第213回国会 参議院 経済産業委員会 第7号 令和6年5月7日
三浦信祐君
公明党の三浦信祐でございます。
三人の参考人の皆様には、大変重要な、また貴重な機会を頂戴したことに心から感謝申し上げたいと思います。
いかにこの脱炭素化、水素利用、利活用、これをチャンスにつなげるかという視点で、その際の課題克服についての知見を是非教えていただきたいという思いで質問させていただきたいと思います。
まず、竹内参考人と中澤参考人に伺います。
今回の法案において、国、事業者の責務に加えて、第五条において地方公共団体の責務が規定をされております。
日本全国で低炭素水素社会構築に当たっては、地方公共団体との情報共有であったり、また政策共有並びに遂行というのは欠かすことができないというふうに私は思っております。そうなると、具体的には、住宅インフラとしてのEV車の導入であったり、それに関わる充電器の施設、また公共移動手段、そして公共施設のエネルギーや水素供給ステーションの整備などが想定をされるんではないかというふうに思います。
一方で、今いろんな課題がありますけれども、その中でも地方公共団体の財政体力と人材の違い、これが政策遂行においての大きなギャップを生じさせることも懸念されるべきことであるかなと。そうなりますと、本法案の規定というのはとても重要であり、記載されている内容、実行すべき項目に対応できるということが重要であると思いますけれども、この具体性を考えるならば、地方自治体が果たすべき役割、これは本当に整理をしていかなきゃいけないというふうに思います。
その際の財政的な支援、技術的な支援の在り方について、御見解を伺いたいと思います。
委員長(森本真治君)
では、まず竹内参考人からお願いしていいですか。
参考人(竹内純子君)
御質問いただきまして、ありがとうございました。
まさにこれ、社会の構造の転換ということでございますので、今、三浦先生御指摘のとおり、国、自治体、そして事業者、そして市民含めて一体となって取り組むということが極めて重要で、そしてその中で、やっぱり住民と近い、地域と近いということで、自治体が果たす役割というのは極めて大きいというふうに期待をされるわけでございます。
ただ一方で、御指摘にあったとおり、いろんな意味での体力ですね、といった点で、いきなりその地方自治体に大きな役割をお願いすることが適切なのかどうか、これは水素の、経済産業省さんの委員の中でも、例えば保安に関する部分についての議論の中で、極めてけんけんがくがく議論があったところでございますけれども、ああいった、今回、水素の高圧ガス保安法といったようなその保安の部分については、当初は国が全面的に面倒を見ますというようなところで、年数がたっていわゆる知見の蓄積等も含めて時が来たという段階で自治体に権限を移譲していくといったような形で、言わば特殊な特例の扱いを設けたといったようなところは、やっぱり時期によって国と自治体の責任分界点が異なるのではないかといったようなところを現実に即して議論をしたといったようなところが反映されているかなというふうに思っております。
私からは以上です。
参考人(中澤宏樹君)
御質問ありがとうございます。
先生御指摘のとおり、地方公共団体、それぞれ都道府県ごとの財政力というのも大きな差がございます。
実際我々がいろいろ話をしている中で、東京都のように財政力の豊かなところにつきましては、非常に水素社会実現に向けて積極的に多額の予算を計上して、実際我々、京浜島に我々のシステムを入れるというようなことまでやるというところをやっているところもございます。
一方、小さいところでは、何をしたらいいのかということで御相談も受けるわけでございますが、やはり本当に人材という部分も大変だと思います。我々は、たまたま企業局という独立採算のところがやっておりますので、水力発電事業で稼いだお金でつぎ込んで、なおかつ電気の専門家の職員がいましたので、彼らが中心になってこのシステム動かすことができたんですけど、今こういう公営電気やっているというのは全国で二十四都道府県しかございませんので、それ以外の県で自前でこれをやるというのはまず無理だと思います。
ですので、やはりこれは、民間の事業者の方々、我々はPEMをやっておりますけど、旭化成さんなんかはアルカリをやっております。福島県でアルカリやっていますので、そういうような形の中でいろんな手法があるかと思っておりますので、それをうまく取捨選択しながら、あと、地元の企業の皆さん方の脱炭素化にどのように県が音頭を取って引っ張っていけるのか。先ほど近藤先生がおっしゃったように、地域で大きな絵を描いて、そこへいろんな仲間を、企業家の人たちや地元の自治体の人たちが入り込んで進めていくということが、都道府県の役割になっていくのかなと思っております。
以上でございます。
三浦信祐君
大変重要な御示唆をいただきましたことに感謝を申し上げたいと思いますし、国の役割の一端も御説明をいただいたかなと思いますので、法案審議ではしっかり役立てていきたいというふうに思います。
次に、近藤参考人と竹内参考人に伺いたいと思います。
水素供給拠点の集約化についてでありますけれども、大規模化ということと中規模拠点、これは構築していくには重要なことではないかなと私自身は思っております。エネルギーシフトに際しては、大きな設備変換に対しての投資、これをどのように円滑にできるかということが鍵になるというふうに思います。
例えば、日本の原油コンビナートでも、中東産の原油に対応できるような構造になっていますけど、これが別なものになるというときは、設備投資は多大なコストとして乗ってくるんではないかと。一方で、アンモニアを活用しようと思った場合には、ガスタービン自体は替えなかったとしても、その供給システムを変えなきゃいけないということにもなっていきますので、投資に見合う、そのコストが吸収できるかどうかということも課題になってくるというふうに思います。
そこで、既存のアセットからの変更に当たって取り組むべき、特に水素を活用するという部分では、具体的な対応、これはどのようなものかということについて御教示をいただければというふうに思います。
委員長(森本真治君)
では、近藤参考人からお願いします。
参考人(近藤元博君)
御質問ありがとうございます。
まず、供給の大きな受入れですね、今までは石油を中心とした受入れ拠点がありましたが、水素、アンモニアとなってまいりますので、ここはやっぱりまずすぐに投資が回収できるとは思えません。ですので、今回の法案にありますように、きちんとした国の支援をいただきながら、大規模、中小規模をつなぐハブ・アンド・スポークという考え方の中で、いかに地域全体に大規模から中小に配っていくかというシステムが必要かと思います。
一方で、使う側の投資も必要になります。例えば、私が企業のときにやったシステムでいいますと、やっぱり重油を使ってコージェネレーションといって電気と熱をつくるシステムよりは、天然ガスを使うと上がっちゃうんで、コストが、でも、それはやっぱり環境的に見れば重油よりは天然ガスがよかったし、天然ガスを使った方が効率が上がりますので全体効率は上がっていく。そのときには、やっぱり国の支援をいただきながら、例えば省エネとか新エネという支援をいただいて、設備投資の何%かという支援をいただいたこともあります。
ですので、これ、鶏と卵の関係になりますけど、やっぱり拠点整備をしたら、次は使う側にいかに使ってもらえるか、特にその末端にありますような事業者に使ってもらえるかどうか、大規模ではなくですね、こういうところまで含めたときの支援制度というのは、これはセットで進めなきゃいけないと思いますので、時間軸まだございますけれども、大規模受入れ拠点の整備が進む中では、いわゆる使う側、需要者側の支援というのをどう考えていくかというのは、また検討が必要かなと考えております。
参考人(竹内純子君)
御質問いただきまして、ありがとうございました。
ただいまその支援の在り方については近藤先生からお話ありましたので、私からは、ちょっと引いた目でコメントさせていただければというふうに思います。
この法案につきましては、やはり皆様重要性を認識していただいていて、極めて前向きな御質問も頂戴しているなというふうに思っているんですが、一方で、この支援というところをなぜ国がするのかと。これは、やっぱりこの脱炭素、CO2を出さないということが価値としてやっぱり認識されなければならない。これ、国が最初は支援をする。
ただ、いつまでもやっぱり支援するわけにはいきませんので、当然、CO2を出さないということに対して価値を感じる、言わばカーボンプライスを導入することによって出さない技術が安くなる、で、市場で競争力を持つ。そういった制度をつくっていった上で市場で自立をして普及をしていくようになってもらわなければ、基本的にずうっと支援をし続けるということになってしまう。
加えて、このエネルギーですとか、例えば鉄などの素材もそうだと思いますけれども、CO2を出さずに造った鉄と出して造った鉄と、鉄としてのクオリティーはもう全く一緒ですということになりますと、その価格差というのは、要は、本当にCO2を出さなかったことということに対して社会が負担をするということによってでなければ賄われないわけですね。
こうした仕組みをつくっていって、マーケットでその技術が自立をするように誘導していくといったようなところが、支援というところで最初に手は差し伸べたとしても、将来的にきちんとマーケットでというところが求められるところではないかというふうに思っております。
以上でございます。
三浦信祐君
大変にありがとうございます。
次に、近藤参考人と竹内参考人に伺いたいと思います。
我が国の最近の弱点とも言える技術上の課題として、世界標準を取るということであったり、世界共有規格、これを生み出して取り込んで確定させることが、私にとってはこれがとても重要なんじゃないかなというふうに思っています。その戦略構築というのが必要であって、大胆な挑戦ができる政策決断というのが欠かせないというのが、少子高齢化と、稼ぐ力をもってして今後の社会保障制度にも寄与するような、そういう役割というのが今回の脱炭素化、また水素活用の中にはチャンスが含まれているのではないかというふうに思っております。
これらの実現が、ひいては価格低減効果や稼ぐ力、競争力にもつながっていくものだというふうに私は信じておりますけれども、我が国があらゆる分野で規格、標準化を獲得することを実現するためには、強力に推進したいと、そういう決意の下で、今回のこの脱炭素、水素社会の構築過程に我が国としてこのチャンスは包摂されているか、またそこに対してしっかりと投資をしなければいけないのではないかというふうに思いますけど、これらの知見についてお伺いしたいと思います。
委員長(森本真治君)
では、近藤参考人からお願いします。
参考人(近藤元博君)
先ほども申しましたように、やっぱり日本は水素に、取決めを世界に先駆けてやってきました。そういう意味では、特許もたくさん持っていますし、技術などもたくさん持っています、ある部分では。ですので、基準化、標準化をしようとしますと、こういった裏付けが必要になります。
裏付けを持った国がきちんとした裏付けを基に基準化、標準化をしていくというのが大事だと思いますので、そういう意味では、今までの我が国の持っている、産業界それから学識の持っている知見を最大限活用しながら、水素社会の構築に向けた基準化、標準化というのをリードすべきだと思っていますし、これをやらないと、過去、技術で勝ってビジネスで負けたということになってしまいますので、やっぱり標準化を取るというのは、先生おっしゃったように非常に大事なファクターになりますので、今回、脱炭素という意味の中で見ると、唯一無二、この分野というのは先行できるんじゃないかと考えております。
参考人(竹内純子君)
御質問いただきまして、ありがとうございました。
最近、やっぱり何の政府の委員会で議論をしていても、やっぱり規格化で世界標準を取ることに対しての体力が若干弱くなっているのではないかといったような問題意識は多くの方がお持ちだというふうに思います。こういったところ、もう本当、役所の方たち、そして民間企業の方たちも努力してくださっているわけですけれども、なかなか、やはり日本というのは、G7とふだんは付き合っている、けれどもマーケットとしてはアジアを見ていたりとかするといったようなところで、声が大きくしづらいところはどうしてもあるのかもしれません。
ただ、先生御指摘のとおり、ここで勝たないとせっかくの技術が生きない、技術で勝ってビジネスで負けるということを繰り返すことになりますので、改めてここに注力をする必要がある。
その中で申し上げたいのは、これまでもG7の一端と、一か国として日本は振る舞ってきたわけですけれども、我々のマーケット、これからどこになるのか。アジア、アフリカといったようなところと共同歩調でその規格化、標準化に向けた言わばボイスを大きくしていくといったようなところ、こういった取組をより強くしていく必要があるのではないかと思っております。
三浦信祐君
ありがとうございます。
最後に、世界の最先端であるPEM型をつくられている、そしてそれを運用されているという部分で、今お二人の参考人の方にお伺いしたような角度で中澤参考人に伺いたいと思いますけど、もちろん、世界最高のものを今度は売っていく、そして、技術とその能力を確保していくという視点において国が必要だという支援について御意見があればお願いしたいと思います。
参考人(中澤宏樹君)
御質問ありがとうございます。
先ほどもちょっと御説明させていただきましたけど、本当に国内でグリーン水素を作るというところでは、やはり化石燃料、天然ガス、都市ガスと比べると、価格の部分というのは完全に劣ってしまいます。なおかつ、熱量についても三分の一、水素は、ということがありますので、今回、今法案につきましては、この部分をしっかり補っていただけるということで、我々としては、十五年間助成していただいて、その後十年間はしっかり継続できるように、二十五年間、二〇五〇年のカーボンニュートラルに向けてまでしっかりやるということを我々としても取り組んでいくということになっておりますので、今法案につきましては、本当に我々としては願ってもない、我々がビジネスを進めていく上で最高の法案になってくると思いますので、我々はしっかりコストダウン、いろんなことを図りながらしっかりビジネスとしてやっていけるように、それから、やはりターゲットの部分というのはアジアになるのかなとは思っておりますけれども、ここにもしっかり売り込んでいけるように頑張っていきたいと思っております。
ありがとうございます。
三浦信祐君
参考人の先生方、ありがとうございました。
以上で終わります。