国土交通委員会(2019年5月21日)

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
 水防災について質問をさせていただきます。
 平成二十七年に改正された水防法に基づいて、去る四月の十九日、東京湾沿岸、神奈川県区域間における高潮浸水想定区域の指定、公表が行われました。その中でも、高潮に関わる水位周知制度による高潮特別警戒水位の設定、公表は日本で初めてであります。これによって、高潮による水害の影響地域、期間、水深等がシミュレーションされた結果が示されることとなりました。川崎市川崎区内の多摩川寄りの地域を見ますと、水害リスクが高いというふうに今回の結果では出ております。
 今般、高潮浸水想定区域の指定を行った理由について、また、この指定によって今後どのような取組が行われていくことになるのでしょうか。

政府参考人(塚原浩一君)  お答え申し上げます。
 近年、洪水や高潮等によります浸水被害が多発をしております。こうした浸水被害に対応した避難体制等の充実強化を図るという目的で、平成二十七年に水防法が改正されました。この改正によりまして、想定し得る最大規模の高潮による氾濫が発生した場合に浸水が想定される区域を高潮浸水想定区域として都道府県知事が指定するといった制度が創設されたところでございます。
 神奈川県におきましては、この水防法に基づきまして、本年四月に、神奈川県内の東京湾沿岸におきまして、過去に我が国を襲った最大級の台風であります室戸台風級の台風を想定いたしまして高潮浸水想定区域の指定をいたしたところでございます。
 この指定等を踏まえまして、今後の取組でございますけれども、川崎市等の沿岸の市は、県と連携しながら、気象情報や水位情報の伝達方法あるいは避難場所等が記載された高潮ハザードマップの作成及び住民への配布等を行っていくということになります。また、市は、必要に応じまして、浸水想定区域内にある地下街や要配慮者利用施設等を地域防災計画に定めまして、その所有者等が浸水防止計画や避難確保計画の作成等の措置を講ずることとなります。
 さらに、海岸の水位が県の設定いたしました水位、御指摘ございました高潮特別警戒水位でございますけれども、この水位に達した場合、県は氾濫危険情報を発表し、報道機関等の協力を得て住民等に周知をすることになっております。沿岸の各市は、水位の状況等に応じて避難勧告等の発令等を行うこととなります。
 国土交通省といたしましても、高潮による浸水被害を防止、軽減するため、県や市の取組に対して支援をしっかりと行ってまいりたいと考えております。

三浦信祐君 これ、非常に重要な取組だと思います。見える化を図っていくということ、そして住民の皆さんにとっての命が守られるために必要な情報提供でありますので、これをまず全国に広めていただきたいということを冒頭お願いをさせていただきたいと思います。
 その上で、高潮浸水想定区域の指定に伴いまして、被害に関する情報提供や避難場所等のハザードマップ、マイタイムラインの策定、あるいは地域によって住民の皆さん、地域内での事業者の方々が協力をして、まるごとまちごとハザードマップを導入するなど命を守るために必要な情報を見える化すること、すなわち、ソフト面での取組を強化し、具体的な避難対策に取り組むことになると思います。いずれにせよ、住民の皆さんの協力が必要であり、そして、それが連携をして、人の命がその水害によって落とすことがないという社会をつくっていくためには大事なことだというふうに理解をしております。
 一方で、分析をされ指定された地域では、高潮による想定された浸水を生じさせないためにハードを整備をしていくということが不可欠であります。今般の神奈川県の県水防協議会の目的から見ると、ソフト面を整理することがゴールであり、ハード整備への具体的連携体制とはなっていないというのが私が承知をしているところであります。住民の命を守る観点から、分析により得られた想定区域の結果をハード整備に反映をしていく制度、連携をしっかり図っていくことができるようなふうにしていただきたいというふうにお願いをさせていただきます。
 その上で、川崎市では、海岸からの海水流入のみならず、河口となっている多摩川からの流入が想定をされております。多摩川からは洪水による浸水も脅威であります。したがって、洪水対策及び高潮対策として堤防整備も連動する必要があると思います。
 国として、高規格堤防、いわゆるスーパー堤防の整備を進めていくことと承知はしておりますけれども、整備によって得られる効果とまちづくりの点からの利点、さらに多摩川における現状の進捗状況はどのようになっているのでしょうか。
 私の理解では、スーパー堤防の整備に係る予算のそれぞれの負担、費用負担応分というのは国が三分の二で県が三分の一であるとも認識をしております。この点も確認をさせていただきたいと思います。

政府参考人(塚原浩一君)  お答え申し上げます。
 高規格堤防でございますけれども、通常の堤防と比較して非常に幅が広い堤防でございまして、越水あるいは浸透等に対しても決壊をせず、多摩川等の首都圏や近畿圏でも整備をしておりますけれども、首都圏や近畿圏において、堤防決壊により多くの人命が失われることや壊滅的な被害が発生することを回避するものでございます。
 また、堤防の町側ののり面が非常に緩やかになりますので、その堤防の上を通常の土地利用をしていただくということが可能となります。このため、沿川のまちづくりや土地利用の転換に合わせて整備をすることによりまして、災害時の住民の貴重な避難場所、被災者の救助活動や救急物資の輸送、供給などの活動拠点としての効用なども期待できます。また、木造密集地域あるいは狭隘な道路の解消などによりまして良好な住環境あるいは都市空間を提供するといったことが可能になるなど、多様な効果が期待されるところでございます。
 多摩川におきましては、現在、国道一号線多摩川大橋より下流で整備を進めておりまして、進捗状況は、整備区間約十五・三キロのうち、現在、その一八%程度に当たります二・八キロの整備が完了しているところでございまして、現在、そのほか一か所で整備を進めているところでございます。
 事業の負担割合については、先生御指摘のとおりでございます。

三浦信祐君 スーパー堤防の整備に当たりましては、住民の理解が不可欠であります。住民の方々に経済負担をしていただくということがないとこの事業の推進はできないという部分もある面も、現場ではそういうふうな理解となっております。
 本年、整備の加速化を図ることを目的に、スーパー堤防特別区域内の新築の家屋に係る税額の減免処置、固定資産税減税の特例処置を与党として推進をして、創設をされております。この期間は三年となっておりますけれども、現状、この間でスーパー堤防整備予定の地域はあるのでしょうか。
 その上で、スーパー堤防を整備するに当たり、課題は何でしょうか。また、課題を解決し、整備を進展させていただきたいと思いますけれども、必要な取組はどのようなことになるのでしょうか。

政府参考人(塚原浩一君)  高規格堤防の整備に当たっては、沿川のまちづくりに合わせて整備を行うという必要がございます。また、整備区域内の家屋等につきましては、整備前、それから整備後、二度移転をしていただくということも必要になります。そういったことから、地元自治体との連携、また地元住民の皆さんの御理解、御協力、これが不可欠だというふうに考えております。
 このような住民の皆様の御理解、御協力をいただくために、先生御指摘のとおり、高規格堤防の整備に伴う建て替え家屋に係る税額の減額措置、これを新たに創設したところでございます。
 現時点では、大阪府の方でございますけれども、堺市の大和川の左岸で整備中の地区におきましてこの制度を適用される見込みというふうに考えております。
 また、まちづくりとの連携を進める上では、やはり地域、地方自治体等との連携が非常に重要だと考えておりまして、例えば多摩川では、川崎市と多摩川下流水辺とまちづくり川崎市協議会を設立をいたしまして、高規格堤防と市街地整備等の一体的な推進、水辺空間を生かしたまちづくりなどを進めるために、定期的に意見交換等を実施をしているところでございます。

三浦信祐君 大臣に最後に伺います。
 このスーパー堤防の整備というのは、極めて住民の皆さんにとっても重要なことであると思います。今御答弁ありましたように、国はしっかりここを整備をしたいと、一方で地域の理解が必要であると。今後の指針また方針について、大臣から明確な答弁をいただきたいと思います。

国務大臣(石井啓一君)  高規格堤防は、首都圏や近畿圏の人口、資産等が高密度に集積をしておりますゼロメートル地帯等の低平地において、堤防決壊により多くの人命が失われることや壊滅的な被害が発生することを回避するため、整備を進めているところでございます。
 近年、平成二十七年の関東・東北豪雨、平成三十年七月豪雨など、毎年のように全国各地で洪水による大規模な浸水被害が頻発をしており、気候変動による水害の頻発化、激甚化を踏まえると、高規格堤防の整備がますます重要と認識をしております。
 このため、関係自治体との連携をより一層深めまして、地域住民の理解と協力を得て、多様な効果を発揮する高規格堤防の整備をまちづくりと一体となって加速化していくことが重要と考えております。

三浦信祐君 是非加速化をお願いしたいと思います。
 終わります。
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