厚生労働委員会(2016年12月13日)

現行の年金制度のままで改正を行わない場合の弊害について

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
 参議院での本法案の審議時間は、本日の委員会で衆議院での審議時間とほぼ同じくなります。三割カットや年金カット法案といったレッテル貼りが多用された衆議院での審議とは異なって、参議院ではマクロ経済スライドなどの年金額改定ルール、GPIF改革だけではなく、衆議院では審議の少なかった、先ほど来もありましたけれども、短時間労働者への被用者保険適用拡大、産前産後期間の保険料免除、そして日本年金機構の不要財産の国庫納付規定までしっかりと審議をされ、改めて参議院が良識の府であるということが示されたと感じております。
 今回の法改正をめぐっては、将来世代の年金確保につながるといった見解から年金がカットされるといった見解まで、多くの見解が示されました。しかし、法改正の趣旨はもちろん、世代間の対立をあおることではなく、現状のままでは解決できない問題を解決するためであるということは間違いありません。現状の問題をしっかりと説明した上で、法案がそうした問題を解決するために必要であることを示さなくてはならないと思います。
 そこで、塩崎大臣にお伺いいたします。
 法案審議の過程では、法改正のメリットとデメリットについてはその議論が集中をしてきました。しかし、その結果として、仮に法案が成立をせず、現行の制度のままであった場合のデメリット、これについては余り説明されていないように感じると思います。現行の制度のままでは今後どのような弊害が生じ得るのか、詳細な説明をいただければと思います。

国務大臣(塩崎恭久君)  今、三浦委員から御指摘をいただいたように、この参議院の厚生労働委員会での議論で本当に将来の課題というものを御指摘をたくさんいただき、私どもとしても気付きの部分もたくさんあったと思います。そういう意味で、大変建設的な御議論があったことに感謝を申し上げたいというふうに思います。
 その上で、今回の法案に盛り込んでおります年金額の改定ルールの見直しにつきましては、平成十六年改正以降、現役世代の賃金の低下に合わせた年金額の改定を行わなかったために、今の高齢者の基礎年金部分の所得代替率が約一割上昇してしまった、その一方で、将来の基礎年金部分の所得代替率が約一割下がってしまった、このことを背景として今回御提起を申し上げているということでございます。
 本法案によります年金額改定ルールの見直しを行わないとすれば、今後、賃金が低下するような不測の経済状態になった場合に将来の基礎年金の水準はより低下をするおそれがございます。今回の見直しは、それを未然に防ぐ、そして信頼される年金制度をつくるために必要なものということだと思います。
 今後とも、広く国民に御理解をいただけるように、あらゆる機会を通じて制度改正の内容を丁寧に御説明を申し上げてまいりたいというふうに思います。

マクロ経済スライドにおけるキャリーオーバー(持ち越し)の仕組み採用理由について。

三浦信祐君 ありがとうございます。
 ちょっと順番を変えますけれども、今回の法改正によって、これまでたった一度しか実施されなかったマクロ経済スライドの調整機能が強化をされることとなります。マクロ経済スライドのキャリーオーバーの仕組みが導入されることでマクロ経済スライドの調整期間の長期化を防ぐことができると考えられます。先日の同僚議員である熊野議員の質疑の際にも、マクロ経済スライドの調整期間の長期化の及ぼす弊害について答弁があったことだと思います。平成二十六年の財政検証のオプション試算では、経済変動がある前提でマクロ経済スライドのフル発動によって、ケースのCでは将来の所得代替率が〇・四%改善、ケースEでは調整期間が二年早く終了して〇・八%の改善、そしてケースGでは二十二年早く終了し五・〇%の改善、ケースHでは国民年金積立金の枯渇を免れるとの試算結果も得られています。
 そこで、鈴木年金局長にお伺いします。
 オプション試算とは異なって名目下限措置を維持するキャリーオーバーの仕組みとした理由について、また、経済状況が順調とは言えないときがあったとしても調整期間の長期化を防ぐ効果があることを改めて御説明をいただきたいと思います。

政府参考人(鈴木俊彦君)  マクロ経済スライドのいわゆるキャリーオーバーでございますけれども、これは社会保障審議会の年金部会で御議論がございました。その中では、将来世代の給付水準を確保するという観点からはマクロ経済スライド極力その先送りしない、この工夫が重要であるという点についてはおおむね一致をしたところでございますけれども、一方で、前年度よりも年金の名目額をマクロ経済スライドで下げないという配慮措置、いわゆる御指摘ございます名目下限措置、これを見直してフル発動までするかどうか、ここについては賛否が分かれたところでございます。これが審議会のステップでございました。
 このため、与党との調整もその後踏まえまして、現在の受給者の方々に一定の配慮をする必要がある、こういった観点から、名目下限措置は維持する、その上で、しかし、積み残しの調整がありましたならば、それは景気後退局面で生じますので、直近の景気回復局面がありましたならばそれを直ちに片付けると、こういった形できちんとマクロ経済スライド発動効果を及ぼそう、それによりまして、将来の年金水準の確保、マクロ経済スライドの長期化を防ぎ、将来の年金水準の確保も行うことができる、こういったような考え方、御議論があってこの案に至ったわけでございます。

複雑な年金制度における年金を支払う若者世代に向けた年金教育への取り組みについて。

三浦信祐君 しっかりバランスを取るために今検討していただいたということだと思います。
 その上で、いまだ国民の間で年金に関する法案への誤解があったり、理解が深まっていないように見受けられたりするのも事実です。今回の法改正について多くのマスコミ報道がありますけれども、専門用語が多かったり制度が複雑だったりすることが理解が深まりづらい一因かと考えます。また、厚生労働省が国民に対して行っている法案の内容の説明もまだ十分に行き渡っていない点も課題だと思います。
 そこで、馬場政務官にお伺いいたします。
 厚生労働省のホームページ等で、今回の法改正も含めて、国民、特にこれから責任世代となっていく若い世代に向けた分かりやすい解説に取り組んでほしいと考えますけれども、ある程度、先ほどもありましたけれども、是非御答弁いただければと思います。

大臣政務官(馬場成志君)  お答えします。
 国民の年金権の確保のほか、年金制度の信頼確保の観点からも公的年金制度の意義などを理解していただくことは大変重要でありますので、特に将来の社会を担う若者に対して年金制度の仕組みやその役割について正しく理解していただくことが重要だと考えております。
 このため、厚生労働省と日本年金機構では、ホームページを通じた年金制度に関する周知、広報のほか、若い世代を対象に年金事務所と地域の高校、大学などと連携した年金セミナーを昨年度は全国で三千三百回以上実施するとともに、厚生労働省職員による大学等への出前講座なども実施しておるところであります。
 さらに、国民の皆様に年金制度を身近なものとして理解を深めていただくよう、公的年金をテーマとしたエッセーを募集しておりまして、中には、岐阜県の高山西高校などは学校ぐるみで参加していただくなど、取組を広げていただいておるところであります。
 あわせて、パソコンやスマートフォンから手軽に年金記録や将来の年金見込額などの確認ができるねんきんネットの普及に努めているほか、現在、新たにスマートフォン上のアプリ機能、年金アプリの検討を進めているところであります。
 今後とも、若い世代を対象に年金制度への理解が高まるよう、周知、広報にしっかりと取り組んでまいります。

三浦信祐君 ありがとうございます。
 広報戦略のみならず、これから年金を払うことになる若い世代に教育の場においてもしっかり年金教育の充実に取り組んでいかなければいけないんだと思います。是非今後、文科省ともしっかり連携をしていただいて、理解を進めるように頑張っていただきたいと思います。
 時間になりましたので、以上で終わらせていただきます。