経済産業委員会 参考人質疑(2020年6月4日)

電気事業法の改正について 参考人質疑

三浦信祐君 公明党の三浦信祐でございます。
 先生方、今日は貴重な御意見、御提言をいただきまして、ありがとうございます。
 まず冒頭に、大橋参考人に伺わさせていただきたいと思います。
 浜野委員からも先ほどありましたけれども、まず、我が国の電気事業者、また送配電、総じて言えば、エネルギーを供給する側の事業者の皆さんというのは、とにかく、例えば電気ですと、電気を通すということが、入口の段階から、そして自分のされている仕事、それ全てもうそこに集約をして仕事をされています。これはもう世界に誇るべきことだと思いますし、それに日本は支えられていると思います。
 一方で、競争の時代にありながら本当にしのぎを削っている、一方で有事で協力ができると。これは本当に、モチベーションの問題と、そして現実的な課題が両輪でありながらも、電気を通すというその一言に全て尽きていると思います。
 その上で、先ほどありましたけれども、現場のやる気を後押しをすることが大前提と。競争を促しておきながら現場でやる気を促すと、なかなか難しい課題ではあると思います。我が国として、また政治の分野からも、行政の方としても、どういうことを具体的に支援をしていくべきかということを是非御教示いただければと思います。

参考人(大橋弘君)  電気を通すに当たって、電力事業者というのは何々電力だけじゃなくて、下に、裾野にいろんな電工とかを含めて事業者がいます。そうしたものを一体として電力事業を支えているというところがあるんだと思います。
 経済効率性の観点から、基本的に一般競争入札というものを導入して価格が安ければ落札すると、それはどこからでもいいという形がかなり強く導入されたんじゃないかと思いますけれども、他方で、そういう事業者の方々の中に、緊急時にどれだけの人が、自分が手を挙げて汗をかく人がいるのかということは、なかなか多分競争入札時で分からないんじゃないかと思います。
 そこは、やはり一つ、そういうふうな非常時にも協力していただく方にしっかり取ってもらうことで健全な産業を育てていくという視点がすごく重要だと思っていまして、価格のみの一般競争入札を推進するというような考え方は、当初は総括原価から変わる変わり目でもあったので、振り子というのはこっちへ寄せないとうまくシステム動かないというのはありますけど、そろそろそういうところも含めて、業界全体をいかに足腰育てていくのかという観点での調達も一つ非常に重要な課題だというふうに思っています。

三浦信祐君 大橋参考人に引き続き伺いたいと思います。
 まさに今おっしゃっていただいたことが、国民的理解と行政的理解、二つが両立しなきゃいけないと思います。限られた予算の中でいかに安くやっていくかということと、一方で、レジリエンス性を考えて、その持続可能性のために必要な経費を出していくということ、どうしてもこれが、特に行政の入札のときには理解がされないということがあります。これは我々もしっかりと見ていかなければいけないというふうに思いますけれども。
 そういう視点から考えると、安定供給と災害の対応ということは間違いなく両輪であると思います。その中で、多数の事業者が関わる中でこのレジリエンスを確保するための調整機能、これが極めて重要だと思います。その司令塔を担っていくところは具体的にはどういうところが担っていく、そして災害が起きたときにどういう指揮系統をつくっていくかと、こういうことが大事になると思いますけど、是非この点について御意見いただければと思います。

参考人(大橋弘君)  ありがとうございます。
 今おっしゃった点は、この法案をどうやって魂を込めていくのかというところに非常に密接に関わるんだと思います。
 基本的には、私の理解ですと、被災した地域における送配電部門がそれを担うという形になっているんだと思いますけれども、さて、その地方の電力事業者にそれが急に来た場合にできるのかと。プッシュ型の支援ということなので、物すごい物量がもしかすると来る可能性があって、それをさばき切れるのかというのは、実はちょっとこれは本当に可能なのかどうかというのはしっかり見ていかないといけないんだと思います。
 基本的には、やっぱり経験のある、一回経験するといろいろな学びがあるので、そこの学びをいかに横に共有していくのか。今回ですと北海道さんあるいは東京さんとか、電力とかが知見が蓄えられたと思いますけれども、そういったちょっと血の通った経験をいかに地方電力を含めて広げていくのかというのは、一つ大きな課題として認識しておくべきだなというふうに思います。

三浦信祐君 今お答えいただいた内容で、実は前回この委員会で質問をさせていただいたときの、訓練の重要性と、いい例と悪い事例をしっかり共有すべきではないかということを経産省にも訴えをさせていただいて、まさに今言っていただいたことに、魂を入れていくということ、これからもしっかり審議していきたいというふうに思います。
 続いて、大山参考人に伺わせていただきたいと思います。
 非常時に系統分離をすることが各地域でのレジリエンスを維持することにもつながって、また、そこの電気を確保するところにもつながっていくと。一方で、主たる発電力がもしこのローカルな発電力ということを考えますと、再生エネルギーのケースが多いと思います。理論上で、普通に電気が通っているところでの分離を図るということは簡単でありますけれども、その再生可能エネルギーの割合が高いところで、災害の程度、また内容にもよると思いますけれども、これが再生エネルギーとして活用できなかった場合には実効性が担保できない可能性があるかなと。
 要は、アイランディングを図ったときの何で発電をされているかというリスクマネージということについて、この設計をしていく上で気を付けなければいけない点ということについてお伺いしたいと思います。

参考人(大山力君)  ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、再生可能エネルギーは是非活用していく必要があるんだけれども、出力が変動するという非常に扱いにくいものであるということになるかと思います。
 先ほど申し上げたそのアイランディングというか、分離できるようにある程度地域をまとめておくということからすれば、それを突き詰めていくと、非常に再生可能エネルギーが多いところは少し抑制してくれというようなことになってくる可能性があるかと思います。その辺については、やはり事前によくシミュレーションなり解析をしっかり行って、その上で、こういうことが起きたらこう対応するということを事前に決めておくというようなことで対応するしかなくて、結局、電力系統の安定供給担保するためには、よく計画してよく運用するという以外にないんですけれども、その計画、運用をいかにしっかり解析に基づいてやるかということに全てなってくるかと思います。
 解析に基づいた上で、どこまでリスクを許容するかということを国民の間で事前に、これコンセンサス得るのが非常に難しいと思うんですけれども、そういう視点の議論をしておく必要があるかなというふうに思います。
 医療関係でいえばトリアージとかありますけれども、エネルギーのトリアージというのが大事だなというのも私は時々主張しているつもりではあるんですけれども。
 以上でございます。

三浦信祐君 今明確にトリアージと、これは極めて重要なことだと思います。
 ところが、トリアージは、実は我が国では一回、東日本では経験したと思います。三・一一のときの計画停電。私は電気が通らないところに住んでおりましたので、町じゅうがモーター一つ動かなくなるとこんなに静かなのかと。と同時に、その静けさというのは、いかに電気が有り難いかということ、そして電気の通じている、物が動いているということに対する安心感ということはまさに表裏一体なんだなということを経験しました。
 その上で、シンプルに伺いたいと思います。今回の法案の中で再エネの導入のことも触れられておりますけれども、計画停電から得られた教訓について先生方はどう捉えられているかということを全ての先生に伺いたいと思います。

委員長(礒崎哲史君)  それでは、今回は、崎田先生、それから大山先生、大橋先生の順に伺いたいと思います。
 まず、崎田参考人。

参考人(崎田裕子君)  ありがとうございます。
 計画停電などがありました。そういう地域に伺っていろんなお話を聞くと、そういう方は、こんなにエネルギーが大切なものだということをもう初めて気付いた、だからこそ、自分たちでも地域のエネルギー資源を活用してしっかりとエネルギーをつくれる町にするんだという、そういう意見の方に大変多くお会いして、びっくりした経験があります。その辺が印象が強いです。

委員長(礒崎哲史君)  続きまして、大山参考人。

参考人(大山力君)  計画停電ですけれども、最初に一言、日本の計画停電というのは非常に珍しいものだったということだけ申し上げておきたいんですけれども。
 世界的には計画停電という言葉はそれまでなくて、輪番停電というのがありました。何が違うかというと、輪番停電の基本はいつどこが停電するか教えない。それはなぜ教えないかというと、停電が起きるとセキュリティーが低下するので泥棒が来る。したがって、教えるなんてとんでもないというのが世界の常識だったのを日本は覆して、前もっていつ、どこが停電すると言ったと。それでもちゃんとうまくいっていたのは、日本の国民が非常にすばらしかったのかなというふうに思っていますけれども。それはちょっと蛇足ですけれども。
 計画停電、今、崎田参考人の方からもお話がありましたけれども、エネルギーの大事さというのを非常に教えてもらったかなというふうに思っております。
 以上でございます。

委員長(礒崎哲史君)  大橋参考人。

参考人(大橋弘君)  ありがとうございます。
 電力システム改革は、そもそも計画停電から始まったと。それに対する対応で三段階やってきて、OCCTOができ、そして小売の自由化が行われ、発送分離ですけれども、これは大型電源よりも分散化。今後は、先ほど御質問にあったけれども、需要も見ていこうというふうな、ある種取組をシステマチックにやってきたのかなという意味で、計画停電から学べることを我々、電力システム改革でしっかりやってきたということは、多分大前提としてあるんだろうなというふうに思っております。
 ありがとうございます。

三浦信祐君 まさにこの完成形ということに今近づいていくのかなと。あとは、本当に魂を入れてどう運用していくかということがこれからは大事になってくるのかなと思います。
 崎田参考人に伺いたいと思います。
 本年の四月、世界初の実用化を目指して波力発電、波の力の発電、これが神奈川県の平塚市で開始をしております。東大生産研究所と平塚市の共同で行われております。海上のところに、防波堤のところから約二十メートル先のところに機材が設置をされて、一・五メーターの波で四十五キロワット、それが来る波と返す波とということを計算をしながら使われております。これは非常に重要な取組で、海洋国である日本にとってみれば、山の地域とは別に、使えるものはしっかりと使っていこうというところの入口、そして、それが実用化できると、これが地域の発電に大変貢献するかなと。今後、この再エネの定着化への課題という部分で、ちょっと大きな質問が入っておりますけれども、どうしていけばいいのかというところがあります。
 その上で、系統接続ということの課題というのをどう乗り越えていけるかというのが、実は技術が進むのと同時に、コネクト・マネージというところの課題を両立しないと再生可能エネルギーのローカライゼーションというのは進んでいかないんではないかなと思います。これについて御意見いただきたいと思います。

参考人(崎田裕子君)  ありがとうございます。
 非常に難しいお話ですけれども、大事なところで。
 やっぱり再エネをしっかりというふうに、今ももちろん主力電源化という話なんですけれども、その中で、やはり再エネ、不安定な電力が大量に入ったときにどういうふうに安定的に供給するかという、そのための設備をどういうふうに整え、どういうふうにそこのコストを払っていくのかという、そういう議論が、専門家の間ではやっておられるんだと思いますが、市民の間にそういう認識が、再エネ頑張ろうみたいな動きは強いんですけれども、その辺のしっかりとした認識がまだまだ定着していないんではないかという印象も持っております。
 ですから、もう少しその辺の、この再エネを定着させるときに必要な課題をどう解決するのか、それが今回の法案だと私は思って、大事だと思って賛成をしているんですけれども、そういうところをしっかりと出していく。それが、実は今度のFITだけではなくFIPが提案されているというのも、そういうところにも非常に影響する話だと思うので、そういうことが、社会にちゃんと市民目線で分かるような情報とか対話とか、何かそういうことがもっと起こってほしいなというふうに強く思っております。

三浦信祐君 大変参考になるお話をいただきました。我が国はスイッチを入れると必ず電気が来るということ、そして、それを必ずつけるんだという、そういう技術者、また関係する皆さんによって成り立っているということ、この電気事業法の改正を通して、それは当たり前のことではない、むしろ当たり前にしてくれる努力をするということが大事だということを今お話を聞いて分かりました。
 しっかりとこの後法案が成立できるように議論していきたいと思います。
 ありがとうございました。