- 発電用原子炉と研究用原子炉との構造、安全対策の違いについて
- 政府全体として医療用RIの活用促進と安定供給への取り組みについて
- 医療用RIの研究開発と「常陽」の活用
- 医療用RIの安定供給へのリダンダンシー確保と持続可能性確保
発電用原子炉と研究用原子炉との構造、安全対策の違いについて
三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
秋野議員に引き続いて、日本の医療用ラジオアイソトープ、RIについての取組について質問させていただきます。
国民の皆様のお預かりをした税金を使って、原子力について取組をこれまで政府は進めてまいりました。その中で、東日本大震災以降、原子力発電、いわゆる原発の安全性、信頼性が国民の皆様の関心と議論となっております。一方で、これまで数多くのデータ、実績を上げてきました研究用の原子炉は発電ができません。原発と研究用原子炉についての整理が必要であります。
原子力発電所の設備と研究用、まあある意味製造用の原子炉との違いを明確に答弁いただきたいと思います。その上で、研究用、製造用の原子炉の安全対策と非常時の対応はどのように異なるのでしょうか。
政府参考人(生川浩史君) お答えいたします。
試験研究炉は、発電を目的とした原子炉ではなく、発生する中性子を活用した幅広い試験研究等を実施するための原子炉でございます。一般的な試験研究炉は、発電用原子炉と比較して熱出力が二桁以上低い、また冷却系の圧力や温度が低い、あるいは炉心が小型であり、装荷されている燃料が少ないなどの違いがあり、運転形態や核燃料の量等に応じた施設の潜在的リスクの程度は相対的に低いというふうに考えられるところであります。
試験研究炉も原子炉等規制法に基づく厳格な安全対策が求められるところでございますけれども、このような特性を踏まえ、発電用原子炉と比べると、例えばでございますが、意図的な航空機衝突への対策は試験研究炉では求められていないなどの違いがございます。また、試験研究炉に係る非常時の対応についても、発電用原子炉とは異なり、予防的防護措置を準備する区域、これPAZというふうに言っておりますが、これが設定されていない。また、緊急防護措置を準備する区域、UPZと言いますが、これも発電用原子炉では三十キロを目安とされている一方、試験研究炉では五キロ以下となっているなど、リスクに応じた対策が講じられているというところでございます。
政府全体として医療用RIの活用促進と安定供給への取り組みについて
三浦信祐君 研究炉の場合には、仮にブラックアウトしたとしても自然冷却ができるという、そういう非常に安全性が高いということも、これもしっかりと併せていきたいと思います。
RIは、がん検査や治療に多用されて、医療現場で不可欠な材料でありまして、安定供給が欠かせません。今後、日本において、医療用RIの安定供給のためには、コストが安く大量に製造可能な原子炉を活用した製造が有効であります。国民の健康安全保障の観点から、医療業界と原子力産業の異業種連携を図ることが必要であります。
是非取り組んでいただきたいんですけれども、梶山大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(梶山弘志君) 委員から医療用ラジオアイソトープについてお尋ねがありました。
原子力という技術は、エネルギー利用のみならず、御指摘の医療を始め工業や農業など様々な利用の在り方があるものと承知をしております。
御指摘のありました先進的ながん治療薬となる医療用放射性同位体のアクチニウムは、現在、原子力発電として商用化されている軽水炉では製造できないものの、放射性廃棄物の減容化、有害度低減、資源の有効利用という核燃料サイクルの効果をより高めるために、開発中の高速炉を利用することで大量に製造ができるものと承知をしております。
日本原子力研究開発機構、JAEAが運転再開を目指している高速炉の実験炉「常陽」でも、そうした医療用放射性同位体を製造できる可能性があると承知をしております。また、実際にJAEAでは、過去に「常陽」以外の研究炉において医療用放射性同位体を製造した実績もあると承知をしております。
医療用放射性同位体の製造につきましてはJAEAが判断すべきものでありますけれども、エネルギー政策を所管する経済産業省としても、高速炉の技術が医療用放射性同位体の製造を担う価値も有するということを認識した上で、「常陽」の運転再開を始めとする高速炉サイクルの実現に向けた施策に文部科学省等関係省庁と連携してしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
三浦信祐君 大臣、明確に重要性をおっしゃっていただきました。私も思いを一にするところであります。
今、国内に現存する研究用の原子炉、これはJAEAが保有する、今おっしゃっていただいたJRR3、ジャパン・リサーチ・リアクター3や大洗にある高速実験炉「常陽」を活用することで、最も効果的で大量に安価にRIの製造が可能であると私は考えております。
こうした背景を踏まえまして、研究用、ある意味製造用でもありますけれども、原子炉として、RIを製造する実用化に当たって技術的課題は存在しているのでしょうか。
政府参考人(生川浩史君) 原子力機構が保有します試験研究炉である、今御指摘をいただきましたJRR3や「常陽」においては、熱中性子や高速中性子を照射することにより放射性同位元素の製造を行うことは技術的に可能であるというふうに考えております。
一方で、課題ということでございますので、例えばで申し上げますと、「常陽」を活用したアクチニウム225の製造に当たっては、副生成物の除去など技術的課題も存在するというふうに承知をいたしております。
三浦信祐君 是非これは研究を進めていただきたいことをお願いをさせていただきたいと思います。
医療用RIはこれまで、先ほど秋野議員からもありましたように、大半が輸入であり、その多くは外国の原子炉にて製造されてまいりました。
お手元にお配りをした資料を御覧いただきたいと思います。医療用RIの原料の一つでありますモリブデン99の世界の製造の状況であります。
今後、医療用RI製造を行ってきました世界の原子炉は、五十年を超えるものが大半であり、老朽化が確実に進んでおり、廃炉も近づいております。医療用RIの供給途絶の可能性が極めて高い状況であります。その中で、日本が独自に原子炉を動かしていくことで医療用RIを製造、販売ができるようになれば、国内確保が確立をして、供給途絶を免れることができます。
国として戦略的に取り組んでいただきたいと思いますが、井上大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(井上信治君) これまでRIの医療利用については、診断と治療の両面において活用されてきており、今後、医療現場における更なる活用の進展が見込まれます。
このように、医療用RIは安定的に供給される必要がある一方、医療用RIの製造を行ってきた世界の原子炉は老朽化が進み、製造を行う施設が減ってきております。このような状況を踏まえると、我が国の研究用原子炉や医療機関等の加速器を活用することにより、医療用RIの国内製造を行っていくことは非常に重要であります。
このため、委員の御指摘も踏まえ、国内における医療用RIの製造を進めるべく、文科省、厚労省、経産省との連携の下、医療用RIのニーズや医療用RI製造に貢献可能な国内の研究用原子炉及び加速器とその供給体制についての情報収集等を行って、医療用RIの安定供給に資する検討を行ってまいりたいと考えます。
三浦信祐君 井上大臣、明確におっしゃっていただきました。そして、連携をしていくということもしっかりとお願いしたいと思います。
今、そのことを梶山大臣にも聞いていただきましたので、質問はこれで終わりですので、委員長、お取り計らいをお願いします。
委員長(野村哲郎君) 梶山大臣は御退席いただいて結構でございます。
三浦信祐君 昨年度、JRR3が再稼働をしております。私は、以前、このJRR3を利用させていただいて実験研究もさせていただきました。日本の研究開発や人材育成のためにも一貫して早急に再稼働すべきと訴えて、実現を正直喜んでおります。
これまでJRR3は、新規制基準以前、東日本大震災前には医療用のRI、がん治療用の金198、またイリジウム192を製造しておりました。これまで製造、販売を担ってきましたメーカーはどちらでしょうか。
政府参考人(生川浩史君) 御指摘のJRR3でございますけれども、運転停止前には幅広い分野において利用されており、その中で、これも御指摘いただきましたとおり、RIの製造等も行われていたところでございますが、御指摘の金198とイリジウム192については、株式会社千代田テクノルがその製造を担い、その販売については公益社団法人日本アイソトープ協会が担っていたところでございます。
三浦信祐君 専門メーカーが作っていただいたという明言をしていただきましたが、これらのがん治療用のRIは切らずに治す治療法でありまして、人体の機能と形態を失わないようにすることができるものであります。
金198は現在でも多くの国内需要があります。今後、JRR3の運転再開、再稼働後には医療用RIの製造も再開すべく早急に事業者確保を取り組んでいただきたいと思います。もう十年以上間が空いてしまっております。大臣に強く望みたいと思いますけれども、萩生田大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(萩生田光一君) 原子力機構の試験研究炉JRR3については、令和三年二月に運転再開後、現在は各種設備を調整しているところであり、本年六月末にも本格的な供用開始をする予定と承知しています。供用運転開始後は幅広い分野の学術利用、産業利用が見込まれますが、医療用のRI製造、販売について原子力機構と事業者の間で調整が進んでおり、運転再開後速やかに開始される見込みと承知しております。
多様な分野での活用が期待される試験研究炉については、医療分野の貢献も重要と考えており、原子力機構の取組をしっかり推進してまいりたいと思います。
三浦信祐君 明言していただきました。ありがとうございます。
核医学検査で医療画像診断の一種でありますSPECT検査、すなわち、撮影するカメラが体の周りを回り、体内に入れたRIの発するガンマ線を取り込む、それによって体の断面図を観察する検査がございます。
SPECT検査に使用されるテクネチウム99mは世界で最も多用されているRIでありまして、その原料はモリブデンの99であります。先ほど秋野議員が御指摘いただいたとおりであります。モリブデン99の半減期は約六十六時間、テクネチウム99mの半減期は六時間であります。日本での年間使用推定数は約百万件で、日本は欧米に次いで世界第三位の消費国でもあります。世界のニーズも今後更に高まっていくとの予測があります。
JRR3は、テクネチウム99mの原料となるモリブデン99を製造することができる、その可能性も先ほど来御答弁いただいておりますけれども、どれぐらい作製できるのでしょうか。
また同様に、高速炉の「常陽」でも同様にモリブデン99の作成が可能であると考えております。JRR3については熱中性子、「常陽」では高速中性子と取り出し方は異なっても、新しい技術を生み出して医療用RIの国内製造へと道を開いていただきたいと思います。そのためにも、医療系企業を確保していただき連携し、即座に製造、販売に対応可能な環境を整えていただきたいと思いますけど、文科省に伺います。
政府参考人(生川浩史君) 原子力機構では、JRR3において、天然のモリブデン中に含まれておりますモリブデン98に中性子を照射することでモリブデン99を製造する中性子放射化法の研究開発に取り組んでいるところでございます。
JRR3におけるモリブデン99の製造量でございますけれども、原料の製造から医薬品として流通するまでの日数、JRR3の運転日数などを考慮して、原子力機構において一定の仮定を置いて試算をさせていただきましたところ、年間の国内需要の約三〇%の量の製造ができる可能性があるというふうに聞いているところでございます。
また、高速実験炉「常陽」においても、今申し上げました中性子放射化法によるモリブデン99の製造は可能であるというふうに考えておりまして、原子力機構の保有する試験研究炉を活用した医療用RI製造など医療分野への貢献に向け、文部科学省としては、今御指摘いただきました医療系企業との連携も含めて、必要とされる研究開発など原子力機構の取組をしっかりと推進、支援をしてまいりたいというふうに考えております。
医療用RIの研究開発と「常陽」の活用
三浦信祐君 是非お願いします。
放射線医療分野において、治療のというセラピュティクと診断のダイアグナスティクの造語でありますセラノスティクス、すなわち治療と診断の融合、これが注目をされておりまして、世界的に新しいRI内用療法が盛んとなっております。
お手元の資料二枚目を御覧いただきたいというふうに思います。世界におけるアルファ線RIの臨床利用と供給の状況であります。秋野議員からありましたように、アクチニウムは世界では検査のみならず、アルファ線であるゆえに患部の治療効果と身体的ダメージを極小化できるとの特性を活用した治療に世界がしのぎを削っております。
世界最先端のがん治療で世界が注目するアクチニウム225の内用療法に資する日本の研究の状況はどういうふうになっているんでしょうか。
政府参考人(杉野剛君) 失礼いたします。
先ほど先生からお示しいただきました表にもございましたように、アメリカあるいはオーストラリアなどにおきましては、アクチニウム225を用いたがん治療の臨床試験が進められているなど、世界的にアクチニウム225を用いた内用療法に関する研究が進展しておりますけれども、また同時に、世界的な需要拡大を踏まえまして、従来のアクチニウム225の製造方法に加えて新たな製造方法に関する研究が進められているところでございます。
お尋ねの我が国における研究の動向でございますけれども、量子科学技術研究開発機構、QSTにおきまして、アクチニウム225の臨床利用に向けての加速器を用いたアクチニウム225の製造に成功しておりますけれども、アクチニウム225の臨床利用につきましては、QSTを始めといたしまして、現段階では動物等を用いた非臨床研究が進められているという状況であると承知しております。
以上でございます。
三浦信祐君 まさに日本は世界から遅れているというのが実際であります。世界はどんどん研究が進んでおります。日本だけが取り残されてしまう現状を変えていかなければいけないと強く思っております。
特に、標的アイソトープ治療、TRT、また標的アルファ線治療、TATの分野では、世界から二十年遅れだというふうに言われております。アクチニウムは、現在、日本として米国からの輸入割当てがほとんどなくて、アルファ線の入手が困難であり、まさに研究開発ができないというのが現状であります。十分な量のアクチニウムが確保されることによって、がん治療の研究開発が更に推進をされて患者の利益につながってまいります。ツールはあります。なので、それを一体的に活用することができれば、田村大臣、これは患者の皆さんに大変効果があるというふうに思います。
早急にアクチニウムの確保や研究開発推進、これ取り組んでいただきたいと思いますけれども、厚労大臣、いかがでしょうか。
国務大臣(田村憲久君) ラジオアイソトープ内用療法、これを進めるということは非常に私も有意義だというふうに思います。
今言われたように、これ実際問題からいうと、種類だとか量によっては、体内に取り込むものでありますから、体内から放射線が出ちゃうということで、放射線防護規定にのっとって退出基準、これクリアするまで、その放射線の病室といいますか、そこに入っていただかなきゃならないということですが、アクチニウムは、言われるとおり、飛程が非常に短いということがございますので、そういう意味では遮蔽等々の必要性もないということでありますから、非常に有効なものだというふうに思います。
アクチニウムが十分にこれ確保できれば、そういう意味では研究の幅も非常に広がってまいりますし、将来がん治療のそれこそ有力な選択肢の一つになってくるというふうに思っております。そういう意味からいたしましても、我々としてもしっかりとここは注視をさせていただきながら、これからのいろんな対応を考えてまいりたいというふうに思っております。
三浦信祐君 がん研究に当たられている研究者の皆さん、大変今ので希望を持ったと思います。二十年遅れていても、ツールを持って使い続けて、材料が取れれば、世界を追い抜くことは絶対できると思います。
その上で、現場では、実はこの医療RI分野についての公的支援は皆無と言っていいというふうにおっしゃってもおられる方が多い、AMEDの実用、製造段階の融資を利用することも難しいという話があります。是非改善を図っていただきたいと思いますし、公的資金、そして世界の趨勢に合わせた認可のスピード感も必要でありますので、大臣、是非要望しておきたいというふうに思います。
原子炉からのアクチニウムの確保は、高速中性子を利活用できる「常陽」から実は製造することは、それしかできません。「常陽」に医療用RI製造設備を整備することも含めて、稼働をするための必要な予算を十分確保し、早急に「常陽」を動かしていただきたいと思います。萩生田大臣、是非決断して進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(萩生田光一君) 原子力機構が保有する高速実験炉「常陽」は、高速中性子の照射能力を有することから、アクチニウム225の製造への活用が期待され、関係学会からもその旨の要望がなされているものと承知しております。
「常陽」は、東日本大震災後に見直された新たな規制基準への適合を図るべく、平成二十九年三月に原子炉施設の設置変更許可申請を行い、現在、原子力規制委員会による審査が行われているところです。
文科省としては、「常陽」の一日も早い運転再開を目指し、原子力機構が安全審査に着実に対応するよう指導するとともに、必要な予算の確保に努め、運転再開後に期待されるアクチニウムの製造を始め幅広い研究開発ニーズにしっかり応えていきたいと思っています。
三浦信祐君 大臣、明言していただきまして、本当にありがとうございます。
「常陽」を稼働することによって、アクチニウムほか、これまで輸入に頼っていたRI素材が製造可能となります。これまでの答弁をいただいているとおりであります。そのためには、早期に動かせるように、原子力規制庁も検査を急ぐべきであると思います。原子力委員会でやっていただかなきゃいけない。今、どのような審査状況なのでしょうか。懸案事項があるのでしょうか。
いずれにしましても、命を守る観点で、国民の命を救うことができる可能性を十分に有している「常陽」を一日も早く再稼働へ全力を尽くしていただきたいと思います。規制委員長、明確にお答えいただきたいと思います。
○政府特別補佐人(更田豊志君) お答えをいたします。
「常陽」の審査については、ナトリウム火災対策であるとか事故時の炉心の挙動であるとか、ナトリウム冷却高速炉である「常陽」の特徴を踏まえた審査を進めているところでありますが、進捗については、今後の申請者の対応にも大きく左右されますので、現時点でその見通しなどについて申し上げられる状態にはありません。
なお、現在の原子力機構の「常陽」に係る申請は原子炉の使用目的としてRI製造を含んでおりませんので、仮に許可を受けて運転再開に至ったとしても、RIの製造をすることはできません。医療用RIの研究開発やRI製造を「常陽」で行うのであれば、これを原子炉の使用目的に含めた申請内容にしていただく必要があります。
三浦信祐君 いずれにせよ、国民の皆さんにとってみれば重要なことでありますので、規制委員会として今お話がありましたけれども、今、大臣、この答弁についてどう思われますか。
政府参考人(生川浩史君) 安全審査の進捗については確認をさせていただきたいと思いますけれども、今御指摘がありますように、RIの製造についてはかなりの御要望があるというふうに認識をいたしておりますので、そういったものにきちっと対応できるようにしかるべく対応してまいりたいというふうに考えております。
医療用RIの安定供給へのリダンダンシー確保と持続可能性確保
三浦信祐君 大事なことが明確になりましたので、ここから井上大臣に質問させていただきたいと思います。
今、文科省、厚労省、そして経産省も一致して「常陽」への再稼働へ結束をして当たるということ、様々な観点から御答弁をいただきました。明確となっております。アクチニウムを含めた医療用RIの製造、研究加速が確実であると希望が持てる内容であります。
では、安定供給という観点も必要であります。アクチニウムを始めとする医療用RIの安定供給には、原子炉の場合、停止して検査が必要であり、その間の供給途絶を避ける対策も欠かすことはできません。現状、原子炉よりも高価で少量でありますけれども、加速器を使ったアクチニウムの製造が可能だということも先ほどありました。
そこで、国としての供給マネジメントも必要でありまして、リダンダンシー確保からも今から準備が必要であります。JRR3と「常陽」、加速器を立体的に活用するように取り組んでいただきたいと思います。
なお、先ほどの、規制委員長から話がありました。この課題も乗り越えていかなければいけないと思いますので、やっぱりきちっと政府挙げて取り組んでいただかなければいけないと思います。
いずれにしましても、経済安全保障の視点ではサプライチェーンの確保であって、国内メーカーが製品化、商業化を行えるように政府は育成と体制確保へ取り組んでいただきたいと思います。
さらに、これまで輸入に頼ってきたRI自体を逆に輸出することができれば、サプライチェーン上の戦略的不可欠性が確保できることになります。俯瞰的に管理マネージができるよう、それぞれの省庁横断的に取り組んでいただかなければいけませんので、井上大臣、是非取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(井上信治君) アクチニウムを始めとしたアルファ線を放出するRIの活用による内用療法につきましては、御指摘のように、がんの治療効果が大きく正常な細胞への悪影響が小さいことから世界的にも注目され、研究が進められております。
我が国におきましても、日本原子力研究開発機構、量子科学技術研究開発機構、理化学研究所、各大学等において、RI製造に関連する研究が進められており、今後の研究の進展が期待されます。
このような状況を踏まえて、文部科学省、厚生労働省、経済産業省との連携の下、アルファ線を放出するRIの製造に係るJRR3、「常陽」、加速器の活用について必要な検討を行ってまいりたいと考えています。
三浦信祐君 「常陽」やJRR3も決して若い研究炉ではありません。必ず引退、廃炉になってまいります。その後に改めて研究炉開発となれば、研究の持続性が失われて、知見、人材、ノウハウはデータが途絶をしております。
世界は、国産化率が高まっている中国もあります、輸出可能な段階まで引き上がっており、原子力工学の論文数もうなぎ登りになっております。「常陽」、JRR3の後も考えていかなければいけない時期であります。基盤となる研究用、ある意味製造用の原子炉の整備に向けた準備は今のうちから進めておくべきであります。
萩生田大臣、取り組んでいただけませんでしょうか。
国務大臣(萩生田光一君) 試験研究炉は、原子力に関する多様な研究開発や人材育成の場として我が国の今後の原子力利用を支える重要な基盤と認識しています。
今日、先生、いいタイミングでいい質問していただいたなと思うのは、原子力発電所と原子炉とは、研究用の原子炉とは役割が違うんですね。ただ、三・一一の事件以降、事故以降、どうしても全ての人が萎縮してしまって、研究者たちも枯渇をする状況にあります。研究したければ海外に行かないと炉が動いていない、こういう状況が続いてきましたので、人材を育成する上でも、あるいは技術をつなぐ上でも、やっぱり炉は必要だということを我々しっかり国民の皆さんに理解をしていただきたいと思います。
震災以後、一時は全ての試験研究炉が運転を停止した状況にも陥りましたが、順次新規制基準に対応し、これまでにJRR3を含む五施設が運転を再開し、「常陽」を含む三施設について運転再開に向けた準備を進めています。一方、多くの施設で高経年化が進んでいるところであり、我が国の試験研究炉を活用した研究開発、人材育成の取組が途絶えないように、今の時点から将来を見据えた取組を進めることが必要だと思います。
現時点では、廃炉を決定した「もんじゅ」のサイト内に新たな試験研究炉を設置することを計画しておりますが、このような計画も含め、将来の試験研究炉の在り方について検討していきたいと考えています。
今回、コロナ禍を経験していろんなことを学んだと思うんです。これだけの医療技術、創薬技術がありながら、ワクチンが国内でいまだにできていない、これも仕組みの問題だと思います。私は、今回、先生から御指摘のあった様々な原子炉から派生する医療素材というものは、国内で、メード・イン・ジャパンで持つべきだと思います。そのことが国民の健康を守る上でも極めて重要だと思います。日本製は、百円高くても千円高くても日本製の方がいいという海外の皆さんも大勢いらっしゃるわけですから、その強みを生かしてやっぱり原子力研究を更に深化させていきたい、こういう決意でございます。
三浦信祐君 大臣、これは極めて歴史的な答弁でありますし、私たちしっかりと支えていきたいと思います。
規制委員長に最後、簡単に確認をさせていただきたいと思います。
これだけ国民の皆さんからのニーズがあり、各省庁がやろうとしているところであります。規制委員会にきちっとチームがあって、そして申請がなされたら、それに対してきちっと御対応いただきたいということを重ねてお願いをさせていただきます。よろしくお願いします。
○政府特別補佐人(更田豊志君) お答えをいたします。
現在の申請は使用目的を高速増殖炉の研究開発に限っておりますけれども、現在まだ審査が進行しておりますので、補正を行って使用目的に医療用RIの研究開発等々が加えられるのであれば、その施設も含めて審査を進めてまいりたいというふうに思います。一旦許可を受けて再申請という、変更申請というプロセスを経なくても、現時点でも更に研究内容を加えるかどうか、これはまさに原子力機構の判断というふうに理解をしております。
三浦信祐君 委員長、技術者として明確に答えていただきましたので、是非、国民の安全を両方から守るという点で仕事を是非進めていただきたいと思います。
最後、国内製造のRIの輸出の可能性と障壁になる法律制度があるかどうか、簡単にお答えいただければと思います。
政府参考人(風木淳君) お答えいたします。
医療用RIを含めて、放射性同位元素の輸出に当たっては、安全確保の観点から、一定のものについては外国為替及び外国貿易法により経済産業大臣の輸出承認が必要となります。具体的には、経済産業大臣の輸出承認が必要となる放射性同位元素でございますが、輸出貿易管理令別表第二に定めてあるものでございます。一としては、数量が三百ギガベクトル以上のもの、密封されたものに限ると、二として、数量が百ギガベクトル以上三百ギガベクトル未満のものであって、透過写真撮影用ガンマ線照射装置又は近接照射治療装置に装備されているもの、こうしたものについて輸出承認が必要となります。
輸出承認の申請に当たっては、輸出者はまず原子力規制庁による申請資格、それから交付基準等の確認を得て、同庁から輸出確認証の交付を受ける必要がございます。なお、この手続については、医療用RIに限らず対象となる放射性同位元素について同様であります。その上で、経済産業省による審査を経て輸出承認証の交付を受けるということとなります。このような申請に必要な手続を経ることにより輸出が可能となるということでございます。
三浦信祐君 国民の皆さんの命を守るためにこの原子力炉をうまく活用するということを是非政府全体で進めていただきたいと思います。
ありがとうございました。