経済産業委員会(2022年3月16日)

中小企業支援対策について

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
 中小企業支援対策について伺います。コロナの影響が二年を超えて、さらにはロシアによるウクライナ侵略に伴う原材料価格の高騰、部品調達の困難性、取引状況激変を踏まえて、中小企業生産性革命推進事業のうち、ものづくり補助金について質問させていただきます。
 ものづくり補助金採択時に課せられている、例えば事業場内最低賃金の増加目標達成について、現下の経済状況、今後の影響を見据えて、柔軟性ある対応をすべきだと私は考えます。
 また、付加価値額増加率が年平均一・五%に達しない場合や天災など事業者の責めに負わない理由がある場合、補助金の一部返還を求めないとの規定について、ウクライナ事案はどう解釈されるのでしょうか。付加価値額増加も、現下の状況から今後困難を来す場合も想定されます。天災などにも位置付ける必要性も想定すべきで、事業者に寄り添って対応をお願いしたいと思いますが、萩生田大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(萩生田光一君) ものづくり補助金は、補助事業の開始後最大五年間、付加価値額を増やすことや賃金を上げることを補助事業の要件として求めてまいりました。
 他方、新型コロナ拡大の影響を踏まえ、令和二年から、原則として、補助事業を実施している間の賃上げを求めず、また目標値の達成年限を一年猶予することですとか、設備の納期遅延など事業者の責めに負わない理由によって所定の期限までに補助事業を完了することができない、困難な場合には期限延長を認めることなど、柔軟な対応を行ってきております。
 また、賃上げの目標を達成できなかった事業者に対して補助金額の一部返還を求めることとしておりますが、事業者の責めに負わない理由がある場合には返還を求めないなど、柔軟な制度設計としています。
 今後も、新型コロナのみならずウクライナ情勢による事業環境の変化も踏まえ、含め、個別具体的な状況に応じて、できる限り柔軟かつ丁寧に事業者に寄り添った対応を行ってまいりたいと思います。

三浦信祐君 大臣からおっしゃっていただいたので、現場は非常に助かると思いますので、相談もよくやっていただきたいと思います。
 今般の世界情勢、社会状況の変化を踏まえ、業種を問わず中小・小規模事業者の事業継続、持続可能な経営を支えていく必要があります。現下の経済状況だからこそ価格転嫁について厳しく見ていくべきだと思います。予見可能性が困難であることも想定して、スピード感を持った対応が必要だと私は考えます。
 下請Gメンの体制強化と具体的な取組について伺います。

政府参考人(飯田健太君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘ありましたように、コストの様々な上昇分を適切に価格転嫁をすることができる環境を整備することが重要だと考えております。
 今委員御指摘ありましたように、全国百二十名の下請Gメン倍増するということをやりたいと思っています。それから、昨年十二月の末に政府全体として転嫁円滑化施策パッケージつくりました。これに基づく対応もしてまいります。それから、大企業との共存共栄ということで、パートナーシップ構築宣言の推進、こういったことも図ってまいりたいと思っております。
 特に、下請Gメンの倍増でございますけれども、現在年間で約四千件、中小企業からヒアリングを行っておりますが、これを約一万件と倍以上に増加させていきたいと考えております。ガイドラインあるいは自主行動計画の改定につなげてまいりたいと思っております。
 それから、直近ということでございまして、この三月、原油高の影響もございますため、中小企業の価格転嫁に向けてしっかり取り組んでいただくという観点から、昨年九月、第一回だったんですが、第二回ということで、今月、三月も価格交渉促進月間と位置付けて、価格交渉の浸透と定着を図ると。その上で、前回四万社行ったアンケートを今回十五万社に拡大いたしまして、業種別にランキングとか付けるわけですが、こういったことを発表していく。その価格交渉の状況が良くない個別企業に対しては、下請中小企業振興法に基づく指導、助言も実施していくと。
 こういった取組を通じまして、適切な利益が下請企業に残るよう全力で取り組んでまいりたいと思います。

三浦信祐君 これは実効性が大事だと思いますので、これからもしっかりと議論をしていきたいというふうに思います。
 ロシアによるウクライナ侵略に伴う資金繰り等の相談支援体制、また窓口について、どこでどのような取組を実施するのか、そして事業者の皆さんが相談をしやすいように情報提供を始め環境を整えること、加えて、具体的に相談内容のQアンドAなども分かりやすく提示する方策を、今不安に思われている方がたくさんおられますので、是非御検討いただきたいと思います。
 その上で、中小・小規模事業者の資金繰り支援、重ねてではありますけれどもお願いをしたいと思います。リスケあるいは返済猶予の更なる柔軟性、これは日本公庫はもとより民間事業者にも求めていただきたいと思いますが、具体的にどのように取り組んでいただけるか、伺いたいと思います。

政府参考人(飯田健太君) お答え申し上げます。
 ウクライナ情勢緊迫する中で原油価格が依然として高い状態にあります。日本企業への影響、懸念されるところでございます。
 まず、喫緊の対策といたしまして、経済制裁あるいは原油価格高騰の影響を受ける日本企業をしっかりと支えていくという観点から、三月四日に原油価格高騰などに関する関係閣僚会合におきまして緊急対策を取りまとめたところでございます。その中では、中小企業への対策といたしまして、政府系の金融機関、中小企業団体などにウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口、これを設けて、全国約一千か所設けてございます。相談窓口には今も様々なお声が、御相談が寄せられておりますけれども、経営環境の悪化でございますとか、あるいは輸出入への影響といったような御心配も寄せられております。
 こうした状況を背景にいたしまして、特に中小・小規模事業者への資金繰り支援でございますけれども、ウクライナ情勢で影響を受ける事業者が利用しやすくなるよう、日本公庫によるセーフティーネット貸付けの要件を緩和いたしました。加えて、ウクライナ情勢などの影響によって利益率が一定程度悪化した事業者の方々には金利を〇・二%引き下げると、こういった措置も実施しているところでございます。
 要請という点につきましては、二月二十五日及び三月八日に官民金融機関に対しまして、ウクライナ情勢、原油価格上昇等により事業者の資金繰りに支障が生じないよう、事業者から債務の条件変更の申出があった場合には据置期間の長期の延長等を積極的に提案するなど、既存債務の条件変更などについて、事業者の実情に応じた柔軟な対応を行うよう、大臣のお名前で要請をさせていただいたところでございます。
 引き続き、今後の事態の推移を見極めながら、事業者の皆様にしっかりと寄り添う形で適切に対応してまいりたいと思っております。

ヘリウムガス確保の取り組みについて

三浦信祐君 是非QアンドAとか、現場の皆さん大変忙しくて、不安と忙しさ、年度末でもあるということもあって情報を仕入れるということがなかなか難しいというのがあるので、是非こういう問合せに対してはこういう回答をしたというのも整理して、いろんな情報アクセシビリティーを確保していただくということにも取り組んでいただきたいと思います。
 次に、ヘリウムガス確保について質問させていただきます。
 電子部品やMRI等に必須のヘリウムガス不足が顕在化をしております。科学技術を推進していくに当たっては必要な物質であります。長年課題となっておりますが、可及的速やかな対策が必須の状況であります。現場は結構不安が募っている状況です。
 ガスの収集とリサイクル化、そして国内確保を急ぐべきだと思います。どう取り組んでいただけますでしょうか。

政府参考人(福永哲郎君) 御指摘のとおり、ヘリウムは、MRI、光ファイバー、低温工学など幅広い分野で用いられている非常に重要な物質でございます。しかし、油田等に極少量含まれているという希少なガスでございまして、世界的に産出国は限定されております。その結果、委員御心配のとおり、国際価格も大変上昇傾向にあるというところで、御指摘の回収、再利用や供給を強化していくことが重要と認識しております。
 そこで、経済産業省では、例えば、令和二年度補正予算等で措置したサプライチェーン補助金を活用して、需給両面からの対策を進めていこうということでやってきておりまして、具体的には、需要面からのアプローチとして、約七割の使用量削減につながるヘリウムの回収ができる装置、国内生産ということを支援しておりまして、さらに、供給面では、輸送、精製時に蒸発するヘリウムを回収、再液化すると、先生がおっしゃられたリサイクルに近い世界ですが、ということで、同じ調達量でも日本での供給量を五〇%向上させる装置というのの製造も支援しております。
 こうした成果を広げていきながら、一方で世界の需給動向を注視しながら、関係事業者と連携しつつ国内の安定供給に努めていく必要があると強く認識しております。

ロボット政策の加速について

三浦信祐君 これ非常に大事で、研究者の皆さんが現場で装置を維持していくに当たって、商社に問い合わせると意外とないという回答があると。なので、是非、よくモニターしていただいて、横の供給を、何といいましょうかね、連携していただければ手に入るケースもあるということと同時に、MRIなくして診療現場、これ大変困りますので、ここは単に支援するだけじゃなくて、確保ということにしっかりと乗り出していただく、技術支援もしっかりやっていただきたいと思いますので、重ねてお願いさせていただきたいと思います。
 ロボット政策について伺います。
 先日の大臣所信、質疑の際に、大臣から日本の誇る技術であると、エースだ、メード・イン・ジャパンが必要だと力強い御答弁があったロボットであります。ところが、大臣所信にはロボットの単語が入っていない、これもう正直残念でありました。
 二〇一九年の五月、ロボットによる社会変革推進会議が創設をされまして、同七月には計画が策定をされております。これを機に、未来ロボティクスエンジニア育成協議会や、これはCHERSIといいますけれども、技術研究組合産業用ロボット次世代基礎技術研究機構、ROBOCIPが誕生しました。ロボット研究開発、人材育成の効率性、生産性向上に資する取組でありまして、特に研究開発を連携して進めるプラットフォーム化というのは、他産業にも波及できる内容であり、大変すばらしいことだと私は思っております。
 ロボットによる社会変革推進計画の進展と今後について、より強力に推進すべきだと私は考えております。これロボット、きちっと世界の中での位置付けが確立をしていくということは、日本の価値を高めることにも直結すると思います。
 萩生田大臣がロボットを決して大事にしていないとは、理解をしておりますけれども、改めてですが、ロボット政策推進の決意を伺いたいと思います。

国務大臣(萩生田光一君) あらゆる産業においてデジタル化による人手不足の解消と生産性の向上は喫緊の課題であるとともに、コロナ禍により非接触化のニーズも急速に高まりつつあり、こうした課題解決にはロボット政策の推進が不可欠だと思っております。
 こうした観点を踏まえ、経産省では、ロボットによる社会変革推進計画を掲げた導入、普及を加速するエコシステムの構築、人材育成、研究開発、そしてオープンイノベーションの四つの方向性に基づき、政策の具体化を進めております。
 例えば、ロボットの低価格での普及に必要なロボットフレンドリーな環境の構築に向けて、清掃ロボットが異なる製造メーカーのエレベーターでも円滑に乗り降りできるように通信規格の統一など実施しております。加えて、将来の多様で高度なニーズに対応するための研究開発、高等専門学校やシステムインテグレーターを対象にした人材育成などの取組を強力に推し進めているところでございます。
 現在、こうした取組の成果として、例えば二〇二五年の大阪・関西万博会場内でのロボットの活用も具体的に検討しております。万博のテーマである未来社会を世界中の皆さんにしっかりとお見せし、ひいてはロボットの広範な社会実装をいち早く実現できるように、引き続き産学官が一体となって取り組んでまいりたいと思います。
 先生御指摘の所信にロボットのワードがなかったということなんですけれども、AI、量子と並んでロボットはもうこれからの大事なテーマでございまして、言わずもがなしっかりやっていくということを申し上げたいと思います。

三浦信祐君 ありがとうございます。言わずもがなというところで、もうこれはど真ん中にあるということを確認をさせていただきました。
 今大臣からも御答弁を言っていただきましたけれども、これまで、経産省のロボット政策室の皆様と議論を重ねて、中小企業へのロボット導入支援とともに、ロボットフレンドリー化の政策を一貫して推進をしてまいりました。
 まず、現状の進捗について伺いたいと思います。その上で、ロボットフレンドリー化は、従前のロボットが社会に合わせる一方通行型から、ロボットに規格を合わせて、形状、通信、配置、画像等を合わせていく革新的取組でありまして、世界をリードできる研究であります。これらの結果を、まあ結果ほかいろいろなことが情報として集まりますけれども、これらをデータベース化して、デファクトスタンダードを図るべく推進をしていただきたいと思います。今後の展望について伺います。

政府参考人(福永哲郎君) いつも御指導いただきありがとうございます。
 ロボットフレンドリーな環境の構築に向けてはユーザーニーズの適切な把握と反映が最重要と、こういう考え方に基づきまして、経済産業省においては、ロボット導入による自動化、省人化、非接触と、先ほど委員から挙げていただきましたニーズが特に大きい四分野、施設管理、小売、食品、物流倉庫といったところにおいてユーザー産業も巻き込んだ取組を進めているところでございます。官民連携でやっております。
 具体的な取組事例として、先ほど委員の御指摘に絡んでは、施設管理の分野で、二〇二一年にロボットがエレベーターと通信連携するための業界横断の統一規格を策定して公表しております。今後は、ロボットとセキュリティーゲートの方との通信連携に向けて取り組んでいくことを進めてまいりたいと思います。
 また、小売の分野では、ロボットが決済、在庫管理、陳列を行うための研究開発を実施しておりまして、今後は、先ほどデータベースという話がございましたが、ロボットが様々な商品を認識し、最適な動作を選択するのに必要な商品画像のデータベースを構築していくといった取組も進めたいと思っております。
 まさにこうした取組の成果を活用して、二〇二五年の大阪・関西万博の会場内で実際にロボットフレンドリーな環境を構築すると、そして人と協働するロボットを導入、展示することを検討しております。
 引き続き、ユーザー企業を含めた関係者と緊密に連携してしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

三浦信祐君 これ、人手不足の業種であったところに導入ができるようになれば、むしろ人件費の部分でしっかりと給料を上げていくという効率も、効率化が図られると同時に、その受益があるということなので、投資しやすい社会をつくるためにはやっぱりデファクトスタンダード、これつくれるように是非支援をしていただきたいと思います。
 ロボット活用に必須なシステムインテグレーター、人材確保と育成が欠かせません。その一助として、高等専門学校や工業高校で行われている実習支援が効果を発揮しております。
 一方で、これらの支援は民間事業者による人的、資金的援助、すなわちボランティアで成り立っております。国家としてのプロジェクトであり、業界に頼るだけではなくて人的、財政的支援を検討していただきたいと思います。
 その上で、可視化が必要なシステムインテグレーターのスキル標準化を図っていただきたいと思います。世界の規格を取りにいくべく環境整備をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

政府参考人(福永哲郎君) まさに先生がおっしゃった方向性をちょっと実現するべく、システムインテグレーターの人材に求められるスキル標準につきまして、経済産業省では、二〇一七年からロボットメーカー等と連携して、それを取りまとめて公表、それで、その効果的な取得に資するテキストの作成や普及を進めてきたところでございます。
 具体的な成果として、一昨年、昨年とですね、一昨年、二〇二〇年に設立された、まさに先ほどCHERSIございましたが、未来ロボティクスエンジニア育成協議会と連携しながら、システムインテグレーターの人材の育成に向けて、スキル標準に基づいてカリキュラム等を作成した形で東京高専とか北九州高専の高等専門学校等の教員や生徒に対する講義等を実施、支援してまいりました。
 今後、この実施事例をほかの教育機関、まさに御指摘いただいた高等専門学校に加え工業高校とかの展開に取り組んでいくこととしております。
 海外標準、あっ、海外展開でデファクトということでございますが、このスキル標準の海外展開については、まさにそういったものを使っていくロボット、国内ロボットメーカーの更なる海外事業拡大の動向ですとか、システムインテグレーターがまさに海外に進出しようとしていますので、そうした動向を見据えながら、まさにそれと合わせてしっかり検討してまいりたいと思います。
 ありがとうございます。

医工連携について

三浦信祐君 是非取り組んでいただきたいと思いますし、しっかりバックアップをしていきたいと思います。
 がん対策に資する医工連携について伺います。
 日本では、二人に一人ががんに罹患し、三人に一人ががんで亡くなるという厳しい現実があります。早期発見こそが死亡率を減少させ、生存率を向上することに直結すると私は考えております。そのためには、医学と工学との連携で技術を向上させ、簡易、簡便、迅速で高精度ながん検診が不可欠だと思います。がん検診率向上にもつながってまいります。
 そのような中で、血液を活用したがん対策に資するリキッドバイオプシーの技術推進の状況と社会実装を標榜した今後の展望について伺いたいと思います。

政府参考人(田中一成君) お答え申し上げます。
 リキッドバイオプシー、先生御指摘の、これは血液などの体液に含まれているがん細胞などを使ってがんを早期に発見する技術でございます。これは、針などを使って患者のがん組織を採取する従来の手法と異なりまして、検査を受ける人の痛み、心理的負担、これが小さいために政府としても推進しているところでございます。
 経済産業省におきましても、平成二十六年度から、がん細胞から分泌されるマイクロRNAと呼ばれる物質、これを使ってがんを特定するための診断技術の開発を支援してきました。本事業では、患者の血液からがんの有無を判定するための測定指標の特定や、測定装置の開発に必要な基盤技術の確立といった成果を上げてきております。
 一方、実用化に向けましては、更に多数のがん患者と健常者を対象とする臨床研究、これを通じてデータを蓄積し、検査の精度を向上させるとともに、診断手段として妥当なものであることを確認していく必要があります。
 現在、民間企業などにおいて実用化に必要なデータ、この蓄積等の取組が進められておりますけれども、経済産業としましても、厚生労働省と連携しながら必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

三浦信祐君 これ大変重要なことですので、今、今度はお医者さんが本当に使っていただけるようになるということの後に、今度は機器ができ上がっていますので、それを社会に、そして世界に打っていくというところまでしっかりと見据えて今後支援をしていただきたいと思います。
 がん対策推進基本計画に、支える基盤整備の項目で、取り組むべき施策として、バイオマーカーの開発に向けた取組をより一層推進する、国は、革新的な診断法や治療法を創出するために、リキッドバイオプシー等を用いた低侵襲性診断技術や早期診断技術開発云々と記述をされております。
 基本計画の実現へ研究技術開発支援とスピードアップを図っていただきたいと思います。具体的にどう取り組んでいくのか、そして今後どうするのかということを経産省、厚労省に伺いたいと思います。

政府参考人(田中一成君) 御指摘のとおり、平成三十年三月に閣議決定されました第三期がん対策推進基本計画では、バイオマーカー、すなわち、血液などに含まれるたんぱく質などの生体内の物質で、病気の変化や治療に対する反応に相関し指標となるもの、このバイオマーカーの開発に向けた取組をより一層推進することとされております。
 経済産業省としましても、令和元年度から、先ほどのリキッドバイオプシーの技術も活用しながら、がんの有無の判別に加えて、患者の体質に応じてどの抗がん剤が効果を発揮するか、こういったのを判別するためのバイオマーカーを探索する基盤技術の開発に対して支援を開始しております。
 引き続き、がんの早期発見や患者の個人の体質に応じた治療の実現に向けて、厚生労働省とも連携しつつ、経済産業省としても必要な対応をしてまいりたいと考えております。

政府参考人(宮崎敦文君) お答え申し上げます。
 今経済産業省からも御説明ありましたように、この委員御指摘のリキッドバイオプシーあるいはバイオマーカー等の新たな技術につきましては、身体への負担が少ない検査手法ということで、がんの早期発見への活用などが非常に強く期待されているところでございまして、委員御紹介ございましたように、がん対策推進基本計画に基づきまして、早期の実用化に向けた研究を関係省庁とも連携しながら進めているところでございます。
 足下では、厚生労働省の研究事業として、例えば複数のがんを早期に発見できる血中マイクロRNAのがん検診への活用の検討を行っているほか、従来の検査法では判定できなかった早期の大腸がんの検出が期待される血清ペプチドを用いた診断法の開発などに取り組んでいるところでございまして、これらの中では、経産省におきまして研究を行ってきた成果に基づいて引き続き研究を行っているものも含まれているところでございます。
 引き続き、関係省庁とも連携をいたしまして、がん研究の推進に努めてまいりたいと考えております。

がん対策に資するRI国産化への取り組みについて

三浦信祐君 これ、出口までよく一貫性を持ってして取り組んでいただくことが大事ですので、更にここは連携を取っていただきたいと思いますので、強くお願いをさせていただきたいと思います。
 がん対策に活用できるラジオアイソトープの国産化について質問させていただきます。
 ラジオアイソトープの国産化については、内閣府原子力委員会専門部会で議論が進んでおります。産業と医療の融合を図ることが今後の医療用ラジオアイソトープの製造に欠かすことはできません。昨年の五月の決算委員会、先般の予算委員会の質疑も踏まえつつ、経済産業省としても積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 当時、文科大臣としても歴史的な答弁をしていただきました萩生田大臣に伺いたいと思います。

国務大臣(萩生田光一君) 先進的ながん治療薬となる医療用のRIの大量生産に向けて、高速実験炉「常陽」の活用は非常に有効です。高速中性子の照射能力を持つこの施設を稼働させれば、当時お答えしたかもしれませんが、アクチニウム225の製造、活用が可能になるということで、これ先生おっしゃったように、がんの治療に極めて有効な材料となります。こうした認識の下、これまでも文科省を中心に補正予算の措置など運転再開に向けて取り組んできたところです。
 また、経産省としても、放射性廃棄物の減容化、有害度の低減、資源の有効利用の観点から、「常陽」の再稼働を含めた核燃料サイクルの推進に取り組んでいくこととしております。
 まさに産業と医療の融合という観点からも、関係省庁が連携して「常陽」を様々な形で利活用していくことは極めて重要でありまして、今後とも、内閣府や文部科学省とも協力しながら十分に活用してまいりたいと思っております。

三浦信祐君 ありがとうございます。
 高速実験炉「常陽」で、アルファ核種の医療用RI製造には原料確保が欠かせません。確実に行っていただきたいと思います。国内調達にも全力を挙げるべきだと思います。
 原料を重要物資と位置付けるべく、サプライチェーンの強靱化へ、今後審議される経済安全保障推進法においても明確化をしていただきたいと思います。是非取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

政府参考人(三貝哲君) お答え申し上げます。
 まず、医療用のラジオアイソトープでございますが、先進的ながん治療、それから診断薬となる医療用放射性同位体であり、製造するための原料の安定供給確保が重要であるということは認識をしております。
 その上で、今御指摘になりました今国会に提出した経済安全保障推進法でございますが、こちらにおきましては、平素からサプライチェーンの強靱化を図ることを通じて、当該特定重要物資の安定供給確保を図る枠組みを設けることといたしております。
 具体的にどのような物資を特定重要物資に指定し安定供給確保を図るかにつきましては、現時点で予断を持って言及することはできませんが、今後、関係省庁ともよく連携しながら検討してまいる所存でございます。
 以上でございます。

三浦信祐君 是非、重要なことはいろんなところの連携の中で明確になっていきますので、この案件もしっかりと取り組んでいきたいと思いますし、これからまた訴求をしていきたいというふうに思います。
 世界がしのぎを削るアルファ線治療、アクチニウム225、先ほど大臣からもおっしゃっていただきました。この研究、利活用のみならず、トリウムの活用も今後のがん治療研究、実用化に求められております。これからラジオアイソトープを用いたがん治療研究で競争激化が予測をされておりまして、現実的にそれが加速をしている状況です。
 今後、実用化に当たりまして、法律の整理、特に重なる法律や解釈がなされていなかった状況等を解消するために、横断的整理を実施すべきであります。特に原子力基本法、RI法、炉規法との取り合いについて検討を是非お願いしたいと思います。内閣府原子力委員会の専門部会がアクションプランを作成した後、具体的に横串を刺して検討すべき現実的な課題でありまして、担当大臣の下に司令塔機能等体制を整える体制整備を行って、一貫性を持って進めていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

政府参考人(覺道崇文君) お答えを申し上げます。
 欧米におきましてトリウムを用いた放射性医薬品の開発が行われており、我が国におきましても導入が期待されている状況につきましては、内閣府としても認識をしてございます。
 トリウムにつきましては、原子力基本法において核燃料物質及び核原料物質と定義されておりますが、放射性医薬品として使用されるトリウムの量は非常に少ないものと想定をされておりまして、原子炉等規制法に基づく使用許可や届出は不要となってございます。このため、トリウムを用いた医薬品の製造や使用のための構造設備基準、運搬に係る基準、使用に係る基準等が定められていないといった課題が原子力委員会の専門部会でも指摘をされているところでございます。
 この問題につきまして、当該専門部会で取りまとめに向けて検討を進めておりますアクションプランの中に適切に位置付けるとともに、原子炉等規制法やRI法を所管する原子力規制庁と連携をいたしまして、継続的に検討を進めてまいりたいと考えております。また、実用化を見据えて、医療法や薬機法を所管する厚生労働省との間でも連携して、継続的に検討を進めてまいりたいと考えてございます。

三浦信祐君 これ、非常に大事な御答弁いただきました。アクションプランの中でしっかりと明記をしていただいて、その後の出口まで御答弁いただきましたので、しっかりとこれ進めていただきたいと思います。
 がん検査に活用するモリブデン99、テクネシウム99は全量海外輸入であります。モリブデン、テクネシウムの消費は、アメリカが四五%、日本が一五%、全製造量の六〇%を占めております。
 しかし、サプライチェーンは海外が軸で構成をされておりまして、供給途絶のリスクが常にあり、現にロシアによる飛行制限によってそれが影響を及ぼしており、半減期を踏まえて輸送困難事例が生じて、薬品製造に影響が出ております。
 そこで、国産化が欠かせません。まさに、これこそが経済安全保障だと思います。モリブデン、テクネシウムの製造にJRR3が使えて、「常陽」の運転再開で活用可能性が十分にあります。年間七十人に一人が核医学検査に用いている物質であります。体制を整えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

政府参考人(堀内義規君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、核医学診断に欠かせないテクネチウム99メタステーブルは、原料のモリブデン99を含めて、海外からの輸入に頼っております。国産化に向けた取組は経済安全保障上の観点からも重要というふうに考えております。
 このため、文部科学省におきましては、原子力機構の保有する試験研究炉JRR3を活用しまして、海外で行われているウラン235の核分裂を用いる方法ではなくて、天然に存在しますモリブデン98に中性子線を照射することによりモリブデン99を製造する手法の実用化に必要な実証データを得るような研究を進めてございます。
 また、高速実験炉「常陽」につきましては、新たな規制基準に適合するため、現在、安全審査を行っているところでございます。
 文科省としましては、これらの研究用原子炉の活用に係る研究の更なる推進に向けた予算の確保に努めるとともに、安全審査への適切な対応を前提として、「常陽」の早期の運転再開ができるよう原子力機構をしっかりと指導してまいりたいと考えております。

三浦信祐君 時間が参りましたので、大臣、最後、質問ではなくて要望にさせていただきたいと思いますけれども、こういう廃炉も含めて、原子力人材というのは今後絶対重要でありますし、まさにラジオアイソトープを海外に輸出をすることによって国富の流入、多くの世界の人を助けることにも直結します。是非、いろいろな、革新炉の研究も含めて、きちっと経済産業省で、大臣の下で人材育成図っていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。