文教科学委員会(2017年05月18日)

生涯年収格差における専門職大学卒業生の就職および適正対価取得環境のための取り組みについて

三浦信祐君 公明党の三浦信祐でございます。
 本日は、参考人の先生方、大変勉強になるお話を伺いまして、本当にありがとうございます。
 少し角度を変えて質問させていただきたいと思うんですけれども、先日、高卒の学生さんと大学卒業の学生さんの生涯年収、大体七千万円ほどのギャップがあるというデータを文科省から拝見をさせていただきました。これというのは、先ほどのプロフェッショナルラインとアカデミックラインと、これパラレルでいったときにそんなことがあってはいけないようなことというのがまさにそこに表れてきているのかなというところを痛感をさせていただいたんですけれども、やはり、貧困の連鎖を絶つという観点からしても、手に職があってきちっと必要な対価がもらえるような社会をつくっていかなければいけないんだろうというふうに私は今、問題意識を持っております。
 その上で、この専門職大学、私は大事な制度で推進をすべきだろうというふうに思っているんですけれども、大事なことは、この専門職大学で修学をした後、きちっと就職をして対価が得られるというような体制に社会がなっていく、またそれが認知できるような環境をつくっていくというのが私は大事なんじゃないかなというふうに思います。その上で、必要な準備と取組だったり、行政がしっかりここに能力を費やしてもらいたいということに関して御意見があれば、小林参考人、平川参考人に是非伺いたいと思います。

参考人(小林光俊君)  ありがとうございます。
 今おっしゃっていただいたように、この新しい専門職大学が、まさに職業教育の重要性というものが国際社会の中でもちゃんと教育として認められていくということにつながるということですね。
 これはどういうことを意味するのかということなんですが、例えば、今から二十年前、日本の例えば電気製品などはかなり高スペックなもの、オーバースペックな商品と言われて、国際社会の中では、大量生産というよりは、例えば電気釜なら電気釜、安い電気釜が、日本円ですれば五千円程度のものと五万円程度の電気釜があるとすれば、日本のものはもう高スペックで御飯が立って大変おいしく炊けるもの、しかし、国際社会ではまだそこまで行っていないので、五千円以下の安いものが国際社会でずっと中国始め東南アジアあるいは世界に広まったという、これは二十年以上前の話ですがね。
 ところが、今はまさにそういうものが全部世界に広がって、まさに高スペックなものが今求められる時代になってきている。ですから、そういう意味においては、こういう職業教育ということも全て、やっぱり高度なものが国際社会でも受け入れられる基盤が国際社会としてもうでき上がってきたというふうに思うわけです。
 そんな中で、やっぱり日本の職業教育、今まで、要するに百二十四条校ということで専門学校は格下だというイメージを、今回の専門職大学ができることによって、日本が本来はアジアの中で一番最初に先進国になったわけで、それはやっぱり物づくりの技術が発展をして経済が発展をしたという背景が今から三十年、四十年前にあったわけですよね、あるいは五十年前からずっと。それがもう一回見直されることに私はつながっていくというふうに思うんですね。
 アジアを含めて、世界はもう物があふれる時代になった。今度はまさに高スペックなものが、より高度なものが見直される時代にはなってきて、そこで、やっぱりこの職業教育の日本における高等教育化という制度化、この専門職大学制度というのはそういう人材養成にきちっと機能していける教育機関ということになっていく。すなわち、高度な専門職の養成機関ということが国際社会にちゃんと認知されていくということであろうかと思うんです。
 ですから、大変、そういう意味でいえば非常に私はいい制度であるというふうに思う。日本のまさに、今まで高度経済成長をして、この二十数年停滞をしていたが、ここでもう一回それが活性化をしていく、それは教育によって活性化をしていく、そういう制度につながっていくだろうと、こういうふうに評価しているところであります。

参考人(平川則男君)  御質問ありがとうございます。
 まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、入学はしたけど、それに対価が得られる就職先があるかどうかというのはかなり関心が深いところかなというふうに思っているところであります。
 絶対、一〇〇%就職そこにできるということは別に、それはそこまでは言いませんけれども、やはり、特定の産業、特定の職種を十八歳、入学の時点で選ぶんですよね。結局、それを選んだことが失敗にならない、四年後、ああ、こんなところ、職種を選んでしまった、それは失敗だったということにならないような社会ニーズの見極めであるとか、産業構造の変化というのを踏まえた形での教育やカリキュラム内容というのは私極めて重要なんではないかなというふうに思っています。
 さっき言った医療系や福祉系の大学などは資格職でありますのでその辺はかなり対応関係が分かりやすいということもありますが、それ以外の産業、職種を対象とするのであれば、その辺しっかりと慎重に見極めながらこれから更に検討を深めていただきたいなというふうに考えております。
 ありがとうございます。

社会的職業ニーズと専門職大学における学問とのマッチングについて

三浦信祐君 ありがとうございます。
 その上で、続けて質問させていただきたいんですけれども、社会的ニーズと専門職大学で教えるその科目というのか業界の業種というのか技能、この辺の体制がしっかりマッチングをしないと今の就職的課題というのが解消できないんじゃないかなという問題意識が私はございます。
 具体的な例を挙げればいいと思うんですけれども、例えば建設業、現業職従事者が今三百三十三万人おられます。しかし、五年、十年たちますと、高齢化が進んでおりますので、約三割の方が五十歳以上ですから、そっくりそのまま現場の方がいなくなると。ですので、同じく建設業界に入るとしても、現業職の方が社会としては求められている。
 また、同じく現場監督が少ないというのをたくさん現場で聞いております。となると、現場監督の能力を持たせて社会に出さないと、業界はいいけれども業種が合わないというケースもたくさんあるんではないかなと。そう考えたときに、このマッチングという体制を私は取っていかなきゃいけないんじゃないかなというところも思っています。
 加えて、実は大学化をすることに対する課題というのは先ほど児美川先生からもありましたけれども、実は私の背景としては、親が大学行ってほしいというニーズの方が本人以上に高い。これが、親の満足と本人の対価と、そしてやりたいことができる。加えて、大学には行ったんだけれども、三年たったときに、どれぐらいの人が就職をして自分がやりたかったこと残っているか、恐らく半分ぐらいしかいないんじゃないかなと。そのためには、学び直しをする機会があって、かつ社会のニーズに合って、対価が取れて、そして望んでいることができるような社会をつくっていくというのが、これきっかけになるんじゃないかなというふうに今私は考えております。
 ですので、この社会的ニーズと専門職大学の学問のテリトリー、これをマッチングをさせるということにこれから政治の部分も行政もしっかり図っていかなきゃいけないかなと。また、経営側の方もそれを敏感に感じ取らなきゃいけないかなというふうに私は思うんですけれども、この辺に関して、お三方の参考人から是非御意見をいただきたいというふうに思います。

参考人(小林光俊君)  それでは、お答えさせていただきます。
 今おっしゃいましたように、社会的ニーズの変化とか、あるいはマッチングということも大変大切なことだと思うわけであります。
 よく日本の高等教育、また特に大学卒業生のことが言われてきたのは、例えば大学卒業生が三年で三割、一回就職した者は辞めてしまうと、こう言われてきましたね。三割の人たちが、一回就職した者が辞めてしまうと言われている。これは、やっぱり自分の性格に合わない職業に就いたということで辞めるというようなことだったんだろうと思うんですが、こういったことの、やっぱり適性に対する学び直し機関としての、おっしゃったように、今度の専門職としては、学術に向かない、やっぱり物づくりとかデザインとか、これはやっぱりどちらかといえば今回の新しい専門職大学のテリトリーだろうと思う、国際社会的にもそうなっているわけでありまして。そういうやっぱり職業教育をきちっと評価できる制度に私はなっていくということで大変大きな期待が持てるのではないかと。学術に向かないそういう職業、デザインとかあるいは物づくりとか含めて、そういう人たちに自信を持たせる制度になるんだと、こういうふうに思うわけであります。俗に、今まで三割の人たちが、大学を卒業して三年たつと三割が離職するとも言われていた。こういう人たちは、やっぱりもう一回職業教育で学び直しをして、そして新しい知識、技術を身に付け、そして社会へ出ていくと。
 これは例えば、私、ドイツやヨーロッパ、あるいはアメリカ等の視察も毎年毎年定期的にやらせていただいているんですが、まさにドイツや北欧などでは、そういう、要するに専門職大学のような制度はまさに国民の学び直し機関としての機能を果たしているということなんですね。ですから、大学卒業してももう一回新たに学び直しをして、そして新たなノウハウを身に付けて、そして社会で活躍できるという制度にきちっとつながっていくということを、今度の専門職大学できればそういう機能をきちっと果たせるようになるだろうと、こういうふうに思う。
 今の大学は、御存じのように、学び直しの学生さんたちは国際的には十分の一以下しかいないんですね。要するに、一・何%しか学び直しの人がいない。国際社会では、ヨーロッパでは約一八%以上、二〇%近い人たちが全て学び直しの学生さんたちで、常に自分をリフレッシュして、新しい知識、技術を身に付けて、そして社会で貢献できる。そういう教育機関に今度の新しい専門職大学というのはなっていく、そういう可能性は非常に高いと、こういうふうに思っているところであります。
 以上です。

参考人(平川則男君)  御質問ありがとうございます。
 社会的ニーズと専門職大学の学びのマッチングの解決というのは、大変これは、先ほど言いましたように、しっかりとやっていく必要があるのかなというふうに考えているところであります。
 ただ、一方で、大学でありますので学士になるわけであります。そういった意味で、コミュニケーション、その基礎となるもの、考え方、物の考え方、若しくは社会や環境との関係において自己を理解する能力であるとか、あと創造的思考力を育成するための教養教育というのもやっぱり重要でありますので、その両方をどうやって実現していくのかということが重要ではないのかなというふうに思っていますので、先ほど、最初に既存の教育機関との違いを明確にするという意味を私、言わせていただきましたけど、その辺もうちょっと、もっと深く議論していかないと駄目じゃないのかなと。単純に産業界や社会のニーズだけ、それも必要ですけれども、それだけではない、学士ですから、その両方を成り立たせていく仕組みというのが極めて重要ではないのかなというふうには考えているところであります。
 ありがとうございました。

参考人(児美川孝一郎君)  御質問ありがとうございます。
 専門職大学・短期大学をつくる場合には、当然、社会のニーズに沿った教育課程をどう担保できるかというところが重要になってくるというのは御指摘のとおりだというふうに思っております。
 ただ、その上で申し上げますけれども、是非お伝えしたいことは、大学の教育課程というのはなかなか変わりにくいんです。変わりにくいという意味は、例えば、今社会にこういうニーズがありそうなので新しい学部、学科つくりましょうという構想をするのに一年、二年掛かります。当然、文科省の設置審査を受けますと一年掛かります。そして、募集が始まって、ようやく受け入れてから四年間でやっと完成するわけです。その間、六、七年たちます。
 でも、今の状況で社会のニーズといった場合には、もうその六、七年って待っていられるんだろうかみたいなこともありまして、だから大学は学術中心で、むしろ基礎的、理論的なことをきっちりやる、そのことによって実際に現場に出たときには応用が利く、あるいは専門教育、職業教育をどうしても受けなきゃいけない場合、もっと柔軟なカリキュラムが素早く組めるようなところで学ぶということの方が制度設計としてはいいのではないかというふうにも思っております。
 以上でございます。

三浦信祐君 時間になりました。ありがとうございました。