正社員とそれ以外の労働者の格差是正
三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
働き方改革を推進するために具体的取組が行われるように、質問を一つ一つさせていただきたいと思います。
まず初めに、正社員と正社員以外の労働者との格差是正について質問をさせていただきます。
データブック国際労働比較二〇一八によれば、諸外国のフルタイム労働者に対する短時間労働者の賃金水準について、フルタイム労働者の賃金を一〇〇とした場合、日本ではこれと比較すると短時間労働者の賃金水準、五九・四となっております。約六割と大きな格差です。同一労働同一賃金が浸透している欧州諸国では、正社員と短時間労働者との賃金差は七から八割が中心であります。
また、厚労省による平成二十九年の賃金構造基本統計調査において、雇用形態別の賃金カーブは、正規社員が年齢とともに上昇しピークが五十から五十四歳、一方で、非正規雇用では年齢上昇でも賃金上昇はなくフラットのままとなっております。すなわち、正社員職員では年齢で賃金が上昇していくのに対して、正社員職員以外では企業の規模を問わず上昇していかないのが現状であります。
将来設計できる、将来に安心をもたらすことができる社会構造をつくるためには、この賃金格差を解消することが絶対不可欠だと私は思います。今後、この本法改正を含めて、雇用形態による賃金格差、年齢上昇による賃金格差が拡大していくことを解消する具体的対策と取組について、加藤大臣に伺います。
国務大臣(加藤勝信君) 賃金等の待遇、これは労使によって決定されるということが基本ではあります。しかし、今委員御指摘のように、諸外国、もちろんいろんな意味で単純な比較はできませんけれども、やはりフルタイムで働く方とパートタイムで働く方の時間給当たりで見たこの格差、これはやはり日本はかなり大きいというふうに私どもも認識をしているところであります。
このため、今回の改正法案では、個々の待遇の、ですから正規、非正規というこの相対ではなくて、そこで払われている一つ一つの処遇ごとに見て、それがその処遇の性質あるいはそういう処遇を行うことの目的、それに見て実態に違いがなければ同一、違いがあれば違いに応じた支給を求めるということにしています。
今、勤続年数のお話がありましたけれども、正規と非正規の間で勤続年数に基づき賃金を決定する場合には、勤続年数が同一であれば、これは当然同一になっていくわけであります。ですから、また違いがあれば違いに応じた支給と、これが原則になります。したがって、勤続年数に基づき賃金を決定している範囲においては、勤続年数が違っていればどのような差でも許容されるということにはならないということになり、そこの部分に関してはということですね。
今回の法案は、勤続年数に基づき賃金を決定する場合を含めて、今申し上げた現在の賃金格差を追認するというものではありません。個々の待遇ごとに不合理な待遇差の是正を図る、そして不合理に低くなっている方の待遇の改善、これを図っていこうというものであります。
今回の法案を通じて理由のない待遇差を埋めて、それぞれの皆さんの能力がきちんと評価される、そしてそれに基づいた賃金が支払われる、こういった納得感、そしてそれによるモチベーションの向上、そして更に労働生産性が上がっていく、こういったことをしっかりと図っていきたいというふうに思っております。
三浦信祐君 待遇を改善していく、大変重要なことですので、進めていかなければいけないと思います。
その上で、正社員と正社員以外の労働者では賃金格差があるだけではありません。正社員以外の労働者の退職金制度適用者は僅か九・六%です。賞与支給適用者も三一%です。これに対し、正社員は八割がいずれも適用となっております。労働者には支えるべき家庭もあります。また、御自身の老後の生活もあります。ライフプランにとって重要な住宅購入など、また将来設計、退職後の生活設計に多大な影響を及ぼすこれらの待遇差の解消も欠かすことはできません。
例えば、銀行でローンを借りるといっても、様々な背景によってその瞬間に大きな未来の展望絵図が変わるというのも今の日本社会の実態であると思います。これについて具体的な取組が必要だと思います。これについていかがでしょうか。
政府参考人(宮川晃君) お答えいたします。
退職金制度は労働者にとって大変重要な待遇の一つでございますが、その支給の実態は今先生が御指摘のとおりでございます。ただ、その内容、性格が様々なものであるところから、今回お示ししておりますガイドライン案においても記載されていないところでございます。
一方、今回の改正法案でございますが、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に待遇差がある場合、個々の待遇ごとに、職務の内容、あるいは職務の内容、配置の変更範囲、職務の成果、能力、経験などのその他の事情のうち、当該待遇の性質及び目的に照らして適切と認めるものを考慮して不合理なものであってはならないとされているところでございまして、御指摘の退職金につきましてもこの不合理な待遇差の禁止の対象となり得るものと考えているところでございます。
三浦信祐君 今大切な答弁をいただいたと思います。一方で、その退職金がないという働き方というのも当然あるかもしれません。であるならば、当然、年齢で退職をしなければいけないというこの社会が、さらに、元気な高齢者になっても働けるような日本に変えていくということも併せて今後検討していかなければいけないんじゃないかなというふうに、私も今の答弁を聞いて思いました。
残念なことに、まだ待遇差異というのはあります。正社員以外の労働者に対する公的な保険制度の適用率は、健康保険で五四・七%、厚生年金五二%となっており、半分の方が事実上適用をされておりません。正社員との福利厚生上での差異も顕著なのが実態であります。ふだんの生活の安心や将来の生活保障へ欠かせない保険制度、年金制度における格差解消も、この本法案を提出をしていただいたこのきっかけに是非取組を急ぐべきだと私は考えます。具体的施策はどのようになっていくのでしょうか。
○大臣政務官(田畑裕明君) お答えを申し上げます。
働きたい方が働きやすい環境を整えるとともに、年金などの保障を厚くする観点から、平成二十八年十月から大企業で働く短時間労働者を対象とした被用者保険の適用拡大が施行されているところであります。平成二十九年四月からは中小企業等で働く短時間労働者についても労使合意を前提に企業単位での適用拡大が道が開かれているところであります。社会保険の適用に関しては、今後とも、個人の多様な働き方に合わせまして、適用の基準を引き下げることで短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大を着実に進めていくことが重要だというふうに考えているところであります。
法律の規定におきましては、平成三十一年九月までに被用者保険の適用範囲について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じることとされているところであり、適用拡大が事業主や短時間労働者に及ぼす影響などを踏まえつつ、更なる適用拡大につきましてしっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。
三浦信祐君 是非実効ある拡大にしていっていただきたいと思います。
就職氷河期と言われる時期が日本にはありました。また、長く続いたデフレの影響が雇用情勢に影を落としてきた時期もあります。
総務省の労働力調査によれば、平成二十九年平均でいわゆる不本意非正規の割合が一四・三%との結果になっております。そのうち二十五から三十四歳は二二・四%と、他の世代に比べ最も高くなっております。
将来の日本を支える若手世代の不本意非正規の解消は、国を挙げて取り組むべき課題だと考えます。いかがでしょうか。
政府参考人(宮川晃君) いわゆる不本意非正規の方々の現状は先生から御指摘のとおりでございますが、今回の改正法案によりまして、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消することによりまして、若者も含めてどのような雇用形態を選択しても納得の得られる待遇が受けられるようにしていくこととしております。
また、若者を含めまして正社員を希望する方々について正社員転換を推進することは大変重要でございまして、非正規から正規への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金、それから非正規雇用労働者に人材育成を行う事業主に対する人材開発支援助成金などを通じまして正社員転換を進めていくこととしております。
また、いわゆる就職氷河期世代を含めたフリーターなどの若者の正社員の就職支援の拠点といたしまして、わかものハローワークなどを設置いたしまして、担当者制による職業相談あるいは就職プランの作成など、きめ細かな支援を実施しているところでございます。
こうした取組によりまして、非正規雇用で働く方の正社員転換、待遇改善を進めまして、不本意ながら非正規雇用で働く方を減らしていきたいと考えているところでございます。
三浦信祐君 将来、日本の若者が今後高齢化社会を支えていく時代でもありますので、是非いろいろなところでアドバイス機能を強化をしていただきたいというふうに思います。
同一労働同一賃金
次に、同一労働同一賃金の実現へ向けての取組について質問をいたします。
政府は、一億総活躍プランの中で、非正規雇用労働者の待遇改善は待ったなしの重要課題との認識の下、労働契約法、パートタイム労働法、労働派遣法の的確運用を図るために、同一労働同一賃金ガイドライン案を平成二十八年十二月に示しています。
その内容を拝見させていただきました。率直な感想として、もう少し具体的かつ現場に即した内容へと充実した方がよいのではないかなというふうに思います。業種、業態、資本によって考え方に差異があり、当然取組も異なります。同一会社内でも業種によって具体的対策は違います。生産業、サービス業、営業、開発等、個別具体に作成しなければ解釈をしづらいと思います。
加藤大臣、是非、改善かつ充実に取り組んでいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
国務大臣(加藤勝信君) 御指摘の同一労働同一賃金のガイドライン、これは案として出させていただいたということで、最終的にはこの国会での御審議、あるいは先日最高裁の判例もありました、そういったもの、あるいは関係者の御意見、それらを踏まえながら、法案の成立後、労働政策審議会で御議論いただいた上で最終的に確定をしたいというふうに思っております。
また、並行して、今年度の事業として、非正規雇用労働者の数や割合が高い業界を中心に、各企業が賃金制度も含めて待遇全般の点検等を円滑に行えるよう、業界ごとに非正規雇用労働者が担っている業務や責任の程度などの特性を踏まえた同一労働同一賃金導入マニュアルを作成し、それの周知啓発を図ることとしておりますが、そういう作業を通じて、先ほど申し上げた非正規雇用の労働者の方々が担っている業務や責任、それがどういったものなのか、こういった実態の把握もしていくわけでありますので、そうしたことも踏まえながら、先ほど申し上げた、最終的には労政審の審議でより実態に即したガイドラインを作っていくべく努力をしていきたいと思います。
三浦信祐君 ありがとうございます。
本法案では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解決を目指すこととしております。不合理な待遇や差別的取扱い等を禁止し、また待遇の相違の内容と理由等を説明する義務を事業者に課すこととなります。
そもそも、パートタイマー労働者、有期労働者が正社員との不合理格差の環境で働いていると知り得るのは、結局のところ、企業の情報開示による情報に頼るしかありません。情報開示は、不合理格差を生み出さないための入口です。この重要性を企業側、経営者や人事担当者に理解していただくための具体的取組はどのようになっているんでしょうか。
また一方で、労働者側も大切です。その前提に立った上で、使用者側に立った不合理と合理的判断等の基準などを記したガイドラインを作ることも働き方改革には不可欠だと考えます。具体的にこれはやっちゃいけないよということが明示をされているかいないかによって、この経営者側にとっての心理的ストレスも解消できるのではないかなというふうに思います。
加藤大臣、是非、使用者側に立ったようなイメージでも是非このガイドラインを作ることも検討をしていただけませんでしょうか。
国務大臣(加藤勝信君) 今御指摘ありますように、今回の改正案では、やはり正規と非正規の間の待遇差を改善していくというためには、非正規で働く方々に対して、現状そしてその理由、そういったことがしっかりと説明されていかなければ是正が図られていかないと、こういうことになるわけで、その説明義務を事業主に課し、また説明を求めたことを理由とする不利益取扱いは禁止するということにしております。
待遇差に関する説明、これについては、委員御指摘のように、その内容、理由等に関してどう具体的にそれを行っていくのかと。労政審の建議でも、実効ある労働者保護の観点、実務上現実に対応できるようにする観点の双方から施行段階において検討を深めることが適当であるということでありますので、この成立後、労政審において説明義務の具体的な内容などを明らかにしていきたいというふうに思っておりますけれども、現行、今パートについては、事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置の内容等の説明については局長通達というのが出されているわけでありますけれども、そうしたものも踏まえながら、今委員御指摘の点をしっかりと議論をしていきたいと思っておりますし、また、その内容について、これはその決まった後でありますけれども、事業主に対して十分理解するよう周知を図り、また個々の労働者の方々にもその旨をしっかりと周知していきたいと思います。
三浦信祐君 是非、中小企業がこれ実効性を担保してもらうためには、中小企業の経営者の方がやっぱり不合理であるということをなくしていくという努力をすると同時に、仮にその差があることに対しては合理的に説明ができるということがこの法を実際に社会の中に生かしていくことにつながっていきますので、より具体的に現場がどうなっているかということをきちっと政府でも掌握をしていただいて、ガイドライン的な、ようなものを是非作っていただきたいというふうに思います。
均等待遇・均等待遇の取り組み
次に、労働者の均等待遇、均衡待遇への取組について伺います。
本法案では、これまで短時間労働者にのみ規定をされていた均等待遇規定を有期雇用労働者へも適用することとしております。労働者に対する均等・均衡待遇とするに当たり、事業主、雇用主にとってみれば、非正規社員への給与上昇を図る必要があります。人件費の原資は急に生まれるわけではなく、経営改善や収益増加等が必要であることから、本法改正では経営上での人件費捻出圧力となります。
そのような中で、正社員の従来給与を引き下げることで有期雇用者等への財源を捻出して格差解消を図ることも決して想像には難くありません。昨日の本会議でも、小林理事からも正規雇用労働者の待遇の低下で実現するようなことがあってはならないと明確に質問をされました。この考え方についての見解はいかがでしょうか。
政府参考人(宮川晃君) 均等・均衡待遇の取組の目的は非正規雇用労働者の待遇改善であり、不合理に低くなっている方の待遇の改善を図るべきものと考えております。
今回の均等待遇、均衡待遇の取組への対応として、正規雇用労働者の待遇を引き下げようとするなど労働条件を不利益に変更する場合、労働契約法上、原則として労使双方の合意が必要となるわけでございます。また、労使が合意することなく就業規則の変更により労働条件を不利益に変更する場合は、労働契約法の規定に照らして合理的な変更でなければならないこととなります。
このように、正社員の待遇を一方的に不利益に変更することについては既に法的な整備がなされているところでございますが、基本的には、この均等・均衡待遇に対応するために各社の労使で合意することなく正社員の待遇を引き下げることは望ましい対応とは言えないと考えているところでございます。
いずれにいたしましても、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差の解消に向け、まずは各企業において処遇体系全体を労使の話合いによって確認し、非正規雇用労働者を含む労使で共有することが肝要であると考えております。
三浦信祐君 これ是非しっかりモニターしていただかないと、極めて重要な問題であると思いますので、厚生労働省がきちっと社会にこの法律を生かしていくんだという決意、覚悟が必要だと思います。是非、今後しっかりと我々も質問していきたいと思います。
同一待遇とする際に、大学卒業か高等学校卒業であるか、いわゆる学歴差によって給与差が決められる場合があります。例えば、非正規雇用の社員が、今般の働き方改革、人材確保策として全員が正規雇用に変わったケースがあります。その中で、高校卒業であることを理由に給与が下がったケースがあると伺いました。非正規での経験年数によって昇給していた中で生活をしていたため、瞬間的には正社員になっていいなと思ったんですけれども、同額の給料ではなくて下がってしまったがゆえに、その給料に戻るまで数年掛かった、大変苦労したとの話でありました。若年層にとってみれば、ただでさえ決して給料は高い状態じゃない中での変動というのは極めて大きな課題であると思います。これらの対策を明確にしておかないと、長期的ビジョンなしに目下の待遇を気にせざるを得ない場合には、瞬間的に非正規を選ぶケースがあると思います。これは解消しておくべき課題だと思いますけれども、これについて御見解をいただきたいと思います。
政府参考人(宮川晃君) 今回の均等・均衡待遇の取組の目的は非正規雇用労働者の待遇改善でありまして、不合理に低くなっている方の待遇の改善を図るべきものと考えております。
正規雇用に転換する際の待遇の在り方につきましては、その対象となる方の納得感ですとかモチベーション、あるいは安定感などの観点も含めまして、まずは各企業におきまして処遇体系全体を労使の話合いによって確認いただき、非正規雇用労働者を含む労使でそれを共有することが肝要であると考えております。
また、今回の法案、御指摘のように、自ら非正規雇用を選択される方も含め、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇が受けられ、多様な働き方の選択肢を待遇の差を気にすることなく選べる社会を実現することを目的としているというところでございます。
以上でございます。
三浦信祐君 多分若い世代は、そういうことを交渉できるようなこと、それが不合理かどうかと分からないケースがいっぱいあると思いますから、是非門戸を広げて、きちっと、そういうことがあってはいけないよということの周知というのが極めて重要になると思いますので、今後ともしっかりよろしくお願いします。
情報化社会の現代にあって、企業の雇用状況に関する情報があらゆる手段で入手できます。一方で、その情報が余りにも実態と乖離している場合の対抗力は多くの企業で持ち合わせていないのが実態であると思います。特に中小企業ならばなおさらであります。本法案で合理的な待遇差の説明義務を課している中で、その内容自体が正しくなく社会に広められてしまえば、その企業は人材確保等に多大な影響を受けることが容易に予測ができます。これらのケアについて厚生労働省としてどのような見解を持っているのでしょうか。
また、その上で、厚生労働省として、積極的に働き方改革を実践している企業を紹介をして、的確な情報、正しい認識に基づいた判断ができる、労働者が職業選択をする、正しい認識に基づいて判断ができる環境整備をすべきだと私は考えます。是非取り組んでいただきたいと思いますけれども、高木副大臣、いかがでしょうか。
副大臣(高木美智代君) お答えいたします。
働き方改革を推進するためには、長時間労働是正などの働き方改革に積極的な企業ほど労働市場で選ばれ、それが企業の自主的な働き方改革の取組を更に促進するという好循環を生み出すことが重要でございます。
これまで、若者雇用促進法やまた女性活躍推進法など関係法令に基づきまして、若者や女性といった対象者ごとに残業時間や各種認定の状況などの職場情報を厚生労働省のウエブサイトで提供することを企業に促してきたところでございます。現在、こうした既存の、言わば縦割りになっているウエブサイトの職場情報を集約しまして、求職者などがワンストップで閲覧できる職場情報総合サイトにつきまして、平成三十年、今年の九月末の一般公開に向けた作業を行っているところでございます。
職場情報総合サイトをSNSなどを活用した広報を通じてより多くの求職者などに御活用いただくとともに、働き方改革を実践する企業への支援に資するよう努めてまいりたいと考えております。
三浦信祐君 是非そのサイトを充実をして、そして社会に広めていただきたいと思います。
その観点で、働き方改革についての特設サイト等を立ち上げて、充実に取り組み、理解促進を図るべきだと考えます。いつも言ってしまって大変恐縮なんですけれども、従前の厚生労働省のホームページに少し加工しただけではなく、年金機構の教えて年金のような、平易に制度が理解が進む内容を参考にして、労働の現場のみならず、教育の現場の平易な教材として活用できるような内容としてはいかがでしょうか。御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
政府参考人(藤澤勝博君) お答えを申し上げます。
働き方改革を進めていくに当たっては、改革の目的であったりあるいは内容などについて、使用者、労働者双方の理解を図ることが重要だと考えております。今御指摘をいただきましたけれども、厚生労働省のホームページにも働き方改革の特集のページを設けまして、その改革の意義でありますとかあるいは内容、中小企業・小規模事業者の支援策などの紹介を行っているところでございます。
加えまして、ウエブ上で労働基準法等の内容や相談先の紹介などを行うサイト、これは「確かめよう労働条件」と言っておりますけれども、であったり、あるいは自社の労務管理などの問題点を診断をできるサイト、これは「スタートアップ労働条件」というサイトと称しておりますけれども、などを通じまして、働いている方や事業主、労務管理の担当者が、法令の理解あるいはその適切な労務管理を行うに当たって必要な情報を積極的に発信をしているところでございます。
こうしたサイトにつきまして、新たなコンテンツの掲載を行うなど随時充実を図っていくことにより、働き方改革についての理解の促進を図っていきたいと考えております。
三浦信祐君 よろしくお願いします。
公明党として、若い世代の方から声を聞くユース・トーク・ミーティングの取組を全国で行っております。その中で、正社員になりたくないとの声を伺いました。また、正社員の方からは、正規社員よりも非正規の方がいいとの話もありました。驚いてよくよく聞いてみますと、正社員の場合、責任分担が大きい、また、契約社員の労働状態によって労働量や人員の穴埋めで明らかに負担が多い、それに見合うような給料をもらえていない。これに対して、非正規、契約社員の場合は、時間で区切って働き、定時で帰宅する。時間が取れる生活であり、考え方によっては労働対価としての給料も高いと思うと、率直な若者の声をいただきました。これらの事実から、均等待遇、均衡雇用の重要性を示していると言えます。
一方で、働き方そのものについての課題を突き付けているとも思います。労働条件の差を付ける必要性があると捉えるべきなのか、待遇差の解決が必要なのか、正社員になることで、実は時間外労働が確定してしまう、休暇取得もままならない環境になる場合がある状態を解消する施策が必要と捉えるべきなのか、いろいろな考えがよぎってまいります。働き方を選べる、また個人に合わせ多様な働き方を実現するための本法改正であるならば、この関係性、この実態を含めて、総じて加藤大臣の見解、いかがでしょうか。
国務大臣(加藤勝信君) 今御指摘のような、現行下において、それは企業ってそれぞれいろいろまちまちではあると思いますけれども、正規で働くということは、長時間残業すると、休みもなかなか取れない、そういう認識あるいは実態の中で、むしろそういう形じゃなく、雇用の安定からすれば正社員がいいんだけれども、非正規という、やむを得ないといいますか、消極的な選択をされている方もおられるんだろうというふうに思います。
そういった意味で、今の非正規と正規、正規といったときに、今申し上げた残業等々がどうしても行わなきゃならないと、この格差がすごく大きいから、中には選択の範囲に正規ということが入らないということもあるわけでありますから、今回は正規という中において残業時間を減らすことによって正規で働くことも自分の選択肢の中に入っていくということは、逆にその方にとっては選択肢の幅が広がっていくと、こういったことにもつながるというふうに考えております。
そういった意味においても、今回は三六協定で超えてはならない罰則付きの時間外労働の限度を設ける、こういうことを基本として、全体として長時間労働を是正をしていくということが、それぞれの企業において取り組んでいただく、その結果として、働く方が健康の確保はもとよりワーク・ライフ・バランスをし、そして、そうしたことが結果においては働く方にとっても企業にとっても非常にメリットがあるんだということをしっかりと実感していただくという形で推進していく必要があると思いますし、また、休日についても、必ずしも有給休暇は十分に取得されていない現状にあります。今回は、年次有給休暇の年五日間については、企業が働く方との相談の上、時季を指定して与えなければならないという、そういうところまで踏み込んでいるわけでありますので、こうした施策をすることによって、正規か非正規かということ、自分の事情に応じてより選択ができる、こういった状況にしていくということ、またそのことがそれぞれ皆さん方の意欲であり思いを発揮していただくことにもつながっていくと、こういうふうに考えております。
三浦信祐君 あらゆる施策を動員しつつ、現場の実相に合ったような形で法が執行していくということが大事だと思います。
一方で、基本的には、働き手がきちっと、正社員だ非正規雇用だということを乗り越えて環境を整備していくという、事業主の責任も実はこれから重要になってくるんではないかなというふうに私も思いますので、是非、若い世代がいろんな選択をしても格差が固定されないというこの法律の趣旨がきちっと社会に実装できるように取り組んでいただきたいと思います。
四十から六十代の働く世代にとって、御家庭に高等教育を受けているお子さんを養育している場合が多いと思います。ここで転職をしようと考えても、転職先企業で給与が減少するため、生活設計上の不安から転職しない判断が往々にして多いのが実情です。冒頭伺ったように、入口が非正規ならば給与の心配があり、とても決断できないと思います。
働き方改革の実現に必要なことの一つに人材確保の容易性が挙げられます。待遇不安の解消が雇用のアンバランスを解消することにも直結し、雇用の流動性が確保できるきっかけになるとも考えられます。今後の社会のありようと転職に伴う賃金減少への対策について、厚生労働省としての見解はいかがでしょうか。
政府参考人(小川誠君) お答えを申し上げます。
近年、職業キャリアが長期化し、働き方のニーズが多様化するとともに、急速な技術革新や産業、事業構造の変化によって、企業、労働者双方において中途採用、転職、再就職のニーズが高まっております。こうした中で、厚生労働省としては、年齢に関わりなく転職、再就職しやすい環境を整備し、労働者が自分に合った働き方を選択して自らキャリアを設計できるようになることが重要だと考えております。
このため、本年三月に、転職、再就職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行の確立に向け、転職市場に関する情報発信、職場情報の見える化の促進、労働者の専門性や職務遂行能力等の見える化、中高年齢者等の中途採用拡大に取り組む企業への助成等を内容とする、年齢に関わりなく転職、再就職者の受入れを促進するための指針を作成したところでございます。本指針につきましては経済界に要請を行ったところであり、今後とも、誰もが幾つになっても新たなチャレンジができる環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。
三浦信祐君 地方にとっても大事な課題ですし、また労働者不足に悩んでいる業界もありますから、しっかり下支えしていくということが今後も大事だと思いますので、私たちも取り組んでいきたいと思います。
無期転換ルールと本法整備との関係
次に、無期転換ルールについて質問させていただきます。
無期転換ルールは平成二十五年に施行され、本年、平成三十年四月一日に初めて適用され、有期から無期転換の申込みができる労働者が誕生してまいります。該当する労働者は、平成二十五年を起点として毎年契約更新をされて、五年以上継続的に勤務をされてきた方と承知をしております。
その上で、無期転換ルールについて、雇用されている労働者がこのルールについて知識がない場合があってはいけません。現場に伝えるためにどのような広報に取り組んでいるのでしょうか。また、使用者の理解も不可欠です。使用者、労働者両者に対して本ルールの現場への徹底をしっかりすべきだと考えます。
ルールを宣言することで不当な扱い、不利益となることも絶対に阻止しなければいけません。加えて、無期転換ルールにおいては、中小企業の実効性確保には商工会議所、商工会の果たす役割は大きいと思います。関連省庁、また地方自治体との連携も含めて、厚生労働省としてしっかりこれ取り組んでいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
政府参考人(山越敬一君) 無期転換ルールにつきましては、労働者や企業に対しまして、これまで、無期転換のポータルサイトの開設でございますとかインターネット広告の配信、SNSを活用した情報発信、またセミナーの開催でございますとかハンドブック等による周知を行ってきたところでございます。
昨年の九月、十月にはこの無期転換ルールの取組促進のキャンペーンを実施いたしまして、商工会議所でございますとか商工会などの使用者団体、関係省庁への要請など、集中的な取組も行ったところでございます。また、都道府県労働局に無期転換ルールの特別相談窓口を設置いたしまして相談にも当たってまいりました。
そしてまた、本年の二月からは、さらに、四月から本格施行ということでございますので、これに向けまして、全国統一の電話番号によります無期転換ルールの緊急相談ダイヤルを開設いたしまして、労働者、事業者の双方に対して相談を実施しているところでございます。また、この時期に再度、関係団体等について要請行っているところでございます。
今後とも、中小企業も含めまして無期転換ルールへの対応が円滑に行われますよう、あらゆる機会を捉えてしっかりと周知を図っていきたいと思います。
三浦信祐君 私も保育士から相談を受けました。十年間ずっと毎年契約を更新してきたんです、ずうっとこのままなんでしょうかと。いやいや、これはルールとして変わりますよと説明して、ちゃんと窓口を教えさせていただくということも我々の仕事と思ってやらせていただきました。現場に、その電話番号を知らない、また、そのことを得る情報ツールが意外と広まっていないという実態も表していると思いますので、若い世代に是非声を聞いていただいて、この霞が関で行っている知見のみならず、一歩踏み出した情報を得るということに取り組んでいただくことがこのルールをきちっと運用できることになると思います。是非取り組んでいただきたいというふうに思います。
自由な働き方、職業選択の自由が確保される社会にあって若い世代がライフプランを考えるに当たり、雇用形態の選択に関する知見があるか否かが判断結果に差異を生んでまいります。雇用と将来設計等を併せて相談できる体制はあるのでしょうか。なければ、若い世代が容易に相談できる体制を創設すべきだと思います。もしあるならば、それはどこで、どのような内容でしょうか。
政府参考人(安藤よし子君) 議員御指摘のとおり、若者が職業選択の段階において十分かつ正確な情報を提供され、その下で的確な判断を行う環境を整備することは大変重要なことだと考えております。このため、適職選択や職業生活設計に関する相談体制確保の基盤として、こうした相談の専門家でありますキャリアコンサルタントを国家資格化し、その育成、普及を図っているところでございます。
キャリアコンサルタントは、大学のキャリアセンターなどにおいても御指摘のような専門的な相談に応じる中心的な役割を担っております。また、大学生などの就職支援の専門窓口として、新卒応援ハローワークを全都道府県五十七か所に設置しております。ここには、キャリアコンサルタントなどの資格を有しますジョブサポーターを配置いたしておりまして、担当者制によるきめ細やかな就職支援に加えて、大学などへ定期的に訪問いたしまして出張相談をする、あるいは職業意識形成に関するセミナーを行うというような活動をしております。その際、御指摘の雇用形態によるメリット、デメリットといった観点も含めまして、労働市場の実態について理解を促すことを重点に置きまして、正社員求人とのマッチングに結び付けているところでございます。
今後とも、こうした若者の適切な就職選択に結び付くように、大学などとの連携の下で専門的な相談体制の確保に努めてまいりたいと考えております。
三浦信祐君 そうなりますと、労働教育を受ける機会は今後の働き方改革を実現するために極めて重要だと私は思います。労働に関する常識、ルールを知っていることは、雇用者である場合でも使用者である場合でも必要だと思います。中学校、高校、大学と、それぞれのステージにて的確な知見を得られる社会とすべきです。相談窓口でも、こういうところでしっかりとお伝えしていくことが大事なのではないかなと思います。
これらの教育の部分での取組を含め、見解を伺います。
政府参考人(藤澤勝博君) お答えを申し上げます。
労働法令に関する教育や啓発活動は、こうした知識を知らないために発生する様々な問題の防止に役立つものでありますとともに、今委員が御指摘のように、働き方が多様化をしていく中で、どのような働き方を選ぶか、適職選択のために大変重要なことだろうというふうに思っております。
厚生労働省では、文部科学省と連携をしまして、労働法制についての分かりやすいハンドブックの作成や周知、中学、高校、大学等における講義やセミナーの実施等による労働法の基礎的な知識の周知、それから高校、大学等の指導者用の資料の作成や全国の高校、大学への配付、また高校生や大学生を始めとする就職予定の方などを対象とした労働法に関するe―ラーニングの教材の公開や周知などを進めてきたところでございます。
引き続き、文部科学省とも連携をしながら、中学、高校、大学と各段階に応じた労働法教育に取り組んでいきたいと考えております。
三浦信祐君 労働教育は、自分も社会も、そして家族も地域も守ることだということ、それを若い段階からしっかり伝えていくということが大事だと思いますので、是非文科省との連携をしていただきたいと思います。
高度プロフェッショナル制度導入
次に、高度プロフェッショナル制度について質問いたします。
国民の皆様から高度プロフェッショナル制度の導入について不安があることを加藤大臣はどのように捉えられているのでしょうか。不安だとされている具体的な内容として、健康確保どころか際限なく働かせ続けられる、過労死抑制どころか過労死促進だ、際限なく対象労働者の適用範囲が拡大する、厚生労働省の胸先三寸で制度はいかようにでも解釈変更されるとの懸念があらゆるところで言われています。
本法律での高度プロフェッショナル制度は、もしそうではないならばきちっとそういう制度ではないということも説明をしていただかなきゃなりませんし、法体系、省令としてそういうふうなことはないよというふうに、明確に国民の皆様に理解、納得できるようにしていかなければならないと思います。加藤大臣、是非御答弁いただきたいと思います。
国務大臣(加藤勝信君) まず、高度プロフェッショナル制度は、時間ではなく成果で評価されるという働き方、これを自ら選択することができる、高い交渉力を有する高度専門職に限って、しかもその本人の同意をベースに自律的な働き方を可能としようとする制度であります。
そのために、高度の専門的知識などを必要とし、その性質上、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないものと認められる業務ということで業務を決め、また書面等による合意に基づき職務が明確に定められているという労働者、そして年収の要件、こういったことを法律上の要件としているわけでありまして、そしてその上で、先ほど申し上げた、本人の同意がなければこの制度は運用できないと、こういう仕組みになっております。
また、対象となる業務、年収要件については法律で規定をしているところでありまして、また、その法律の規定にのっとって業務については省令においてその範囲を定めようと。そこでは、時間等の、使用者側から時間の配分等々についての指示が行われない、そういうことを規定をしようということであります。
また、法律を改正しない限り、対象業務の拡大、年収要件の引下げはできないわけでありますし、元々年収要件をなぜそういうように決めているのかということを踏まえれば、当然その事態を変えていくということにはつながらないというふうに考えているわけであります。
三浦信祐君 一つ飛ばさせていただきます。
労基法四十一条の二、四にて、四週で四日以上の休日確保が明文化されております。加えて、年間百四日以上の休日付与が指定をされています。高度プロフェッショナル制度で働く労働者に対して、休日を百四日以上、四週で四日以上とした根拠は何でしょうか。また、休暇の取り方についてシミュレーションできているのでしょうか。
政府参考人(山越敬一君) 高度プロフェッショナル制度でございますけれども、働く時間の長短あるいは時間帯にかかわらず高い収入を保証いたしますとともに、働き過ぎを防止する措置を講ずることで、めり張りある効率的な働き方を可能とする新たな制度であるわけでございます。
働き過ぎを防止する措置といたしましては、健康管理時間を客観的に把握することを制度導入のための前提といたしますとともに、これを基に使用者が健康を確保するための措置を講ずる、していただくこととしております。具体的には、昨年七月に連合から総理宛てに要請いただきました内容を踏まえまして、法律上の要件として年百四日かつ四週当たり四日以上の休日を義務付けております。このほか、インターバル規制及び深夜業の回数制限など、選択的な健康管理措置も設けているところでございます。
この年百四日かつ四週当たり四日以上の休日取得の義務付けでございますけれども、年間の総日数として週休二日に相当する、すなわち年百四日を確保した上で、働く方が働く時期を柔軟に決められるよう配慮した基準としているものでございます。このルールは働く方の健康を確保するための最低限のルールとして設定しているものでございますので、実際には制度を利用される方によりましてその百四日の取り方は様々であると考えますけれども、例えばある月は週休一日で集中して働き、その後まとめて休暇を取るといった働き方も考えられるところでございます。
三浦信祐君 若干明快じゃないような気がするんですけれども、基本的には、今までこういう対象になる予定だと言われる労働者の皆さんは、今の労働基準法にのっとって仕事をしてきた。高プロ制度を導入することによってむしろ自由に働ける、自由に自分で決められるから効率良くなって、より休日が取れる、今までよりも仕事ができて、対価を給料としてもらえるぐらいの、企業に対するフィーが出る可能性もあるという意味でこれは多分作られたんじゃないかなと思うんですね。
その上で、百四日とした根拠というのを明快にもう一度答弁していただけませんか。
政府参考人(山越敬一君) この年間百四日でございますけれども、年間の総日数として週休二日相当、これを最低限確保するということでございます。また、この休日の取り方でございますけれども、いつ働きいつ休むかというのはその労働者が自律的に決定することが原則であるというのがこの高度プロフェッショナル制度の考え方であるというふうに思っております。
三浦信祐君 是非、交渉能力が高い人だという前提でもあると思いますので、この休暇のことに関してもこれからいろんな議論があるかもしれませんけれども、明確にこれから答えられるようにしておいていただきたいと思います。
労基法四十一条の二、五では、イ、ロ、ハ、ニの項目を設けて、これらのいずれかに該当する措置を使用者が講じなければならないこととしております。これらを設定した意義について伺いたいと思います。
その上で、健康確保措置に関して多くの対象部分で厚生労働省令で定める要件としています。この内容が極めて重要です。検討はどこまで行っても労働者の健康を第一義にして行い、これが反映した省令でなければなりません。今後、省令の検討を行う上で、意見聴取、検討プロセス等、国民の皆様が理解しやすいようにすべきだと考えます。
加藤大臣、これらについて確約をしていただきたいと思いますけど、いかがでしょうか。
国務大臣(加藤勝信君) 今御指摘の点については、年百四日かつ四週当たり四日以上の休日取得、これはもう全員に適用される。それに加えて、選択的な措置として四つ規定されております。一つだけ申し上げれば、終業時刻から始業時刻までの間に一定時間以上の休息を確保させるインターバル規制と深夜業の回数制限ということでありますが、このどれか、その四つのうちどれを取るかということを労使委員会の五分の四以上の多数の決議の上、そして実施していただかなければ制度導入の要件を満たさない、そういう立て付けになっているわけであります。
この選択的措置について、例えば今インターバルの時間数を申し上げましたけれども、そうした具体的な時間数等々については、平成二十七年二月の労政審の建議においても、法案成立後、審議会での検討の上、省令で規定することが適当である、また、その審議に当たっては、各企業における現在の健康確保措置の取組実態も十分踏まえつつ対象労働者の健康確保に十分留意すること、これが適当だというふうに指摘をされているわけでありますから、この法案の成立をしていただいた後、この審議に当たっては、今申し上げた建議の趣旨をしっかり踏まえて御議論をいただき、具体的な内容を固めていきたいと、こういうふうに考えております。
三浦信祐君 是非的確な省令を出していただきたいと思います。
さて、高プロ制度を労使で決定し適用されている労働者が同意撤回した場合、撤回事実を確実に受け入れること、さらには、不利益を被らないようにする対策が講じられていなければならないと考えます。法令上、どのような措置がなされているのでしょうか。確認させてください。
政府参考人(山越敬一君) 高度プロフェッショナル制度でございますけれども、これにつきましては、衆議院における修正におきまして、労使委員会の決議におきまして同意の撤回手続も定めなければ制度は導入できないということにされたところでございます。
その上で、今後、この対象労働者の適正な労働条件を確保するために労使委員会の決議事項に関する指針を策定することとしておりますので、御指摘の同意の撤回によって不利益に取り扱われるようなことがあってはならないことということにつきましては、指針に明確化する方向で検討していきたいというふうに思います。
三浦信祐君 そのとおりにお願いします。
厚生労働省の毎月勤労統計による給与平均額に基づき、基準年間平均給与額の三倍の額を相当程度上回る水準であることが高プロ制度適用同意可能な根拠法文としております。この給与金額を設定した根拠について伺います。
また、給与について、千七十五万円という要件について、成果が仮に上がらなかった場合、これが支払われないということが許されるのか。法文上で支払われると見込まれる賃金の額としていることに対し、支払われることが決定していない、決定したものの全て支払われていない状況下でも高プロ適用可能と解釈されているケースがあるようですけれども、これは正しいのでしょうか。
いずれにせよ、制度運用上、労働者にとって不利益が生じないようにする対策はどのようになっているのでしょうか。
政府参考人(山越敬一君) 高度プロフェッショナル制度の年収要件についてでございますけれども、これは閣議決定をされました日本再興戦略改訂二〇一四におきまして、「一定の年収要件(例えば少なくとも年収一千万円以上)を満たし、」と明記されたこと、それから、平成十五年に労働基準法の改正がございまして、そのときの附帯決議におきまして、高度な知識、技術及び経験を有しており、自らの労働条件を決めるに当たり、交渉上、劣位に立つことのない労働者として、労働政策審議会で検討の上、大臣告示で一千七十五万円の年収要件が設定されているというようなことを踏まえまして、今回の公労使によります労働政策審議会におきます議論におきまして、建議の形で、この一千七十五万円ということが建議されているところでございます。
こうした経緯を踏まえまして、年収要件につきましては、労働契約により確実に支払われることが見込まれる賃金の額が省令で定める額でなければならないということとしているわけでございまして、さらに、法案におきましては、このことを担保するという意味で、労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であるというふうに規定したところでございます。
この高度プロフェッショナル制度での年収要件でございますけれども、これは、対象となるのは確実に支払われることが見込まれる賃金でございます。したがって、例えば業績によってその金額が変動してしまうような、そういった賃金はこの算定に入れることができないものでございます。
高度プロフェッショナル制度の適用者には労働契約に基づき使用者から年収要件を満たす賃金が支払われることになりますので、仮にこれが支払われなければ、賃金不払ということで労働基準監督署の指導監督の対象にもなる、そういった形で担保もされていくものだというふうに考えております。
三浦信祐君 要は、きちっと払いますと、そういう条件でなければできない。給与が変動するようなときにはそもそもそのプロフェッショナル制度を導入できないという理解というふうに受け止めさせていただきました。
いずれにせよ、高度プロフェッショナル制度について、広報の充実、具体例を今後ともお示しいただきながら、国民の皆様に理解が進むように、これからも厚生労働省が不断の努力を是非していただきたいと思います。
時間外労働の上限規制に関して
続いて、時間外労働の上限規制について質問をさせていただきます。
時間外労働の上限規制について、これに違反した場合の罰則として、労働基準法第百十九条第一号を改正して、六か月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処することとしております。
この罰則規定の根拠はどこにあるのでしょうか。また、この罰則は他のどのような違反と同等なのか。また、罰則を受ける対象者は、使用主の責任者なのか、現場の上司なのか、それとも法人としているのでしょうか。明確にしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
政府参考人(山越敬一君) 労働基準法の刑罰の量刑でございますけれども、他の法律における罰金額との均衡から定められているものでございます。
今回の法案に盛り込みました時間外労働の上限規制に違反した場合の罰則でございますけれども、これは現行の労働時間、休日に関する三十二条、これに対する違反と同等ということで、同じ六か月以下の懲役又は三十万円以下の罰金として定めたものでございます。
この罰則の対象者でございますけれども、法第百十九条におきましては、改正後の法第三十六条の第六項の規定に違反した者とされておりますので、時間外労働の上限の要件を満たさないで労働者を労働させた行為者、すなわち使用者がこの対象者となるものでございます。
具体的には、どのような者がこの使用者に当たるかどうかというのは個別事案ごとに具体的な状況を見て判断されることになるわけでございますけれども、労働基準法上の定義といたしましては、使用者とは事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする全ての者をいうとされておりますので、そういった者で具体的に行為をした者ということが使用者となってくるということだと思います。
それから、労働基準法におきましては両罰規定が設けられておりますので、事業主、これは法人の場合は法人になりますけれども、この事業主に対しても罰金刑が科されることになるものでございます。
三浦信祐君 時間もありませんので、最後一つ、大臣に質問させていただきたいと思います。
時間外労働の上限規制を超えた場合の指導についてですけれども、今ありましたように、その罰則規定が適用されるようなことがない、これが大前提でありますけれども、万が一その上限規制を超えた場合の指導について、どのような体制でどう対応していくのでしょうか。実効性確保のために明確でなければならないと考えます。具体的なプロセスも含めて、加藤大臣、御答弁をいただければと思います。
国務大臣(加藤勝信君) 現行でも当然あるわけであります。従来より、三六協定の窓口指導、違法な時間外労働が認められる事業場に対する厳正な指導監督に取り組んできているところでございまして、例えば、平成二十八年においても、労基法三十二条、これは労働時間の規定でありますけれども、等に違反する事業所数として、約二万八千件ということで、監督等の実施を行っているところであります。
また、平成三十年度より、働き方改革を通じて働く方々の労働条件をしっかり守っていくという観点から、全ての労働基準監督署に特別のチームを新たに編成をして長時間労働是正のための監督指導を徹底していくと。一方で、法令に関する知識や労務管理体制が必ずしも十分でない中小企業等に対しては、きめ細やかな支援ということを効果的に推進していきたいというふうに考えております。
法改正後においても、適法な三六協定の届出、また新たな上限規制の遵守のため、現行の取組も含めてしっかりと監督指導に取り組んでいきたいと考えております。
三浦信祐君 通告したことが全てできなくて大変申し訳ないんですけれども、是非、働き方改革で日本の未来がつくられる、そういう法律をしっかり議論させていただいて、将来に皆さんに希望が持てるような社会をつくるように頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
ありがとうございました。