厚生労働委員会(2017年06月08日)

医務技監の条文上の職務

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。早速質問に入らせていただきます。
 先ほど来、この法案審査という部分でありましたけれども、今回の厚生労働省設置法第五条第三項に医務技監の職務内容として、「厚生労働省の所掌事務に係る技術(医学的知見を活用する必要があるものに限る。)を統理する。」とされています。すなわち、ここでのポイントというのは、医学的知見ということと、それを活用する技術ということだと思います。
 その上で、具体的に、先ほど足立先生からもありましたけど、医学的という表現を使っておりますので、若干幅が狭いかなという気もしないでもないではありますけれども、医学的知見を活用する必要があるものが何を指すのか、具体例を挙げながら御説明いただければと思います。

政府参考人(福田祐典君)  お答えいたします。
 近年の保健医療技術の進歩は目覚ましく、ヒトゲノム解析でございますとかAI、人工知能などの技術革新によりまして、個別の疾病予防や治療などの観点のみならず、社会保障や公衆衛生などの幅広い分野におきましてこうした技術の進歩を施策に応用することが可能となる段階を迎えているということでございます。また、国際保健の分野におきましても、エボラ出血熱、ジカウイルス感染症の流行など、公衆衛生危機への対応や高齢化に関する国境を越えた取組促進等のため、医学的知見に基づきます一元的な施策の推進の必要性が高まっているということでございます。
 こうした保健医療分野や国際保健分野におきます厚生労働省の所掌事務を医学的知見に基づきまして総括整理をする次官級の職として医務技監を新設するものでございます。
 以上でございます。

三浦信祐君 その上でお伺いしますけれども、医務技監の役割として四つ掲げられていると思います。一つ目は、医療技術の革新を保健医療施策に反映、二つ目に、医療関係者とハイレベルの調整、三つ目に、国際保健外交で日本が貢献するための中心的機能、四つ目として、国内健康危機事案に対する公衆衛生上の専門的立場から、内閣官房と連携して対応し、国民に正確な情報発信を行うこととされております。
 すなわち、多岐にわたって総合的、包括的に携わっていくのが医務技監の役割だと思いますけれども、大事になってくるのは、どのような人材を登用していくということ、また、そういうところに役割としてどのような人材育成プロセスを考えておられるか、ここを古屋副大臣に伺いたいと思います。

副大臣(古屋範子君)  ただいま三浦委員からは、医務技監の役割、述べていただきました。
 その医務技監に必要な資質といたしましては、職務の性質上、まず、技術革新、国際保健、危機管理等に対して的確に対応できるよう、保健医療に係る専門知識を持っていること、そして、保健医療施策を統理するために行政組織のマネジメントを適切に行うことができることが重要だと考えております。こうした資質を獲得するためには、医療現場に関する知識、経験のほかに、国また地方自治体などの行政経験、また国際機関における経験など、多様な経験も必要だと考えております。
 厚生労働省としては、職員のキャリアパスにつきまして、本省のみならず、国際機関や自治体等の多様な組織で政策の企画立案や組織マネジメント等の機会を得られるよう、キャリア形成に取り組んでいるところでございます。
 医務技監の具体的な登用につきましては、任命権者である厚生労働大臣が適性を考慮し選定を行い、内閣の承認を得て行うものと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、適材適所の考え方に基づきまして人材を配置してまいりたいと考えております。

専門的立場からの公衆衛生上の危機管理

三浦信祐君 是非、重要な役割だと思いますので、キャリアパスをはっきりしておくということが大事かなというふうに思います。
 続いて、先ほどの四点目のところで述べさせていただきましたけれども、医務技監には、公衆衛生上の専門的立場から、内閣官房と連携して対応し、国民に正確な情報発信を行うことが一つの役割となっております。今後、海外からの観光客の増加が見込まれ、二〇一九年のラグビーワールドカップ、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックと、ビッグスポーツイベントも控えております。その上で、政府もターゲットとしております世界各国からのインバウンド客の増加、そういう意味では、世界各国からの往来が活発になることが明らかであり、感染症対策というのが喫緊の課題だと考えております。
 入国する旅客に感染症の疑い若しくは発症があった場合を想定して、万が一に備えて対策をすべきであると私は思います。これまでも存分に対策は取ってきていただいたと思いますけれども、これまで以上に多くの方が来るということでは、先手を打つことが大事だと考えます。その上で、公衆衛生危機への対応として医務技監の専門的立場としての能力が期待されます。具体的対処に当たって、医務技監の具体的権限と役割、そしてそれを支えるスタッフの体制について伺いたいと思います。
 さらに、有事対応の備えとして訓練を重ねていくことを想定しているとは思いますけれども、この医務技監が創設された上での訓練計画等について、検討状況について、いかがでしょうか。

政府参考人(福田祐典君)  お答えいたします。
 グローバル化の進展に伴い、国境を越えた人、物の移動が増加し、新型インフルエンザ、MERS、エボラ出血熱などの感染症などが我が国に流入するリスクはまさに高まっております。特に、議員御指摘のとおり、二〇一九年にはラグビーワールドカップ、二〇二〇年には東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えておりまして、感染症の発生など健康危機事案から国民の健康を守ることは極めて重要な課題でございます。
 具体的には、医務技監は、新型インフルエンザなどが発生した場合におきまして、保健医療に関する専門的な知識を活用しつつ、厚生労働省幹部の立場だけではなく、政府全体の立場から健康危機事案への対応に貢献していくことを考えてございます。具体的には、内閣官房内閣審議官等の立場で併せてこういったものに貢献をしていくということを今計画をしているところでございます。
 また、訓練につきましては、毎年、新型インフルエンザ患者発生時の初動対応の訓練を始めとして、様々な健康危機事案につきまして、政府全体また厚生労働省としても訓練を実施いたしております。医務技監が設置されますと、各種訓練の中で医務技監が更に大きな役割を果たしていくものと考えてございます。

三浦信祐君 明快に内閣での役割も明言していただいたと思いますので、是非訓練もしっかりやっていただければなと思います。
 若干深掘りをさせていただきますけれども、現在、特定感染症指定医療機関というのは全国に四医療機関、第一種感染症指定医療機関は五十二医療機関となっております。中でも、一、二類感染症のみならず、未知で重篤な新感染症の際に活用される指定感染症医療機関は、千葉県で成田赤十字病院で二床、これは成田空港から十一キロの距離、愛知県では常滑市民病院二床で中部国際空港から約七キロ、大阪府ではりんくう総合医療センター二床で関西国際空港から約七キロ、そして、東京都、これは独立行政法人国立国際医療研究センター病院四床、ここは羽田空港から約二十五キロとなっております。
 水際対策において、感染症発症患者の受入れ体制というのは空港に隣接していることが重要であると私は考えます。成田、中部、関西空港では医療機関は近接しております。一方で、東京は都心の中心部にあって長い移動も伴います。移動は短いにこしたことはなく、ましてや移動中のリスクヘッジ対策というのは欠かすことができないと思います。羽田空港における国際線便数の増加というのは顕著であり、早急な体制整備、強化が必要であると私は思います。
 その上で、全体の話ですけれども、今後の水際対策とともに、入国後も含め、感染症への総合的対策について取組はどうなっているか、御答弁いただきたいと思います。

政府参考人(福島靖正君)  お答えいたします。
 特定感染症指定医療機関、今先生御紹介のように全国四つございますけれども、特に羽田につきましては最寄りの特定指定医療機関であります国際医療研究センターから二十五キロ離れておりまして、新感染症患者が発生、疑われる患者が発生した場合、その移送にはほかの三空港に比べると時間が掛かるということが、そういう懸念がございます。そのため、その移送に当たっては、まず国が積極的に関与して、関係市町村あるいは消防機関等の関係者間で適切な情報提供を行うなど、緊密な連携を図ることとしております。
 また、第一種感染症指定医療機関において新感染症と入った後に診断され、やむを得ずその医療機関において入院医療を行うこととなる場合もあり得るわけでございまして、そういう場合においても、特定感染症指定医療機関からその知見を持っている医師を派遣するなどして必要な対策を講じることとしておりまして、感染症の蔓延防止とそれから医療の提供のために万全を期してまいります。
 特定感染症指定医療機関は、診療能力などのソフト面も含めて最も高い水準の機能が求められておるため、指定数を直ちに増やしていくということは様々な課題があると考えておりますけれども、新感染症対策が円滑に進むように、関係機関と協議を図りながら引き続き対応を検討してまいりたいと考えております。

三浦信祐君 その上で、地方空港においても国際線路線が拡充している中で、九州や北海道等には特定感染症指定医療機関は存在をしておりません。厳しく言えば、対策がないと言っても過言ではないというふうに私は思います。
 加えて、先般の港湾法を改正したことによって、クルーズ船の国内寄港の増加が見込まれます。そうしますと、港、港湾での対策も必要不可欠だと思います。特に船舶というのは、航空機とは違いまして、一度に大勢の旅客が入港、そして入国することになり、水際対策の手厚さというのは不可欠だと思います。
 これらの体制についての現状認識と今後の対策、取組について伺います。

政府参考人(福島靖正君)  お答えいたします。
 訪日外国人旅行者が急増する中で、国内に常在しない感染症の侵入を防止するために、迅速かつ適切な水際対策を実施する体制の確保は重要である、必要であると考えております。
 具体的には、感染防止対策や人権に配慮した有症者の待機室、患者搬送車両やアイソレーター付きの車椅子などの設備の整備をするなどの対策を実施しておりますし、また、平成二十九年度におきましては検疫官二十九名を増員したところでございます。
 今後とも、迅速かつ適切な検疫を実施できるように、地方空港、港湾を含めまして、必要な物的、人的体制の計画的な整備に努めてまいりたいと考えております。
 また、新感染症も対象となっております新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づきまして、関係省庁や検疫所、都道府県等におきまして、実際に発生した場合を想定したシミュレーションなどを内容とする訓練を実施しております。さらに、新型インフルエンザ等対策ガイドラインにおきまして、患者を迅速に適切な医療機関へ搬送できるよう、消防機関等と医療機関は積極的に情報共有等の連携を行うというふうにしておりまして、実際に新感染症や新型インフルエンザなどが発生した場合には関係省庁と連携した対応を行うこととしております。
 これらの取組を継続しながら、新感染症を含めた感染症対策に万全を期してまいりたいと考えております。

三浦信祐君 具体的に言いますと、搬送というのは総務省消防庁であり、また自治体の消防機関だと思います。そうなると、ソフトの面では、確かに人のケアであったりとか、また、厚生労働省の指導の下で仮に新感染症が出た場合には様々派遣をするということになりますけど、ここには移送という問題が必ずあります。ですので、総務省との連携もしっかりやっていただかなければいけないなというふうに思います。
 加えまして、シミュレーションをしていただいているとは思いますけれども、特定の場合には厚生労働大臣の認定ではありますけれども、第一種の感染症指定医療機関の指定というのは都道府県が担っております。ですので、国の権限だけでということではなく、緊密なふだんからの意思疎通を図るということは不可欠なんではないかなというふうに思います。
 その上で、都道府県では第一種の感染症指定医療機関の指定というのは一病院というふうに決められております。ほぼ全国にあるというのは世界でも誇るべきで、残り二県の準備に入られているというのは承知をしておりますけれども、ちょっと具体例を挙げますと、例えば、横浜に一隻の大きな観光客がたくさん乗った船が来る。飛行機の場合には三百人から五百人ですけれども、船の場合には一発で五千人来ます。そのときに、神奈川県では指定をされているのは一病院で、横浜市立の市民病院だけです。これ二床なんですね。仮に五名、六名、七名といったときに、首都圏全体で見れば僅か十名ちょっとしかその対応ができるところがないということもありますので、是非、人口比率であったりとか戦略的なことも、短期にはできないとは思いますけれども、人材育成の面、そして具体的なハードの面も是非医務技監の下でしっかり検証していただいて、今後の施策を積み上げていっていただきたいということを御要望させていただきたいと思います。

医務技監とグローバルヘルス人材戦略センターとの関係

 話題は変わりますけれども、国際保健外交で中心的な機能を果たすことが期待される医務技監の設置というのは、私も大事なことだと思いますし、厚生労働省の国際貢献のために大きな前進をしていることにつながるという意味で評価すべきことだと思います。
 他方で、本年度予算ではグローバルヘルス人材戦略センターの設置のための予算も確保をされておりますけれども、ボトムアップ型の国際保健政策人材の養成も重要な課題だと私は考えております。
 医務技監という国際保健外交を担うポストの設置とグローバルヘルス人材戦略センターによる国際保健政策人材の養成というのは、車の両輪となって日本の国際保健分野での国際貢献を推進していくものだと私は考えておりますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

国務大臣(塩崎恭久君)  今御指摘をいただいた医務技監の国際保健分野における責任、使命はどういうことかということでございますが、医務技監は、医学的知見に基づく一元的な施策を推進をして、縦割りを排して、次官級ポストとして省内を保健医療に関しては取りまとめて、国際保健領域のハイレベルな交渉も行う、そして国際保健政策人材の育成にも責任を負うと、こう考えております。
 また、今年度、今御指摘をいただいた、設置をする予定とさせていただいておりますグローバルヘルス人材戦略センター、これは人材育成の司令塔として、若手のキャリアパス構築支援とかWHO等の国際機関への邦人職員の派遣について、国内の研究機関や大学とも連携をして戦略的に実施をしていきたいと、このように考えております。
 医務技監とグローバルヘルス人材戦略センター、これが、今、車の両輪という言葉がございましたけれども、常に連動することがやはり御指摘のとおり重要だというふうに考えておりまして、人材育成そして派遣を通じて日本の国際保健分野への貢献というものを更に進めてまいりたいというふうに考えております。

三浦信祐君 これ大事な観点だと思いますので、強力に応援をしていきながら前進をさせていただきたいと思うんですけれども、現状認識として、国際保健機関に勤務する職員の数、これは二〇一三年でちょっと古いデータですけれども、二百十九名。一方で、二〇〇九年では二百十六名。僅か伸びは一%。そういう意味では、世界に比べてこの国際保健機関での職員の数の伸び率というのは極めて低いものだと思います。ですので、これを機能させていくことによって、しっかりと職員を派遣する中でプレゼンスを発揮をしていただきたいなというふうに思います。
 加えまして、国際保健政策を形成をするリーダーのポスト、これは日本人は、二〇一五年で、全世界で二千三百三十九名に対して僅か五十二名。そういう意味では、二・二%ということですので、ここがはっきり増えてくるということの政策効果というのが目に見えて分かってくると思いますし、特に先進国の中で高齢化社会を先に行っている我が国が、むしろ世界に先んじて高齢者施策であったりそういう福祉の部分に関しての能力を発揮をしていくことが国際貢献に具体的に貢献できることになると思いますので、是非、大臣の下でしっかり進めていっていただきたいと思います。
 私の質問を終わります。ありがとうございました。