環境委員会(2017年04月13日)

名古屋・クアラルンプール補足議定書締結の見通しについて

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
 早速ですが、御質問させていただきます。
 先ほど来ありますけれども、名古屋・クアラルンプール補足議定書では、国境を越えて移動する遺伝子組換え生物による損害が生ずる場合に管理者に対応措置をとること等を要求する旨を規定するものであり、我が国が議長国を務めた平成二十二年の十月のカルタヘナ議定書第五回締結会合において採択されたと承知しております。
 まず初めに、月日もたっているものですから、補足議定書はどのような経緯で採択をされたのでしょうか、伺います。

政府参考人(亀澤玲治君)  お答えいたします。
 平成十二年に生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書が採択されました。この議定書は、改変された生物、いわゆる遺伝子組換え生物等が生物多様性に及ぼす可能性のある悪影響を防止するための措置に関する国際的な枠組みを定めたものです。これに対応する国内担保措置として、我が国では、カルタヘナ法を平成十五年に制定しております。
 一方、遺伝子組換え生物等の国境を越える移動から損害が生ずる場合の責任及び救済の分野につきましては、カルタヘナ議定書の交渉過程で合意に至らなかったため、更なる交渉が続けられることとなりました。平成十六年にクアラルンプールで開催されたカルタヘナ議定書の第一回締約国会合以降、およそ六年間交渉が継続をされました。損害の定義、責任を負う者の範囲などの論点が残っておりましたが、平成二十二年、我が国が議長国として名古屋市で開催された第五回の締約国会合において採択に至ったのが名古屋・クアラルンプール補足議定書でございます。

改正に至る経緯の確認

三浦信祐君 責任と救済の分野の交渉が大変御苦労があったと思います。
 その上で、この補足議定書というのは、繰り返しになりますけれども、国境を越えて移動する遺伝子組換え生物等によって損害が生じた場合に生物多様性の復元等の対応措置をとること等を締約国に求めていると。そう見ますと、国と国との間を移動した遺伝子組換え生物等によって生じた損害のみを対象としていると承知しております。
 一方で、現行のカルタヘナ法では、海外から入ってきた遺伝子組換え生物等のみならず、日本国内で開発をされた遺伝子組換え生物等も含めて規制の対象にしております。こうした状況下で、この補足議定書を国内担保する今回のカルタヘナ法改正案ではどのような遺伝子組換え生物等を規制の対象としているのでしょうか。また、それはどのような考え方に基づくのでしょうか。比嘉政務官に伺います。

大臣政務官(比嘉奈津美君)  カルタヘナ議定書の適用範囲は国境を越えて移動する遺伝子組換え生物等ですが、同議定書の国内担保法である現行カルタヘナ法は国内起源の遺伝子組換え生物等の使用も規制の対象としております。これは、我が国の生物多様性を保全する観点からは、海外起源か国内起源かによって遺伝子組換え生物等の取扱いに差を設ける合理的な理由がないためであります。
 改正法案においても、現行カルタヘナ法の考え方に沿って、補足議定書が対象としている国境を越えて移動する遺伝子組換え生物等だけでなく、国内起源の遺伝子組換え生物等も対象としています。そのため、改正法案で追加される回復措置命令の対象も、海外起源か国内起源かを問わず、遺伝子組換え生物等によって生じた損害となります。

三浦信祐君 ありがとうございます。
 今回の改正では、遺伝子組換え生物による生物多様性への損害が生じた場合における事業者に対する回復措置命令などの新たな措置が追加されることになっております。一方で、我が国において、先ほど来ありますけれども、これまで承認した遺伝子組換え生物により生物多様性への影響が生じた例はないと承知をいたしております。
 改めまして、政府がこの制度を創設しようとする趣旨を伺うとともに、加えまして、仮に生じた場合、どのような影響が想定されるか、御答弁をいただければと思います。

政府参考人(亀澤玲治君)  お答えいたします。
 カルタヘナ法の下においては、遺伝子組換え生物等の使用等を行おうとする者は事前の承認又は確認の手続等を経ることが求められております。このように未然防止が図られていることもありまして、御指摘のとおり、我が国において遺伝子組換え生物等の使用等によって生物多様性へ影響が生じた事例は確認されていないところでございますが、今回の改正は、損害発生後の対応を定めた補足議定書を担保するための改正であり、これまでの未然防止の措置に加えて、万が一生物多様性への影響が生じた場合の回復措置を予防的な措置として追加することによって、遺伝子組換え生物等の規制に係る一貫した制度を整備することになると考えております。
 具体的な遺伝子組換え生物等による生物多様性への影響としては、生態系に侵入して他の野生生物を駆逐してしまうこと、近縁の野生生物と交雑してその野生生物を減少させること、有害物質等を作り出して周辺の野生生物を減少させること等が可能性としては想定されるところでございます。

生物多様性保全関連法令への限定について

三浦信祐君 先ほどの質疑の中でも政府から説明をいただいたとおりですけれども、カルタヘナ法改正案においては、回復措置命令の対象を種の保存法の国内希少野生動植物種や自然公園法の国立公園の特別保護地区等に関する生物多様性に限ることを想定していると承知をしております。
 この点、種の保存法については今国会に改正案が提出をされており、国内希少野生動植物種の中に特定第二種国内希少野生動植物種という新たな類型を設けて絶滅のおそれのある野生動植物種の保存を推進することとしており、この改正案、大変重要なことであると私も認識をしております。
 この特定第二種国内希少野生動植物種もカルタヘナ法の回復措置命令の対象となる種に含めるべきであると私は考えますけれども、政府の考え方を伺います。

政府参考人(亀澤玲治君)  今国会に提出をしております種の保存法の改正案では、里地里山等に分布する絶滅のおそれのある野生動植物種の保全を推進するため、特定第二種国内希少野生動植物種という新たな類型を創設することとしております。この特定第二種国内希少野生動植物種も、絶滅のおそれが認められる国内希少野生動植物種であることに変わりはないことから、カルタヘナ法改正案に規定する生物の多様性の確保上特に重要な種に含めることを想定しているところでございます。

対応処置について

三浦信祐君 これは、第一種だけではなく第二種も含めていただけるということは重要なことだと思いますので、実効性あるものにしっかりしていただければなというふうに考えております。
 さて、遺伝子組換え生物の適法な使用等によって損害が生じた場合にはどのように対応するのかが懸念をされます。先ほど来、中川先生からも、また浜野先生からもあったと思います。その上で、国としてこれを明確にしておく必要があると思いますけれども、山本大臣、御所見を伺います。

国務大臣(山本公一君)  カルタヘナ法の下では、事前に適切な承認又は確認の手続を経た場合等にのみ遺伝子組換え生物等の使用等を認めており、適法な使用等によって損害が生じる可能性は低いと考えております。
 その上で、遺伝子組換え生物等の適法な使用等によって生じた損害については、まずは政府が実行可能で合理的な範囲で回復措置を講ずることとなりますが、その負担の在り方については、損害の程度等も踏まえつつ、改めて検討することとなります。

遺伝子組み換え生物による累積的な影響への対応

三浦信祐君 まずは、政府が合理的な措置をするということを御明言いただいたと思います。
 その上で、本改正案では、第三十八条に措置命令違反に罰則を明確に求めております。先ほど御答弁いただきましたように、第一種だけではなくて、第二種の方にもちゃんと適用をするということになっています。この罰則、一年以下の懲役又は百万円以下となっております。すなわち、ペナルティーが明確なわけです。と考えますと、この対応措置については、補足議定書第二条二の(d)において「合理的な措置」とされており、先ほど大臣からも答弁いただきました。この答申においても「実行可能で合理的なもの」となっております。
 この措置の範囲について、遺伝子組換え生物等を行う者に対して明示していく必要があると私は考えます。現時点においてどの程度の行為を要求することが想定されているのか、御答弁をいただければと思います。

政府参考人(亀澤玲治君)  お答えいたします。
 回復措置の内容は、生じた影響の内容等に応じて個別具体的に判断されるべきものではありますが、例えばとして申し上げますと、保護地域内の生物が減少した場合には、その生育あるいは生息環境の再整備を行うこと、あるいは人工増殖した個体を元いたところに再導入することを実施することなどが想定されているところでございます。

三浦信祐君 ありがとうございます。
 この明示をしていくということが極めて使用者であったりとか事業をされる方にとっては大事だと思いますので、ここをしっかり徹底をしていただきたいというふうに思います。
 合理的な措置を明示することというのは本当に事業者にとって必要なことだというふうに私は思いますけれども、この回復措置である生育環境の整備、人工増殖・再導入等については科学的な知見が必要になります。しかし、遺伝子組換え生物の使用者にそうした知見があるとは限らないと思います。また、その知見を持たなければいけないという制約を掛けるというのも、これは行き過ぎだというふうに私は考えます。
 一方で、この措置が形骸的なものとならないように損害の回復をしっかりと実現をさせていく、これも欠かすことができないと私は思います。措置の実施の後、有識者等の知見も踏まえて回復の評価を行うことが必要だと考えます。先ほど大臣からも答弁いただきましたように、国が率先して事があったときにはやっていただくというふうに考えておりますので、評価というのも欠かすことができないんじゃないかなと思います。
 国としてどう実施をしていくか、御見解も含めて大臣にお伺いいたします。

国務大臣(山本公一君)  御指摘のとおり、回復措置を命ずる場合には、合理的かつ効果的な回復措置が確実に実施されることが重要であろうと考えております。
 環境省においては、これまでもツシマヤマネコやトキなどの希少野生動植物種の保護増殖事業や生息・生育環境の整備等を行ってきたところでございまして、回復措置を命ずる場合には、これまでの環境省が有する知見や有識者の知見等も踏まえて、しっかりと助言やモニタリング等の対応を行ってまいります。

三浦信祐君 ありがとうございます。
 この法案が改正をされたということによりまして事業者が萎縮をするようなことがない、むしろこれを活用することによってしっかりとした安心、安全な社会づくりをしていくということも両輪としてやっていただかなければいけないと思います。その上で、この周知徹底、そして僅かな法改正の部分もあるかもしれませんけれども、これを事業者に徹底をしていくことが、国民の税金を使って万が一のことのときに対応するというようなことをしないためには、やはり重要な広報、周知徹底が欠かせないと思います。
 通告をしておりませんけれども、大臣の御決意、最後、伺いたいと思います。

国務大臣(山本公一君)  おっしゃるとおり、法を作っても周知徹底が行われなかったらその法の精神というのは広く行き渡ってまいりません。大変大事なこれからの作業だというふうに思っております。

三浦信祐君 是非大臣のリーダーシップの下で周知徹底を図っていただきたいと思います。
 以上で終わります。