厚生労働委員会(2018年5月17日)

小児がんの対策のおける課題について

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
 小児がん対策について質問をいたします。
 小児のうち、五から九歳、また十から十四歳の死因の第一位は小児がんであり、これは成人と同様であります。二〇一三年のデータでは、がん発症者推計数は八十六万二千四百五十二人で、うち二十歳未満は二千五百七十一人、約〇・三%であり、このことから小児がんは希少疾患に分類されることになっております。それゆえに、実数としてのデータ、経験が不足していることにも起因して、治療法や薬の開発が遅れているのが実態であります。
 政府として小児がん対策に何としても取り組んでもらいたいと強くお願いをしたいのですけれども、加藤大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(加藤勝信君)  今委員から数字も挙げてお話がございましたけれども、小児がんはまだまだ希少であります。しかし、同時に、その多様ながん種を多く含んでいるということでありまして、したがって、また小児という患者さんの特性を踏まえた対策が求められております。
 平成三十年三月に閣議決定した第三期がん対策推進基本計画でも、この小児がん対策に重点的に取り組むというふうになっております。また、先ほど委員がお話しになりました、がん全体でいえば〇・三%というお話がありましたけれども、更に言えば、成人の希少がんともまた異なる対策が求められておりまして、小児がん拠点病院等を整備をして、診療の一部集約化とネットワークによる診療体制の構築、これを進めてきているところでありますけれども、さらに、こうした拠点病院において、多様なニーズに対応するため、がんゲノム医療の活用などを含む診断、治療の研究の推進、あるいは十分な臨床研究等を行うことのできる体制の整備、また新規の治療法や新薬の開発等につながる研究の推進、そういった意味で、患者さんあるいは御家族、そういった皆さんの期待にしっかりと応えていけるように、小児がん医療の更なる質の向上を目指して、基本計画も踏まえながら小児がん対策を強化していきたいと思います。

三浦信祐君 大臣の今のお言葉を聞いて、がんで闘っているお子さんや御家族は本当にもう期待をしていると思いますので、強力によろしくお願いいたします。
 抗がん剤について、七から八割は子供にも使えるものであるとも伺いました。大人で使えるものを子供にも使えることで治療に効果があるのであれば、使用を促進すべきだと考えます。
 成長過程にあるお子さんのがんは病状の進行が早いため、猶予がない場合も多いと思います。その上で、治験データがないことが抗がん剤の使用を推奨、促進できない理由であるならば、承認の前から医薬品を使えるようにすべきであり、早期の承認が取れるようにも取り組むべきだと考えます。いかがでしょうか。

政府参考人(宮本真司君)  御指摘のように、抗がん剤の小児に対する使用も含め、小児に対する医薬品を開発するに当たりましては、治療効果の有無のみならず、小児特有の用法、用量の設定の必要性などを含めまして、有効性、安全性の確認が必要となりますことから、世界的に困難さが指摘されているところでもございます。
 我が国におきましても、医療機関や文献からの情報収集や海外規制情報の取得など、多面的な情報収集活動を通じて、小児に対する医薬品の開発や小児へ医薬品を投与する際の情報提供が進むよう取り組んでいくことが重要と考えております。
 また、我が国の医療保険制度におきましては、原則、有効性、安全性が確認された薬事承認のある医薬品を保険適用をしておりますけれども、薬事承認のない医薬品であっても保険外併用療養費制度の下で、治験や先進医療等の形で、将来の薬事承認と保険適用に向けた評価を行うものとして、保険診療との併用を可能としているところでもございます。
 さらに、厚生労働省におきましては、学会、患者団体等からの未承認、適応外薬に係る要望に対して、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、諸外国での承認状況や科学的な根拠に基づき検討を行った上で、必要に応じて製造販売業者に対する開発要請等を行っております。その中には、小児のがんに対する要望も含まれており、医薬品の承認事項の変更につながった例などもございます。
 厚生労働省では、引き続きこのような仕組みを活用するとともに、昨年制度化いたしました条件付き早期承認制度の活用などにつきましても、今後、厚生科学審議会の医薬品医療機器制度部会における御議論も踏まえまして、必要とされる医薬品については早期に承認できるよう努めてまいりたいと考えております。

三浦信祐君 是非よろしくお願いします。
 小児がんに精通した専門家が少ないため、適切な診断ができず、治療が遅れる可能性があることが小児がん対策の問題点の一つとして挙げられます。ましてや、小児対応の外科医が少なく、手術できる医師が極めて少ないのが実態であります。小児がん治療は志の高い医療人の善意によって支えられていると言っても過言ではないのが現状だと思います。
 小児がんに取り組む外科医について、門をたたく医師が増えること、今後も確実に確保ができ、養成することが大事であり、厚生労働省として強力に推進すべきであると思いますが、取組はいかがでしょうか。また、診療報酬等を含めた財政的支援の現状はどのようになっており、今後、効果を生むためにどのように取り組むのか、高木副大臣に伺います。

副大臣(高木美智代君)  お答えいたします。
 小児がんの治療におきましては、他のがん治療と同様に、化学療法とか、また放射線療法を含めまして、各種治療法を組み合わせた集学的治療が重要でございます。
 委員御指摘の手術療法につきましては、これまで小児がん拠点病院などを中心に、外科医の育成プログラムなどの人材育成のための支援を行ってまいりました。さらに、本年三月に閣議決定した第三期がん対策推進基本計画におきましては、人材育成を対策の柱の一つに位置付けまして、関係省庁における取組との連携も含めて、幅広い人材の育成について取り組むこととしております。
 また、診療報酬におきましては、これまでも小児がん拠点病院加算を設けるなど、小児がんに係る診療の評価を行ってきておりますが、平成三十年度診療報酬改定におきましては、小児入院医療管理料の包括範囲の見直しであるとか、また、小児特定集中治療管理料の対象年齢を十五歳未満から二十歳未満に拡大するなど、小児医療の充実を行っているところでございます。
 また、医療従事者の負担軽減や働き方改革を推進する観点から、医師事務作業補助体制加算、いわゆる医療クラークでございますが、その評価の引上げ、また小児科などの医師の常勤要件や専従要件の緩和などの見直しを行ったところです。
 厚生労働省としては、このような取組を通じて、引き続き小児がんの診療に従事する医師の育成確保の支援に努めてまいりたいと考えております。

三浦信祐君 不断の取組をお願いしたいと思います。
 小児がん患者が生きる希望を持っていくことができる体制整備の中に、長期入院による学習環境整備が挙げられます。義務教育課程までのフォローは辛うじてあるように聞こえてきますが、中学生から中長期入院治療となったケースや高校生からの場合も含め、高校生の世代に対しての教育支援体制は極めて厳しいものがあります。仮に支援環境が良い場合だったとしても、学校の事情で週二、三回の支援が限界なのが実情だと医療現場で伺いました。現状は未整備の状況だと言えます。高校生の世代にある入院中の小児がん患者の学習環境をしっかりと整備をすべきです。是非的確に対応していただきたいのですが、いかがでしょうか。
 これに加えまして、学業復帰や就職の際の相談支援体制が不十分だと思います。神奈川では神奈川県立こども医療センターが窓口となっていますが、より体系的な支援体制にすべきではないでしょうか。
 文部科学省と厚生労働省に対策を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

政府参考人(下間康行君)  お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、小児がん患者を含む長期入院中の高校生に対し教育の機会を保障することは大変重要であると認識しております。このため、文部科学省におきましては、平成二十五年三月に、各都道府県教育委員会等に対し、高校生を含む病気療養児に対する教育の充実を求める通知を発出するとともに、平成二十七年四月から、高等学校や特別支援学校高等部における遠隔教育を制度化いたしました。また、平成二十八年度より、長期間入院する児童生徒等の教育について、在籍校や病院等の関係機関が連携して支援する体制の構築方法に関する調査研究を行う入院児童生徒等への教育保障体制整備事業を実施しておりまして、その中には長期入院中の高校生を対象とした学習環境の整備に係る取組を行っているものもございます。
 本年三月のがん対策推進基本計画におきましては、国及び地方公共団体は、医療従事者と教育関係者との連携を強化するとともに、情報技術を活用した高等学校段階における遠隔教育など、療養中においても適切な教育を受けることのできる環境の整備や、復学・就学支援など、療養中の生徒等に対する特別支援教育をより一層充実させるというふうにございまして、文部科学省といたしましては、引き続きこうした取組を行っていくことによりまして、各地方公共団体などにおいて、地域の実情等に応じ、入院中の高校生に対する教育の充実に取り組むよう促してまいりたいと存じます。

政府参考人(福田祐典君)  お答えいたします。
 厚生労働省では、小児がん患者とその家族が安心して適切な医療や支援を受けられる環境を整備するため、全国十五か所の小児がん拠点病院を指定してございます。その指定要件の中では、病弱の特別支援学校又は小中学校の病弱、身体虚弱によります教育支援が行われていること、相談支援センターを設置し、小児がん患者の発育、教育及び療養上の相談支援を行うことを求めておりまして、全国十五か所全てで入院している小中学生の学習環境や相談体制の整備が進められているところでございます。
 一方で、委員御指摘のございましたとおり、入院している高校生の学習環境の整備につきましては、現在の小児がん拠点病院の指定要件としては求めていないところでございますが、現在開催をしております小児・AYA世代、このAYA世代というのは思春期、若年成人のことでございますが、この小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討会におきまして、高校の教育につきましても学習環境の整備を進めるべきではないかといった御指摘を有識者からいただいているところでございます。
 また、同検討会では、これまでの相談支援体制に加えまして、教育機関や、それから就労支援に関する成人のがん診療連携拠点病院などとの連携も強化をしていく必要性が指摘されてございます。
 現在、小児がん拠点病院の指定要件の見直しに向けまして、意見の取りまとめを行っているところでございます。入院中の小児がん患者の学習環境や相談支援体制の充実につながるよう、今後の検討を進めてまいりたいと考えております。

三浦信祐君 是非、一人も漏れないような体制整備をしていただきたいと思います。
 一つ飛ばさせていただきます。

がんゲノム医療推進の具体的取り組み

 最後になりますけれども、がんゲノム医療推進の具体的取組について質問をいたします。
 来月にも稼働するがんゲノム情報管理センターにおいて、センターへのゲノム情報などの登録が開始されると承知をいたしております。国民皆保険制度である日本は、的確な整備を行うことによって、将来的にゲノム解析情報等を集約して世界のどこよりも多様な情報が得られる環境に基づいて、治療技術の発展、創薬などに活用できる無限の可能性を有しております。今回はその入口となります。センターの成功を心から願い、支援していきたいと私は思っております。
 その上で、まずもって先端情報をしっかりと整理、管理し、診療の提供と治療方法の確立、創薬等に生かすために、国として研究と情報収集体制の整備、人材育成を強力に進めていくべきであり、強くお願いをしたいと思います。
 その上で、がんゲノム研究の成果を国益に結び付けるためには、知財の確保、管理体制の確立が絶対不可欠です。具体的には、研究成果の知財に関わる人材育成、企業連携、弁理士等との強固な連携を取るべきだと私は考えます。
 これらについて、是非行っていただきたいと思いますけれども、加藤大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(加藤勝信君)  個人に最適化されたがん治療を実現するためにも、がんゲノム医療、これをしっかりと推進をしていく必要がありますし、そのためにも、ゲノム情報等を適切に集約、管理、そして利活用する体制が必要であります。
 本年二月に、ゲノム情報等を適切に収集、登録し、がんゲノム医療を適切に提供するための医療機関として、がんゲノム医療中核拠点病院、これ十一か所指定をいたしました。それから三月には、がんゲノム医療連携病院、これを百か所公表もしたところであります。また、今年度は、質の高いデータベースを有し、がんゲノム医療中核拠点病院等で得られたゲノム情報等の集約、管理、利活用を行うがんゲノム情報管理センターの構築を進めているところでございます。また、がんゲノム情報を扱う人材育成に関しても、第三期がん対策推進基本計画に基づいて遺伝カウンセリングに関わる者の育成を含めて進めていきたいと思っております。
 さらに、知的財産のお話がありました。
 研究成果や知的財産の蓄積に伴う知的財産の保護の在り方については、有識者や患者等で構成するがんゲノム医療推進コンソーシアム運営協議会、これを早期に設置をしたいと思いますし、また、他の分野におけるいろんな事例なども参考に必要な施策を検討させていただきたいと思います。
 いずれにしても、こうした施策を進めることによって、個々のがん患者に最適ながんゲノム医療がいち早くそれぞれ提供できるように努力をしてまいりたいと思います。

三浦信祐君 是非強力に進めていただきたいと思います。
 終わります。ありがとうございました。