厚生労働委員会(2017年09月20日)

振替加算の支給漏れの経緯と内容

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
 年金制度は、国民の皆様から絶対に信用、信頼されなければなりません。今回、再び年金の信頼性を揺るがす支給漏れ事案の発生、残念でなりません。人数、件数の大小ではありません。年金を納めていただいた一人一人の生活が懸かっています。年を重ねていった上での将来も託されております。安心、安全を預かっているわけであります。担当、関連する職員の皆さんに、責任感を持って業務に当たり、二度とこのような事案が起きないようにしてもらいたいと、まず冒頭、強く述べさせていただきます。
 まず、今回の振替加算の支給漏れが発覚をした経緯について伺いたいと思います。
 これまで、先ほど来ありますけれども、正しく加算されていなかった事案について、個別対応のみで済ませてきている。問題があった時点において、全体にわたって網羅して確認するなど、対応すべきであったはずです。
 この点について、日本年金機構の水島理事長に見解も併せて伺いたいと思います。

参考人(水島藤一郎君)  まず、今回の事案を把握した経緯でございますが、昨年の秋でございますが、担当部におきまして、事務処理誤りの中にこの振替加算の付加漏れと申しますか、が付いていないケースが増えてきているという担当部から報告がございました。また、それぞれの拠点からも報告が上がってきておりました。
 それを踏まえまして、昨年の十一月でございますが、事務処理誤りの内容を調査せよという指示をいたしました。その中に、明らかに振替加算をお付けすべきであるけれどもお付けできていないという方がいらっしゃるということが判明をいたしまして、それが共済の方に多いということも判明をいたしました。
 そこで、サンプル調査を行って、どの程度の広がりがあるのかということについて、まずサンプルで調査をせよという指示をいたしました。二百件ほどのサンプルを取って行っておりますが、この結果、かなりの数で加給年金の情報が正しく収録されていないと、そのために振替加算が加算されていないというケースがあるということが判明をいたしました。
 これを踏まえまして、これからでございますが、全数調査を行うと。これは、振替加算が、加給が付いていらっしゃる方の奥様で、配偶者の方で振替加算が付いていない、付加されていない方について全数調査を行うということにいたしました。その結果が本日御報告申し上げた内容でございます。
 その時点で、この問題はやはり構造的な問題であるというふうに認識をいたしまして対応いたしましたが、反省をしておりますことは、やはり、今まで事務処理誤りを、個々の事務処理誤りに対応するということを優先したがために、その事務処理誤りの原因となっている要因についての組織としての分析が不足をしていたということは否めないというふうに思います。
 やはり、これ以外にもどのような事案があるかということについてはきちんと調査をしなければならないというふうに考えておりまして、これは大臣の御指示にもございましたが、機構内に、この問題に関しまして、再生計画の一環として位置付けまして、再生プロジェクト推進室の内部にプロジェクトチームを今般つくりました。このチームには給付の専門家を集めておりますので、この専門家たちに、現在、過去の事務処理誤り、給付に関する事務処理誤りについて全て収集をして分析を開始するということをいたしております。
 できるだけ早く一定の結論を得なければならないというふうに考えておりますので、年内をめどに一定の結論を得たいというふうに考えておりまして、これに関しましては、私どものチェックをしていただく機関の社会保障審議会の中に年金事業管理部会というのがございますので、そこに御報告申し上げて、御意見も承りながら進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 事務処理誤りを起こさないということに対して非常に組織等を挙げて対応してきたことは事実でございまして、かなり減少してきていることは事実だと思います。しかしながら、そこ、なぜ起きるのかということに関して組織としての検討が不足していたということについては誠に申し訳ないと、このように思いますし、早急にこれについては結論を得たいというふうに考えております。

支給漏れ発生の原因と課題

三浦信祐君 結果が大事ですので、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
 その上で、平成二十七年の十月から被用者年金制度の一元化をした、これによって共済年金と厚生年金が統合されました。これに合わせて年金機構が共済情報連携システムを利用できるようになった、先ほど来ありました。
 それでは、お尋ねしたいと思いますけれども、なぜその機会に共済組合のシステムと年金機構の共済データベースシステムとの統合、すなわちその部分に関して一元化を図らなかったのか、その理由について伺いたいと思います。

政府参考人(高橋俊之君)  まず、この被用者年金一元化の際に、実施組織は従来の年金機構それから各共済のままで行おう、その上で十分な連携を取っていこうと、こういうふうにしたわけでございますが、まず、その実施組織としてこれまでの共済組合を活用しようと、こういうふうにした当時の理由でございますけれども、共済組合は健康保険、短期給付と、それから年金、長期給付、これを一体的に実施しておりまして、これらの保険料徴収を効率的に行うと、こういう意味で、無駄な投資を避けると、こういう判断が当時ございました。
 また、実際に加入者の記録管理をしている組織が、厚生年金法に基づいて、その実施機関として事業主、公務員それぞれの事業主と一体的に業務を行い、適用から給付までの実施責任を一貫して果たすと、こういう正確性の観点でも、この共済組合における正確性と、こういう点によりまして、実施組織はそれぞれと、こういうことになったわけでございます。
 しかし、そのための前提としては、情報連携をしっかりとすると。システムの統一まで本当はすればこれは一番なんですが、それぞれの既存システムを活用する中で行いましたので、システムはそれぞれである中でシステム間の情報連携をしっかりしようと。それで稼働いたしましたのが二十七年十月からの共済情報連携システムでございまして、これは年金機構とそれぞれの共済組合、それぞれのコンピューターで原簿を持っておりますけれども、それぞれの原簿をそれぞれの組織がダイレクトに見に行けると、リアルタイムで見に行けると、こういう情報連携システムをつくりました。これによりまして十分連携しながらやっていくと、こういうことでございますので、今後ともこれをしっかりと活用しながら、まだまだ不十分なところもありますので、より緊密な連携を図りまして、改善取組をしてまいりたいと思います。

三浦信祐君 今のお話からは、制度上の都合というのは理解は何となくできるかなと。しかし、年金業務というのは確実性というのが不可欠であります。現状では事務手続上にエラーが発生するリスク回避とはなっていないとお認めもいただいていると思います。すなわち、ヒューマンエラーが介在をするということが絶対にあってはいけない、これを解消するのが先決だと思います。振替加算のミスを防ぐためには、少しでも早くシステムを改善して機械的処理をするということになることが大事なんではないかなと思います。そのためにも共済情報連携システムの改修を急がなければならないと私は考えております。
 システム改修期間、これ、やるという前提の下でお聞きしますけれども、どれぐらいまで、いつまでにやるということを見込んでおられるか、御答弁いただきたいと思います。

政府参考人(高橋俊之君)  現在、この共済情報連携システムを活用して振替加算を確実にすると、こういう事務は今年の七月からスタートはしてございます。ただ、まだ、この共済情報連携システムの端末をたたいて一件一件見に行って確認すると、こういう作業でございますので、まだまだヒューマンエラーが一切ないところまでは本当に行けるかという点はございます。一点一点確認して間違いのないようにと、しっかりやると、こういう事務フローを組んでおりますが、並行しまして、システム改修を行いまして自動的に共済情報連携システムのデータを見て突合できると、このシステム改修を今着手してございまして、来年の七月に向けて稼働できるように今準備を進めているところでございます。

三浦信祐君 来年の七月、運用する段階から即座にエラーがないようにするために、同時に、システムを理解する人、教育をしっかりやっていただきたいというふうに思います。
 その上で、ヒューマンエラーが生じやすい処理の有無、事務手続上での機械的処理化ができるところの有無など、年金を管理するシステムの総点検、もう二度と起こしちゃいけないという思いで点検をすべきだと私は思います。
 再度のお問合せになる部分もあるかもしれませんけれども、加藤大臣にこの取組の決意を伺いたいと思います。

国務大臣(加藤勝信君)  三浦委員御指摘のように、この年金制度というのは国民、特に高齢者にとって本当に大切な制度でありまして、その信頼を揺らいだということ、本当に今回大変遺憾だというふうに思っておりまして、一日も早くその信頼を回復していくためにも、制度の、事業の運営を的確にやっていく必要があります。
 今回の事例に対しては、十一月からの支給という問題、あるいはこの間の問合せに対して的確に対応していくということにまず取り組むと同時に、まず、このシステムの中で今御指摘のあったような改修に取り組むとともに、今回の範囲以外においてもまだ懸念が正直言ってございます。そういった懸念を、今この委員会でも御指摘いただきましたような諸点も踏まえながらしっかり分析をして、そしてそれに対して的確に対応していく、そのための仕組みを今機構の理事長からもおつくりになるというお話もありました。また、今後も考えれば、更にどういった体制が必要なのかということも含めてしっかりと対応させていただいて、最初に申し上げた国民の皆さん方の信頼回復に全力で取り組ませていただきたいと思います。

三浦信祐君 是非大臣のリーダーシップで的確に進めていただきたいと思います。
 振替加算の支給漏れが判明した方への対応をしっかりしなければならないと思います。先ほど来あったとおりであります。国民の皆様が、先ほどマスコミの皆さんに頼るような話もありましたけど、本答弁を聞くだけでこの問題に対してどのような対応があるのか理解して安心できるように答えていただきたいと思います。
 具体的には、支給漏れ対象者全員に払われるのか、また、時効適用があるのか否か、いつ支払われるのか、申込みが必要なのか否か、既に亡くなっている方への対処はどのようにするのか、どのようなプロセスでお支払いするのか、こういうことが挙げられると思います。是非明快な答弁をいただきたいと思います。

政府参考人(高橋俊之君)  今回の総点検の結果によりまして支給漏れが判明いたしました十万六千人の方々につきましては、日本年金機構におきまして十一月の上旬にお知らせを郵送いたします。その上で、おおむね十一月十五日にお支払をするよう事務を進めてございます。これらにつきましては五年の時効は適用せず、過去に遡りまして一斉にお支払をいたします。また、申請ですとかお届けですとか、その辺りのことがなく一斉にお支払いするということでございます。
 その中で、既にお亡くなりになっている方につきましては、日本年金機構におきまして御遺族が把握できている、通常、年金、亡くなりますと若干数か月分残って、未支給年金という形で生計同一の方の三親等以内の御親族にお支払いするということをやっておりまして、したがいまして、その支払の記録がございまして、どの方にお支払いするかというのがございます。したがいまして、その方に機構から連絡をいたしましてお支払いする、また、その方がお亡くなりになられていても、住民票等を確認いたしまして、そのほかの親族の方、生計同一であった方にお支払いするということをやってまいります。
 また、障害年金など年金選択が必要な方、こういう方にもこれから確認をいたします。そういう方には、若干、お支払が十二月になろうかと思いますけれども、確実なお支払をしてまいります。
 いずれにいたしましても、お支払いすべき方にしっかりとお支払いすると、最大限の努力を機構と年金局一体的になって行ってまいりたいと思います。

再発防止策と相談体制

三浦信祐君 そもそも、年金受給者の方々が今回の事案に自身が該当しているか、又は亡くなられた方の親族が支給漏れ対象であったか否かなど、各自で確認する必要があるというのが今の段階では実態だと思います。また、ここに詐欺なんということが関わってくるようなことは一切ないようにも対策を取らなければいけないと思います。
 先ほどの通知書、御説明いただいたところもあるとは思いますけれども、問合せが殺到しているということは冒頭様々ありました。電話の相談窓口、年金事務所窓口での対応が極めて重要だと思います。各現場では、本年八月に施行され十月から支払が開始をされる年金受給資格期間短縮に関わる事務と同時に本事案の対応に当たることにもなっていきます。窓口対応については手厚い対応を取る必要があると私は考えます。
 支給漏れ公表からこれまで、そして今後の対応について、責任を持って日本年金機構の水島理事長にお答えいただきたいと思います。

参考人(水島藤一郎君)  今回の事案に関しましては、先ほど御報告申し上げましたとおり、専用ダイヤルを設けさせていただいております。当初、十回線でスタートをいたしましたが、大変御迷惑をお掛けいたしました。今、四十回線に増やしまして、当面の間、休日も含めて対応してまいりたいというふうに考えております。加えまして、その他、コールセンターも動員をいたしまして、さらに、現在でもまだまだ応答率は決して高くなっておりません。この状況を少しでも改善すべく努力をしてまいりたいというふうに考えております。
 加えまして、今御指摘の受給資格期間の短縮でございますが、おかげさまで、十月からお支払を開始することになります。現在、裁定請求書をお送り申し上げまして、お申込みをいただいた、裁定請求をしていただいた方が、大体お送りしたのが約六十万件ございますが、そのうち約六〇%弱、五九%程度の方が、三十五万程度の方でございますが、が裁定請求書をお出しいただいておりまして、十月中にはお支払いできるというふうに思っております。
 このような方々、さらに、まだまだ請求していらっしゃらない方もいらっしゃいますし、そのほか御指摘のとおりいろいろな点で窓口を充実していかなければなりませんが、しかしながら、人員の制約もございますので、現在、予約制を推進をさせていただいております。これがかなり好評をいただいておりまして、現在五〇%程度の予約率まで参っております。これは、事前に記録を取るとか準備をするということができまして、お客様に御迷惑をお掛けしない、あるいは事務処理誤りも防げるということもございまして、この制度を定着させていきたいというふうに考えておりますが、この点も含めて更に窓口体制の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。

機構の体質改善と今後の対応

三浦信祐君 最後に、今回の事案について具体的対応方法は伺いました。しかし、国民の大切な財産を預かる年金機構の体質について大いに問題があるということは間違いありません。これを機に仕事への取組を総括すべきだと私は思います。今後の職員への教育、欠落している責任感の醸成、これどう取り組んでいくか。また、厚生労働省の指揮監督の在り方、猛省すべきだと私は思います。責任の所在、人事も含め、今後の年金機構との関係をどのようにしていくか、加藤大臣に最後、お伺いします。

国務大臣(加藤勝信君)  今、ちょうどこの間の情報漏えいの問題もありました。年金機構では、そのときの指摘として、組織としての一体感の不足、ガバナンスの脆弱さ、リーダーシップの不足、ルールの不徹底などの問題が指摘されて、平成二十八年度から三か年の今集中取組月間ということに取り組んでおられます。そんな中で、残念ながら今回こうした大規模な支給漏れが出たわけでありますけれども、まず、それに沿って組織改革、そして業務改善、取組、これ一層深めて、そして、その取組の必要性を、組織、そしてそれぞれがやっている仕事の本当に責任の重さを組織全体に浸透していくよう、私どもとしても監督していきたいというふうに思っております。
 また、責任の所在につきましては、今月中を目途に、これまで機構における規定に対する違反の有無、そして処分の実態を踏まえて対応していただくことにしておりますし、それを踏まえて厚生労働省としても考えていきたい、対応していきたいと思っております。

三浦信祐君 終わります。ありがとうございました。