東日本大震災復興特別委員会(2018年7月11日)

将来の原子力人材の育成について

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
 四人の参考人の方々には、本当に今日は貴重な時間を頂戴しまして、ありがとうございます。また、身をつまされるようなお話もいただきました。しっかり胸に秘めつつ、今後の政治の上で与野党問わず取り組んでいかなきゃいけないことを教えていただいたというふうに思います。
 まず最初に、大西参考人に伺いたいと思います。
 実は、私は、この政治の道を志すに当たっては、これまでずっと金属工学の研究をしてまいりました。その中で、この三・一一のまさに原発の事故、これが日本にとって、世界にとって越えなければいけない大事な大事な、この大きな惨事を乗り越えていかなきゃいけないと、そのためには絶対に廃炉が必要であるということで、その政治の部分からしっかりとバックアップをしていかなければいけないと、そういう思いで今仕事もさせていただいております。
 その中で、一方で、この原発事故以降、原子力というものが全て悪者になって、そしてそれが大学の募集にも影響をしていく。私は、将来に向かっていくならば、廃炉をする人材も必要である、現存する原子力発電所を安全に廃炉に向かっていくにしても技術者が要る、また将来の規制人材、規制側にいる人材育成もしなければならない、そして廃棄物の処理というのはずっと続いてまいります。その中で、この社会の風潮として、若い世代が原子力では将来がないというような思いが強い方もおられる中、この日本にとって、将来の原子力人材の育成、これは余り表には出ていかないかもしれませんけれども、重要な人材分野であると私は思います。
 その面からにおいて、大西参考人が考えられていること、我々に伝えるべきことがあれば、教えていただければと思います。

参考人(大西隆君)  ありがとうございます。
 私の先ほどの陳述の中では廃炉について触れました。廃炉が、非常にある意味で不幸な格好で日本は廃炉事業に迫られているということですが、世界広く見れば数百の原発が一定の期間の中で廃炉の過程を迎えるということになりますので、この廃炉事業というのは世界的に大きなテーマであります。
 もちろん、そこに人材も必要ですし、様々な資金も投入されるということで、別な角度から見れば一大産業になり得るジャンルだということになります。もちろん、事故があったわけですから、除染とか放射線の影響とかいろいろなことで原子力に絡んで日本の中で研究が行われて、一歩でも新しい知見が得られて、それが被災者を含めて様々な方に適用されていくということが必要になるというふうに思います。
 そういうことについて、やや私の感じでは、余り表に出されない風潮というのもあるのではないかと思います。つまり、原子力といってもいろいろな分野があって、その幾つかについては、発電が仮にシュリンクしていったとしても、これから人材の必要性が増大していくような、そういう分野もあるということについては、私どもはきちんと認識をしなければいけないというふうに思います。
 私どもの大学には原子力という名前の付く学科はございませんけれども、今おっしゃるように、金属あるいは機械、電気、いろいろな分野でそれに関連する仕事に就くような学生もおりますので、これからの日本におけるある意味で技術者の必要性ということについてはきちんとした指導を学生にもしていくと、あるいは学生に対して紹介をしていくという役割が大学としてはあるというふうに思います。
 日本全体としてもやはり必要な分野の人材を絶やさないという観点で考えていくことが必要で、私が学術会議の会長をしていたときに、原子力発電の将来という問題とそれ以外の原子力利用の将来、これは医療的な利用とか例えば考古学における利用とか、いろんな利用がありますので、それは区別して、原子力発電以外の利用については、もちろん様々な注意は必要でありますけれども、積極的に発展させていく必要があるというレポートをまとめた記憶がございます。そうした議論をきちんと整理をして、国民の方々にも分かるような格好で提起をして進めていくことが必要ではないかというふうに考えております。
 以上でございます。

イノベーション・コースト構想について

三浦信祐君 ありがとうございます。
 私も、実は廃炉ということにおいて、これまで世界の人類が経験をしたことがないような事故である中で生まれてくる技術というのは、単に廃炉のために活用できること、またそれが別な部分で、介護であったりまた社会インフラの部分であったり、あらゆるところの技術に活用ができる、また場合によっては新たなイノベーションを起こすことができるチャンスにしていかなければ、これはもう大変もったいない話だと。
 その上で、それをマネジメントするのがやっぱり国の役割であったり、またそれをマネージできる人材を育てていくのも国の役割であるんではないかなというふうに強く思っております。その中でイノベーション・コースト構想があり、地域の復興だけではなく、むしろ新しい技術を集約できる、またそれをコマンドできる人材が育つ、そして世界がそこに注目をしていくようなところまで育て上げていかなければこれはいけないんではないかなと強く思っております。
 そのためにも、日本にとっては、中小企業のニーズやシーズ、そして廃炉に関わるロボット技術であったり、またそれを新しいものに変えていくような技術上の人材というのを育てるというところが重要だと思うんですけれども、このイノベーション・コースト構想の今後の進むべき方向、またここに期待する部分、大西参考人にお伺いできればと思います。

参考人(大西隆君)  イノベーション・コースト構想、先ほどの私の陳述の中でも新しい産業ということで申し上げました。
 これは非常に、福島でこれから起こす産業ということで、多方面のテーマが取り込まれています。特に私は、その中で、福島に立地する必然性ということで考えると、廃炉事業との関係というのがやはり重要だと。しかし、そうはいっても、原子力プロパーの領域だけではなくて、ロボットとかいうことも非常に重要になってくるということで、応用範囲は随分広いものであろうというふうに思っています。
 ただ、やや難しいのは、そうした産業の基礎的な研究開発から応用までの仮に道程があるとして、応用については現場で適用されなきゃいけないということで、当面、福島第一に適用されるということになるわけでありますけれども、しかし、その基礎的な研究というのは様々なところでやれるということなので、福島を最終的な集約点と、拠点とするとしても、全国的な研究のネットワークというのをつくっていくことが同時に必要だというふうに思います。
 したがって、このイノベーション・コースト構想は、福島が拠点ではあるけれども、全国とそれが研究のネットワークをつくっているんだというふうに裾野を広げていくような発想も私は必要なのではないかというふうに考えています。
 以上でございます。

三浦信祐君 大変参考になりました。
 神奈川でも、さがみロボット産業特区というのがありまして、介護関係とネットワークを組んでいけば、実は廃炉だけに注目をしたようなロボットではなくて、むしろ介護に使おうと思っていたのが技術としてイノベーションが起きる可能性もある、そういうのをつなぐ仕事もしっかりやっていかなければいけないということを今教えていただいたと思います。

書類媒体のデジタル化における国の管理保存のあり方について

 最後に、佐藤参考人に一つ端的に伺いたいと思います。
 この貴重なお仕事をしていただいて、我々もしっかり応援しなければいけないと思いました。人材育成もこれから必要であるということ、そしてそれが社会に理解をされていく、また社会に当たり前に変えていくということは大事だと思います。
 一方で、日本では、災害大国でありながら、古文書というのは江戸時代のレベルでありましたけれども、今、この書類自体が、将来にわたっては、将来から見たとき、未来から見たとき古文書になっていくような位置付けになります。紙からデジタルに変わっていくというときがあると思います。その価値の問題であったり管理の問題、今後どういうふうにこれは国として取り組んでいかなければいけないか、将来像について少しお話をいただければと思います。

参考人(佐藤大介君)  今の保存の媒体の問題ですが、古文書については、一番古いものは奈良の正倉院の文書というのがありまして、これはもう千年以上前に書かれたものが残っているという、そういう実績があるのですが、デジタルデータの場合、一番問題なのは、本当に超長期に保存する技術がまだ確立されていないという部分ですね。つまり、古い古文書は残るけど、今デジタルで作っている資料ほど百年後残っていないという、今はそういう脆弱な状態にあると思います。
 これは、理系の研究者の皆さんが超長期保存というのを残しているんですが、例えばデジタルのコンテンツとか、そういう本当に経済的なものにつながっていくようなものも含めて消滅するというのは、これは日本にとって大変な事態だと思いますので、そうした超長期の保存について、やはり技術的に進んでいくというのがまず一点。
 それから、やはり媒体が何であろうと、それを残そうというやっぱり人や社会の意思というのが大事だと思いますので、そういうのはやっぱり公的にやらなければならないんだという、そういうことで国には取り組んでいただきたいですし、私どももそういう意識を高めるような、そういうことをしていきたいというふうに思っております。

三浦信祐君 お二人の参考人にはちょっと質問できませんでしたけれども、しっかり今日のお話を受けてこれから政治に取り組んでまいりたいと思います。
 ありがとうございました。