛大学校生の海外士官学校への派遣、留学の機会の増加を図っていただきたいと思います。総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(岸田文雄君) これまでも、防衛大学校において東南アジア諸国を中心に数多くの留学生を受け入れているほか、学生を諸外国の士官学校に派遣をする、こうした取組を進めてきております。これらは、委員おっしゃるように、中長期的な人的関係を構築する、またアジア諸国等との関係強化にも資する、こうした大きな、大きな効果のある取組であると思っています。
 是非、今後とも拡充していくことが重要だと認識をします。是非、そうした認識で取組を進めていきたいと考えます。

三浦信祐君 総理、御決断いただきましたこと、ありがとうございます。
 あしたに質問の時間を使わせていただきたいと思います。ありがとうございました。