文教科学委員会(2016年11月22日)

福島第一原発事故による福島県からの避難生徒に対するいじめ問題を受けた「いじめ防止対策推進法」の実効性について

三浦信祐君 公明党の三浦信祐でございます。
 初めに、東京電力福島第一原発事故で福島県から横浜市に避難された生徒がいじめを受け続けてきました。生徒さんや保護者の方のことを考えますと、胸が引き裂かれるような思いです。いまだ多くの児童生徒が避難を余儀なくされております。避難生徒を含め、学校生活の状況把握とともに、放射性物質や避難者の生活について教育方法を強化すべきだと思います。
 加えて、いじめ防止対策推進法の施行から三年が経過をしておりますが、実効性が問われるような事案です。教育委員会と他の行政機関との連携の強化、法律の運用改善や改正も視野にしてしっかりと取り組んでいかなければならないと思います。
 松野大臣の認識と決意を伺います。

国務大臣(松野博一君)  横浜市のいじめ重大事態については、私としても非常に重く受け止めております。横浜市から直接詳細を聞き取り、指導を行うために、昨日、義家副大臣及び担当者二名を市に派遣をいたしました。
 いじめ防止対策推進法については現在施行後三年目を迎えており、国のいじめ防止対策協議会から示された議論の取りまとめにおいては、学校内の情報共有、組織的対応の推進、いじめ重大事態の調査の進め方についてガイドラインの策定を含む、学校による対応を促すための対策が提案をされています。現在、文部科学省において、いじめ防止対策の充実に向けた事業、作業に着手をしているところであり、今回の事案の教訓や再発防止策を施策に盛り込んでいきたいと思います。
 また、委員から御指摘が受けた放射能等に関する改めての教育の充実でありますが、文部科学省としては、児童生徒が放射線に関する科学的な知識を身に付けることができるよう、放射線副読本を作成、配付し、その活用を促しているところであります。さらに、本事案を受けて、文部科学省より全国の自治体に対して、こうした被災児童生徒に対するケアの必要性について改めて周知をしております。

三浦信祐君 是非実効性が上がるように省を挙げて取り組んでいただきたいと思います。大臣の是非リーダーシップに御期待を申し上げます。

子どもの貧困対策に係る教育資金の一括贈与における非課税措置の取り組みについて

 総理は、本国会所信表明演説で「若者こそ我が国の未来。若者への投資を拡大します。」と話されました。現在、税制改正要望のうち子供の貧困対策に係る教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置について、内閣府も厚生労働省も積極的に取り組まれております。文部科学省も共同要望事項となっています。
 これまでは、祖父母等が孫等に対して一括贈与された教育資金について、一人一千五百万円まで、平成三十一年の三月末まで贈与税の非課税措置となっております。これを、受贈者が貧困状況にある子供であれば、贈与者を祖父母に限らず適用拡大するという内容です。すなわち、篤志家が貧困状態にある子供に税負担のない希望を贈ることができるようになると思います。また、寄附文化の定着につながる制度だと思います。
 全国知事会からの要望としても、貧困の世代間連鎖を断ち切るために、贈与税における教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置の拡充など、子供の貧困対策の更なる充実強化を図るべきであるとあります。私、全くそのとおりだと思います。
 そもそも、教育資金のことであり、どこの省庁よりも積極的に文部科学省が取り組んでいかなければいけない要望であり、制度だと思います。松野大臣の認識と決意、お伺いさせてください。

国務大臣(松野博一君)  全ての子供が家庭の経済状況にかかわらず希望する質の高い教育を受けられるということは大変重要であります。
 今回の要望は、篤志家が貧困の状況にある子供に対して教育資金を一括贈与した場合の贈与税の非課税措置により、貧困の連鎖や世代間格差の解消を図ろうとするものであり、内閣府、金融庁、厚生労働省と共同で要望をしています。
 この税制により、一人でも多くの貧困の子供に質の高い教育の機会が与えられ、また社会全体で次世代の育成を支える機運が醸成されるよう、その実現に向けて積極的に協議を進めていきたいと考えております。

特定国立研究開発法人における従前組織と方向性について

三浦信祐君 是非よろしくお願いしたいと思います。大人がしっかり子供に希望を与えられる社会をつくることが日本の未来を明るくしていくと思います。是非お願いいたします。
 さて、本年十月、文部科学省所管の理化学研究所及び物質・材料研究機構が特定国立研究開発法人へ移行しました。日本の科学技術、基礎研究の発展のために大いに活躍できる、貢献できる組織に更に成長していただきたいと期待するものであります。
 その上で、従来の国立研究法人と何が違うのか、また今後の目指す方向について、内閣府生川審議官からお答えをいただければと思います。

政府参考人(生川浩史君)  お答えいたします。
 独立行政法人につきましては、独立行政法人通則法におきまして、行政執行法人、中期目標管理法人、国立研究開発法人の三つに類型化されているところでございます。このうち国立研究開発法人は研究開発の成果の最大化の確保を目的とした法人でございまして、その中でも特定国立研究開発法人は、国家戦略に基づき世界最高水準の研究開発の創出と普及、活用を促進し、我が国のイノベーションシステムを強力に牽引する中核機関との位置付けとなっているところでございます。
 このため、特定国立研究開発法人においては、特に理事長の強いリーダーシップの下、民間資金を呼び込みイノベーションのプラットホームを構築していくこと、また優れた研究者には世界水準の処遇を実現するなど、業務運営の改善、向上を行っていくことといった先駆的な取組について、ほかの二十四の国立研究開発法人を先導していく役割を担っているところでございます。

基礎研究の産業化、事業化への取り組みについて・研究者の特許申請の支援体制について

三浦信祐君 ありがとうございます。
 先日、横浜にあります理化学研究所を視察させていただきました。大変有用な研究と熱意に基づいて研究に臨まれている皆様方の姿に日本の未来が見える思いでありました。
 一方で、日本では基礎研究と応用、実用化との間にはギャップがあります。また、その中から仮に飛躍的な成果が出たとしても、産業化や事業化というのは研究者にとって決して得意なことではありません。今後、日本が世界と競争に打ち勝っていくためには、基礎研究の産業化、事業化への橋渡し、これが大切だと私は思います。現状と取組について、大臣、是非御答弁いただければと思います。

国務大臣(松野博一君)  特定国立研究開発法人は、研究開発成果の創出のみならず、成果の普及及び活用の促進等、我が国のイノベーションシステムを強力に牽引する中核機関としての役割を果たしていくことが期待をされています。
 このため、物質・材料研究機構では、外部連携部門に九つの企業との連携センターを設置するなど産業界との連携を進めているほか、今後、化学業界や鉄鋼業界との業界別オープンプラットホームの構築に取り組むこととしております。また、理化学研究所においては、産業連携本部の下、七つの企業との連携センターの設置、企業研究者をリーダーとする融合的連携研究の推進、理研ベンチャーの創設などに取り組んでいます。
 文部科学省としては、これらの法人が産学官連携の先導的モデル機関としてイノベーションを牽引できるよう、特定国立研究開発法人を始めとする研究開発法人の産学官連携機能の強化を積極的に支援をしてまいります。

教員や研究者の研究時間の確保について

三浦信祐君 ありがとうございます。積極的にということは大変心強い御発言だと思います。是非よろしくお願いしたいと思います。
 その上で、大学や研究機関共に教員や研究者が様々なタスクが多いために、自身の研究時間の確保が最大の課題となっているように伺っております。その上で、研究者の特許申請の支援体制はいかがでしょうか。また、大切な国の資産となる研究成果の公開、非公開、あるいは特許取得の有無などのハンドリングは誰が行っていくのか、特定法人こそここを大切にしなければいけないと思いますし、これがモデルケースに育てていただきたいと思います。現状認識と今後の取組について、大臣にお伺いいたします。

国務大臣(松野博一君)  先般閣議決定された特定国立研究開発法人による研究開発等を促進するための基本的な方針において、特定国立研究開発法人には、知財マネジメントを適切に行いつつ、大学、産業界との連携、協力のための枠組みを構築することが求められています。このため、物質・材料研究機構や理化学研究所では、知的マネジメントを行う組織を設け、専門的な人材を配置し、オープン・クローズ戦略も踏まえて特許出願を行うための取組を実施しているところです。
 文部科学省としては、引き続き特定国立研究開発法人における知財マネジメントの構築に向けて積極的に支援をしてまいります。

京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区におけるスキームとし支援体制について

三浦信祐君 ありがとうございます。このハンドリングを行う人材を育てるということも国として大切なことだと私は思います。この問題についても今後取り上げさせていただければなというふうに思います。
 神奈川県、横浜市、川崎市では、京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区にて、産官学による革新的医薬品、医療機器の創出を目指して積極的に取り組まれており、ここで五年が経過しようとしております。ここからあらゆる成果が出て継続するためには重要な段階に来ていると思います。この当面のスキームと支援体制について、内閣府に伺います。

政府参考人(青柳一郎君)  お答えいたします。
 総合特区制度は、産業の国際競争力の強化等に関する地域の包括的、戦略的なチャレンジを、規制の特例措置や税制、財政、金融の支援措置等により総合的に支援するものでございます。
 京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区については、委員御指摘のとおり、平成二十四年度から二十八年度までの計画ということで、特に成果を生み出すまでに時間を要するライフサイエンス分野において、各種の支援措置等を活用することで研究開発イノベーション創出拠点の形成を進めて、実用化、産業化に向けての意欲的な取組がなされているところでございます。
 今年度までということでございますので、新しい計画の申請を受けまして認定を行って、このような意欲的な取組を内閣府としても引き続き積極的に支援してまいりたいと考えております。

三浦信祐君 ありがとうございます。積極的な支援をしていただけること、これ、働かれている方、研究者にとっては大変希望のある話です。是非お願いしたいと思います。
 その上で、ここで、地域で働かれている研究者にとって、この支援が途切れることや適切な評価がされているかどうかということが常に気にされていることだというふうにも伺いました。私もそう思います。今後、継続的に発展ができるように全力で応援していただきたいということを重ねてお願いしたいと思います。
 また、評価に当たっては資金を出している省庁が判断されることになるとは思うんですけれども、縦割りによってプロジェクトが分断されてしまわないようにすること、また、適切な評価ができる人材と体制づくりにも不断の努力を是非していただきたいと思います。加えて、このようなリサーチコンプレックスの全体評価をする、そういう責任の所在というのが実は不明確だという話もたくさん伺っています。是非、今後もリーダーシップを取る、責任の所在を明確にする、その上で人材育成に是非携わっていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

日本人博士後期進学者と卒業生の推移、進路、雇用状況について

 次に、基礎研究を支える博士課程に関して伺いたいと思います。
 現在、日本人博士後期課程進学者と卒業生の推移、進路、雇用状況について、文科省から御説明をいただきたいと思います。

政府参考人(常盤豊君)  お答え申し上げます。
 学校基本統計に基づいてお答えをしたいと思います。まず、進学の状況でございますが、修士課程を修了した学生の博士後期課程への進学者数につきましては、平成十六年までは増加傾向にございましたが、平成十六年の九千九百十二名をピークといたしまして年々減少傾向にございます。平成二十七年は七千七十二名でございます。
 また、卒業者の進路でございますけれども、博士課程修了者及び所定の単位を修得したけれども学位を取得しなかったいわゆる満期退学者の人数を合わせますと、社会人あるいは留学生も含めまして、平成十九年までは増加の一途をたどっておりましたが、平成二十年以降は一万六千名前後を推移しており、平成二十八年は一万五千七百九十二名でございます。
 平成二十六年度の博士課程修了者及び満期退学者の主な就職状況でございますが、大学教員が約一六%、民間企業等への就職者が約一三%、医師、公的研究機関、官公庁などその他機関への就職者が約二一%、ポストドクターが約一二%。全体を通じて、任期のない職に就いた者が約四割、任期のある職に就いた者が約二割となっております。就職者以外の残りの約四割のうち約一二%が従前より職に就いていた社会人でございますが、二六%程度はアルバイトなどの一時的な職に就いた者、進学者及び就職状況が分からない者等となっておりまして、博士課程修了者の多くが希望に合った就職先を見付けにくいという状況にあるというふうに認識しております。

三浦信祐君 ありがとうございます。
 これは今年の高校生の就職率ですけれども九七・七%、大学等の学部生の就職率九七・三%に比べて圧倒的に低い数字だと思います。この現状を変えていかなければ、基礎研究も継続性が難しくなりますし、大学で教官として教鞭を執って未来の学生さんを育成する、社会を支えるような人材を育てることが立ち行かなくなっていくと思います。是非対策を講じる検討を真剣に行っていただきたいと思います。
 その上で、博士課程の卒業生のキャリアパスが不安定、不透明、継続的雇用が担保されなければ、そもそも博士後期課程に進学するというふうに考える方、実際に進学をする方が減少するという懸念があると思います。加えて、必要な収入が卒業後得られなければ、高額な授業料に対して借用した奨学金の返済にたちまち行き詰まってしまうリスクがあると思います。現状認識を松野大臣に伺います。

国務大臣(松野博一君)  経済社会のグローバル化への対応や新産業の創出が求められる中、大学や公的研究機関のみならず、民間企業や国際機関において、新たな知を生み出し、社会全体を牽引する人材として博士号取得者を増やすことが重要と考えております。
 しかしながら、委員から今御指摘をいただきましたけれども、博士課程への進学者数は伸び悩んでおり、その大きな理由は、大学や公的研究機関における若手研究者ポストの多くが任期付きの雇用であることや民間企業の多くが博士号取得者の採用に積極的でないことであり、博士号取得者のキャリアパスが不透明になっていることが大きな課題であると認識をしております。
 このため、文部科学省においては、産官学にわたりグローバルに活躍する人材の養成のため、産業界の参加を得つつ、専門分野の枠を超えた教育を行う博士課程教育リーディングプログラム事業を平成二十三年から実施をするとともに、優れた若手研究者が安定かつ自立したポストに就いて活躍することを促す卓越研究員事業を本年度から実施をしております。特に、博士課程教育リーディングプログラムにおいては、学生が多様なキャリアパスを身近に感じるとともに、企業関係者も博士号取得者の採用に対する関心を高め、民間企業や官公庁に進む博士号取得者がより多くなっています。
 今後とも、これらの取組を通じて博士課程修了者のキャリアパスを多様化し、優秀な学生が博士課程に進学するよう努めてまいりたいと考えております。

国立大学の運営交付金について

三浦信祐君 私が調べた範囲では、国立大学の教官となるポストというのは、四十歳未満ですと大体一万六千人、一万人が任期があって、六千人が任期がないと。ということは、ほとんどが多くの場合、任期に心配があるという方だと思います。
 研究者の雇用状態が常勤ではなく時限ポストが増加している、このままでは基礎研究の継続性が極めて困難となる可能性があります。また、博士後期課程進学者が減少する原因をつくっていくことになると思います。
 この財源となる運営費交付金の拡充というのが私は絶対に不可欠だと思います。何としても文科省はしっかり運営費交付金の拡充、確保に真剣に取り組んでいっていただきたいと思います。端的に大臣の決意をいただければと思います。

国務大臣(松野博一君)  国立大学法人の法人化の後、運営費交付金が千四百七十億円減少する中で、国立大学の四十歳未満の若手教員の雇用状況は、任期なしの教員が減少する一方で、任期付きの教員が増加をしております。
 文部科学省としては、研究者が安定して研究活動に専念できる環境づくりを行うために、教員の安定的雇用を支える基盤的経費の確保が極めて重要であると考えております。このため、平成二十六年度からは、国立大学改革強化推進補助金により、国立大学の若手教員の安定的ポストを確保するための支援をしています。
 今後とも、各大学が人事・給与システム改革を進めていく中で、若手教員のポスト拡大を図る取組を支援するとともに、運営費交付金の確保に努めてまいります。

三浦信祐君 大変にお力強い言葉、ありがとうございました。未来の日本を支える教育、科学技術発展のために諸問題を解決するべく、大臣のリーダーシップの下で是非全力で取り組んでいただきたいと思います。
 以上で終わります。