医療養成課程における教育
三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
先生方には大変貴重な御意見いただきまして、ありがとうございました。
まず最初に、松田参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
今回の法改正というのは医師不足対策の入口という部分ではあると思うんですけれども、まず、医師を目指そうとする学生さんに対しての選択権を与えると。また、それが地域に、将来的に医師としてその地元に残っていただきたいということで、医学部定員の中での地域枠と地元枠というものが今つくられて運用されていると思いますけれども、先ほどフランスの例もたくさん挙げていただきましたけれども、この地域枠と地元枠、本来ならもう少し成功していかなければいけないと思うんですけれども、課題があるということも承知をいたしております。特に日本では、金銭的なフォローアップができてしまうと、その目的を達成する前に、どちらかというと東京から地方に行ったとしてもまた戻ってきてしまうという課題があると思います。
その上で、地域枠とまた地元枠のメリットとデメリット、今後の医師定員のことを考えた上での大学の設置という、人材、枠ということを考えた上で、今後の参考のために是非教えていただきたいと思います。
参考人(松田晋哉君) まだ全体のことを評価する時期ではないと思いますが、ただ、今までいろいろと聞いている分析の結果によりますと、やはり地域枠、地元枠というのはかなりその地域に定着するということで、それなりに一定の効果を上げていると思います。
ただ、成功している事例を実際に見に行きますと、実は卒前の教育のところからかなり地域の先生方がやはりちゃんとコミットをして教育をしております。やはりその地域に対する愛情を持っていた、愛着を持っていたと。やはり学生のうちからその地域についてしっかりと知っていくという、そういう大学だけでなくて地域の医療界の方々の協力の上でやっているところでは成功しているようでございますので、そういう意味では、地域枠、地元枠につきましても、今後、医学教育の中でやはり見直しも含めて考えていくべき問題じゃないかというふうに考えております。
三浦信祐君 ありがとうございます。
そういう意味では、大学の設置をしていく各大学と地元の連携、また、その成功例をきちっと横展開をしていくということがこれの実効性を高めていくことなんではないかなと思いますので、今後の審議に生かさせていただきたいと思います。
まちづくりと医療体制の整備
次に、立谷参考人、また今村参考人にお伺いしたいと思いますけれども、プライマリーケアというところをまず重視をしていかなければいけないというのは、将来の町づくりを見た上で極めて重要なんではないかなと。そうしますと、当然、医師偏在があることによって町づくり自体がうまくいかなくなってしまうという課題というのが、少子高齢化が進む日本において、特に地方部で顕在化をしてくるんではないかなというふうに思います。
今回の法改正の中では、都道府県知事が増床であったりとか新たな設置を認めないということのバランスを取るということはあると思いますけれども、それ以上に、やはりコンパクトシティー化が図られるような時代にあって、都道府県だけではなく、むしろ小さな自治体にそういうコマンドをする能力というのも求められてくる時代ではないかなと思いますけれども、この町づくりと医師偏在解消との関係について、是非御意見をいただければと思います。
参考人(立谷秀清君) まず、医療というのは生活のインフラなんですね。これは震災でつくづく思いましたけれども、あれは水道とか電気と一緒でインフラなんですね。ですから、医療機関のないところに人は住めないんですね。今、そういう問題に直面している自治体がたくさんあります。地方創生どころではないんですね。
そういうことを考えて、そういう自治体の医療の体制をどうするか。いろんな方法論があるんです。例えば、しっかりした道路造って、高速道路で患者運んじゃえという方法もあります。ですけど、プライマリーケアとして、最初に診るドクターがいないといけないと。これを県知事が県単位でコントロールできるかといったら、かなり難しいですね。自治体も難しいですね。
ですから、先ほど話に出た地域枠とか推薦枠とか地元枠とか、これもちょっと甘い夢を見過ぎたんですよ。東京のサラリーマンの娘さんが弘前大学の医学部の地域枠で入って、卒業したら親は戻しますよ。借金しても何しても戻しますよ。そんな遠くに一人で置くよりも、娘さん戻しますよ。そういう現象がいっぱい起きたということなんですね。ですから、最初から地域の人入れればよかった、東京の人入れたのが間違いだったと、そこら辺甘く考えたんでしょうね。ここはしっかりやらなきゃいけないけれども、そういうところでもって長期的に医師の育成を考えていく以外ないと思いますね。
あとは、さっき言った地域別診療単価のようなことを考えていくしかないと思いますね。ただ、難しいです。本当に難しいです、これは。知事に権限与えたぐらいでどうにもならぬと思いますね。
参考人(今村聡君) 今、医療と町づくりのお話をいただきましたけれども、日本医師会も今、大きな柱に町づくりということを申し上げているところです。やはり地域で頑張っておられる先生方、開業医はたくさんいらっしゃって、その方たちが本当に町の住民に対して、単に医療だけではなくて、介護だとか福祉だとか様々な分野で参加をされて貢献されていると。日本医師会は赤ひげ大賞ということで本当に地域に貢献している先生方を顕彰する仕組みというのを設けておりますけれども、推薦に上がってこられる方たちを見ると本当に地域で立派な活動をされているなというのは、つくづくそう思います。
ただ、それが本当に全国全ての開業医がそういう町づくりという視点で関わっているかどうか、これはまた別の問題だと思っておりますけれども、医師会としては、先ほど立谷先生からお話あったように、医療のないところにはもうこれ人住めないというのは全くそのとおりだと思いますので、医療だけで町をつくれるということではないわけですから、全体の市町村行政と地域の医師会が連携をしながら、医療として何ができるかということを改めてしっかりと検討していかなければならないと。そのためには、地域で貢献していただく医師をどうやって養成していくのかという、先ほどの地元枠、地域枠、立谷先生ちょっと極論で、東京の先生が弘前にというお話ですけれども、大部分は地元の県や近隣の県から来られている地域枠というのが多いと思いますが、あえて地元枠と言っているのは、自分の県から地元の大学に行く方たちの定着率はより高いと、やっぱり地元愛が高い学生さんたちに参加をしていただこうということですので、日本医師会も積極的にこの地元枠の活用ということを申し上げています。
以上です。
地域医療構想と本法案との関係
三浦信祐君 最後に端的に伺いたいと思うんですけれども、町づくりという部分で今お話しいただきましたけれども、今度は地域医療構想と病院経営の安定性との関係性が成立をしませんと、所詮机上の空論になってしまうんじゃないかなという心配があります。その中で、地域医療対策協議会であったり地域医療構想調整会議で様々な議論をされて、実行に移される段階に入っていると思いますけれども、万が一の経営不安があった場合には公的資金を投入して公設病院に替えるというような、出口が明快に逆になってしまっているところに若干の不安を感じておりますけれども、その経営の安定性という部分に我々が貢献できることは何なのかということは考えていかなきゃいけないと思いますけれども、今村参考人にお答えいただければと思います。
参考人(今村聡君) まずは、どうやってしっかりと医療機関が経営を続けていくかというのは、診療報酬という問題、それから税制という問題、補助金の問題、様々にあろうかと思います。
昨今、やはり社会保障の抑制ということで、今、骨太の方針でもまた医療費の抑制ということがかなり厳しく議論されているようですけれども、やはり地域の住民にとって適切な医療が提供されるためには医療機関の経営がしっかりとしていなければこれはどうしようもないことでありまして、先生方には是非ともその点の御理解をいただきたいと。特に、働き方改革をするに当たっても当然のごとくこの財源が必要なわけで、それを無視して医療現場に働き方改革をしろということを求められるのは非常に困ると。
それから、まあちょっと話は違いますけれども、例えば、医療機関の経営を良くするために、海外に行って医療を提供してそこから利益を得てくればいいんじゃないか、あるいは海外からの患者さんを受け入れて、そういう方を利益にすればいいんじゃないかということがありますけれども、そういったことをするにも、やはり医療機関の経営がしっかりと健全に安定的に行われていることが前提でそういうことに取り組めるのであって、もう医療現場は非常に今疲弊をしてきているということをよく御理解いただいた上での改革ということをお考えいただければ大変有り難いと思っております。
三浦信祐君 ありがとうございました。終わります。