参議院 経済産業委員会

第213回国会 参議院 経済産業委員会 第11号 令和6年5月23日

規格化・標準化への取り組みについて

三浦信祐君
公明党の三浦信祐です。

我が国の成長戦略を結果に結び付け、更に加速をするためには、国内産業の強靱化、競争力の強化は待ったなしであります。今回、本法案において、成長戦略上欠かすことができない知財、標準化について位置付けの明確化が規定されていることは喜ばしく、これらを軸に今日は質問をさせていただき、また明確化を図っていきたいというふうに思います。

まず、齋藤大臣に質問いたします。

先般の水素社会推進法、CCS法の質疑において大臣と議論させていただきました標準化、規格化、これにつきまして、戦略性を持った推進、取組の方向性を共有いたしました。難しい挑戦だと率直にもおっしゃっていただきましたけれども、官民が力を合わせて能力を構築することが重要であります。

その上で、今回の産業競争力強化法の改正によって、標準化、標準化には産業標準化だったり国際標準化ということはあると思いますけれども、規格化、これが推進できるのでしょうか。より戦略的で具体化が図られるのか、伺います。

オープンクローズ戦略について

三浦信祐君
知的財産のオープン・クローズ戦略について、今御答弁もありましたけれども、質問させていただきます。

オープン・クローズ戦略、私もこれまで必要性について訴え、国会質疑でも対外的にもこの言葉を用いてまいりました。社会的にも概念は理解をされていると思います。

ところが、こういう質疑でありますので、改めてですが、明確な定義規定、これを見付けることが、整理ができていない状況でもありますので、改めての確認になるかもしれませんが、政府としてオープン・クローズ戦略をどのように定義付けているのでしょうか。また、本答弁を軸に、今後、定義として引用できるようにお答えをいただきたいというふうに思います。また、そのオープン・クローズ戦略の必要性をどう説明をしているのか、併せて御答弁いただきたいと思います。

政府参考人(田中哲也君)
お答え申し上げます。

いわゆるオープン・クローズ戦略につきましては、様々な捉え方がなされていると承知しておりますが、経済産業省としましては、昨年六月の日本産業標準調査会基本政策部会取りまとめにおいて、その定義につきましては、規制対応、標準化活動、知財管理、ノウハウ秘匿など様々な要素を組み合わせ、適切に使い分けることで市場を創出する戦略というふうにしているところでございます。

こうしたオープン・クローズ戦略は、市場獲得を最大化するに当たって、自社の製品、サービスに含まれる技術について協調領域と競争領域を見極めた上で、どのように公開、秘匿するかについて最適な対応を検討するものであるというふうに考えてございます。

三浦信祐君
定義を付けたという位置付けで、いわゆるということと、捉え方いっぱいあるというふうにいただきましたけれども、これってとても重要なことだと思うんですね。

去年整理ができているという位置付けだと思いますけど、そうしますと、これまで政府としてオープン・クローズ戦略の核となる知財、標準化の政策についてどのように取組をしてきたのかということを、これまず確認をしておきたいというふうに思います。

大臣の所見と現状認識、これについて伺いたいと思います。

国務大臣(齋藤健君)
知財戦略と標準化戦略の組合せがオープン・アンド・クローズ戦略の核だろうと認識をしておりまして、経済産業省としては、企業がこれらの戦略を事業に積極的に取り入れる、これを後押しをしているところです。

具体的には、知財戦略については、知財戦略を経営戦略と一体的に検討するための事業環境分析等を支援しています。加えて、そうした分析や知財戦略構築を支援する専門家の企業への派遣、これも実施をしています。

標準化戦略につきましては、グリーンイノベーション基金等の研究開発事業に参画する企業に対しまして、当該プロジェクトの標準化に向けた戦略の策定やその戦略を推進するための体制整備を個別に働きかけるなど、標準化戦略の活用を促進しています。その結果、グリーンイノベーション基金の参画企業全てに対して標準化戦略の策定を求めるとともに、各採択案件の中心的な企業など、経済産業省がヒアリング対象とした百五十四件中約半数が標準化戦略の策定に至ったところであります。

さらに、知財と標準化の一体的な活用に向けては、例えば弁理士のように技術や知財、標準の実務に通じた社外の人材を活用することも重要でありまして、今後、オープン・アンド・クローズ戦略の策定等の実務に詳しい弁理士をデータベース化するなど、そういったことにも取り組んでいきたいと考えています。

三浦信祐君
大変重要な御答弁をいただいたと思います。

この本当に現場をよく知っている方の総力を挙げてやっていくということがこれから大事ですので、これ実現をしっかり後押ししていきたいと思います。

今から五年前の二〇一九年、令和元年の五月の二十八日、当院厚生労働委員会にて、がんゲノム医療についての質問を行いました。

がんゲノム特許戦略、知財のオープン・クローズ戦略を明確化、確立が必要だと、単に調査研究するだけではなく、戦略的に国家として人材育成、知見蓄積、戦略的研究推進、保護に取り組むべき、国として不断の努力をとの質問をさせていただきました。

それに対して厚労省の方からは、がんゲノムの成果を着実に創薬等に結び付けるためには、研究段階から知財管理を行うための体制整備が非常に重要と、AMEDでは、知財ポリシーを策定し、各段階で知財管理をマネジメントし、活用する体制整備がある、関係省庁と連携するとの答弁があります。これ、五年前です。

これ以降、具体的な取組、そして、これまでの経過とともに得られている結果について伺いたいと思います。また、五年が経過し、課題も明確になっていると思いますが、本法案のこの基盤的な位置付けとしての具体例でもありますので、是非この点についても御答弁いただきたいと思います。

政府参考人(内山博之君)
お答えいたします。

我が国で開発した技術が実用化につながるためには知的財産の取得は重要であるというふうに考えてございまして、知的財産を活用するための体制について整備をしてきたところでございます。

具体的には、AMEDにおいて、アカデミアが行う臨床研究等の研究につきまして、AMED知的財産ポリシーにのっとり、知的財産に関する相談支援などを行っているところでございます。

令和五年度の具体的な実績といたしましては、相談支援については百七十件の実績があるというふうに承知をしておりまして、御指摘のありました今後の課題としましては、研究シーズの段階から、出口である医薬品開発までを見据えた知的財産の確保が重要であるというふうに認識をしてございます。

このため、大学に対して、研究の初期段階から現場に直接訪問して特許戦略の相談を行うなどのきめ細かい支援の実施を通じて、引き続き、より多くの研究シーズについて、医薬品開発を見据えた知的財産の支援につながるように努めてまいりたいというふうに考えてございます。

三浦信祐君
いや、まさに大事な御答弁、これだと思います。最初から入れておいた方がいいということと、出口を見据えてとなったときにどこが狙い目かというところに、最初にその知財人材が入っているということが我が国成長戦略の核になると思います。

是非これも、より伸ばしていただきたいと思いますし、そういう中からベンチャー企業も新しく挑戦する機会が生まれると思いますので、しっかりと頑張っていただきたいというふうに思います。

実は、同じ質問の中で、特許庁は産官学連携を更に強化して国益の視点から方向性を見出すべき、今後のゲノム医療知財戦略の取組はどうするのか、受け身で特許が出てくるのを審査するのではなく、特許を取りに行く又は保護していくことに取り組んでいただきたい、明言をと質問もさせていただきました。

これに対し、研究機関や大学は、研究成果について何を公開して何を秘匿しておくのか、特許をどのように取るか、戦略を持った研究開発を進めることが必要と、特に注意すべき分野だと、企業の知的財産や共同研究契約に関する知識を有する専門家を派遣し、知財戦略構築支援をしていると、特許庁職員を大学等に派遣して助言もしていると、日本の最先端の分野の知的財産戦略構築支援をしてまいりたいと、こういう具体的な取組についての御答弁をいただきました。

これ以降、具体的な結果がどうなっているのか、また、取組についてどのように進展して、現状はどのようになっているか伺いたいと思いますし、一番知財のそばにいる特許庁から見たときの課題も併せて伺いたいというふうに思います。

政府参考人(滝澤豪君)
お答え申し上げます。

委員御指摘のとおり、研究成果の社会実装を進めていくためには、研究開発の初期段階から知財戦略を意識することが必要と認識をしております。しかしながら、大学や研究機関の現場では、研究成果の事業化を見据えた知財戦略の立案を行う専門人材を十分に確保できていない場合もあり、体制の強化が課題となっております。

このため、特許庁は、INPITとともに、革新的な研究開発成果が期待される研究開発プロジェクトの社会実装を後押しするため、研究機関等に対して知財の専門人材を派遣し、知財戦略の策定を支援しております。昨年度におきましても、がんゲノム医療分野を含め、約五十件の研究開発プロジェクトを支援したところでございます。

加えまして、特許庁から大学への職員派遣につきましては、前回御質問いただいた令和元年よりも拡充をしておりまして、令和六年四月現在で十八大学、二十五名を派遣をしております。

本法案におきましても、オープン・クローズ戦略の策定及びその活用による市場獲得に向けまして、INPITの助言事業を規定をさせていただいたところでございます。

こうした取組を通じまして、研究機関や大学等における適切な知財戦略の立案を支援し、研究成果の社会実装につなげていきたいと考えております。

知財の活用について

三浦信祐君
是非これを加速していただきたいと思います。

INPITがなぜこれまで知見があるのにアドバイス機能を持たせてなかったのかという疑問は、これからまた議論をさせていただきたいというふうに思います。

知的財産の活用と本法案との関係について質問いたします。

本法案において、政府が標準化の動向や知的財産の活用状況を調査する規定を整備する、これが位置付けられています。ようやくここまで来たかなという思いもあります。

今回、標準化の動向、知的財産の活用状況を規定したこと、その背景、取組について大臣に伺います。

国務大臣(齋藤健君)
グローバル市場におきまして新たな需要を創造していくためには、標準化や知的財産の活用といったオープン・アンド・クローズ戦略を推進することが必要不可欠であります。にもかかわらず、我が国企業や大学等におきましては、オープン・アンド・クローズ戦略に関する取組が十分に活用されておりません。

こうした問題意識の下、あえて本調査規定を設けまして、オープン・アンド・クローズ戦略に係る動向や、それらが効果的に活用されている事例など、最新の状況を幅広く情報収集することとしています。

さらに、その調査結果につきましては公表することとしておりまして、それにより、オープン・アンド・クローズ戦略の検討に向けた意識を、業種や企業規模を問わず幅広く喚起し自発的な取組を促していくこと、これを大いにやっていきたいと思っています。

また、今回新たに設けるオープン・アンド・クローズ戦略に係る認定制度を運用する上で必要となる情報や知見を蓄積していくためにも意義があるんだろうと考えています。INPITやNEDOにおいても、そうした蓄積を助言に活用することもできるんだろうと思います。

さらに、この調査によりまして、ライセンス取引等で一定の知的財産権を用いていることを確認できた場合には、イノベーション拠点税制を措置することもできるということだと思います。

経済産業省としては、標準化戦略や知的財産戦略はあらゆる業種で活用されるべきものであるとの認識の下に、オープン・アンド・クローズ戦略の更なる活用に向けて取り組んでまいりたいと考えています。

三浦信祐君
是非、このあらゆる分野というところがとても大事ですので、それをリードしていただきたいというふうに思います。

標準化については、一般にデジュールスタンダードとデファクトスタンダードがあります。今回の法律ではどちらを目指す方向でしょうか。デファクトスタンダード、すなわち、市場における実質的な業界標準を構築する取組がこれから日本にとってはより必要になると思います。この挑戦こそが人材育成そのものになります。本法案がデファクトスタンダード化にどう貢献できると考えるか、経産省に伺います。

政府参考人(田中哲也君)
お答え申し上げます。

本制度で支援するオープン・アンド・クローズ戦略の本質は、標準化や知的財産の一体的な活用によりましていかに市場を獲得するかといった点にあると考えております。

したがいまして、例えば、必ずISOやIECといった国際デジュール標準を獲得すべきであるといったような、手段を限定する、手段の限定は考えておりません。このため、標準化の活用についても、公的な規格であるデジュール標準を目指すこともありますが、特定企業・団体の合意によるフォーラム標準を活用するとか、あるいはその他の手法によって結果的に市場の支配を狙うなどの手法について、個別の案件により最も適したものを選択し、展開することを目指すものでございます。

本制度の活用によって、研究開発の早期段階で市場を意識した最適な標準化に関する手法を検討する取組が増加することによって、国際的な市場競争が激しくなる中であっても、我が国の研究開発成果を市場につなげる確度を高めることに貢献できるものというふうに考えております。

三浦信祐君
一つ飛ばさせていただきます。

我が国は、標準化を図れる人材、その経験がある人材など、人的リソースが不足をしております。これは、民間も公務員も同じだと思います。また、オープン・クローズを提案、判断されたことを受け止めて、決断する体制や構造が途上にあるとも考えます。

まず、人材を育てる、経験を増やす、同時に、経営者にもオープン・クローズ戦略の理解醸成を図って経営判断に活用されることになっていく、これらを両立して推進することが欠かすことはできません。経済安全保障の実効性にも直結すると考えます。是非これらを推進していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

政府参考人(田中哲也君)
お答え申し上げます。

我が国の標準化人材につきましては、国際標準化機関に人材を供給し続けるなど、高いプレゼンスや知見、ノウハウを蓄積してきたというふうに認識しております。

一方で、我が国の標準化人材は高齢化傾向にございまして、次の世代の人材を確保する課題があるというふうに考えております。また、我が国の標準化活動のリーダーシップの一翼を担ってきたアカデミアにおきましても、持続的な標準化人材の確保が課題となっております。同時に、我が国の多くの企業におきまして、標準化戦略を検討する検討体制や経営層への理解醸成は十分ではないというふうに考えております。このため、市場創出に向けて企業経営における標準化活動の位置付けを高めていく必要があるというふうに考えています。

このため、具体的に、まず標準化人材の育成に向けましては、日本の標準化人材を集約したデータベースの構築、あるいはISOやIEC等の国際標準化交渉の場で活躍できる人材や、あるいは標準化を含めたルール形成を経営戦略に組み込むことのできる人材を育成するための研修の実施、さらには、アカデミアにおいて標準化活動に従事する人材育成に向けて、学会等による標準化活動を推進する等の施策を展開しているところであります。

さらに、経営層への理解醸成に向けましては、企業における標準化戦略担当役員、いわゆるCSOの設置であるとか、統合報告書における標準化戦略の発信などの企業への促進、さらには、グリーンイノベーション基金等、国の研究開発事業における標準化戦略策定のフォローアップを実施することにより、採択企業における標準化体制の構築や標準化戦略の立案の促進等の政策を講じているところであります。

引き続き、標準化人材の育成と経営層への理解醸成を両立した取組を進めることで、我が国企業の市場化創出に向けた戦略的な標準化活動を支援していきたいというふうに考えております。

三浦信祐君
まさに人材を育てるということが大事で、この後の質問は、まさに文科省の方での教育機関におけるこの知財利活用と人材育成の在り方について質問したかったんですが、次回に機会をいただければ、譲らせていただきたいと思います。

ありがとうございました。