本会議(2017年03月29日)

三浦信祐君 公明党の三浦信祐です。
 私は、自民・公明を代表し、ただいま議題となりました日本学生支援機構法の一部を改正する法律案について質問いたします。
 まず冒頭、栃木県で発生した雪崩事故でお亡くなりになられた方々、御家族にお悔やみを申し上げるとともに、負傷された方々にお見舞いを申し上げます。
 政府におかれましては、原因究明と早急な再発防止策を強く求めます。

給付型奨学金制度の創設、無利子奨学金の拡充

 それでは、質問に入ります。
 安倍総理は、本年一月二十日の施政方針演説にて、子供たちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育もまた、全ての国民に真に開かれたものでなければなりません、その上で、どんなに貧しい家庭で育っても、夢をかなえることができる、そのためには、誰もが希望すれば高校にも専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければなりませんと述べられました。そして、返済不要の給付型奨学金制度の創設を明言されました。
 公明党は、約半世紀前の義務教育の教科書無償化実現に始まり、今日まで、奨学金制度の拡充など教育の機会均等を実現するための施策に取り組んできました。また、長年にわたって給付型奨学金制度の導入を訴え続けてまいりました。
 今回、要件を満たしていても予算の関係で借りられない無利子奨学金の残存適格者の解消、成績要件の事実上の撤廃とともに、本法案が成立しますと、日本初の給付型奨学金制度が実現することになります。経済的理由によって進学を断念することがない社会の実現に近づくための大切な法案であり、高く評価いたします。

給付型奨学金の対象を社会的養護、児童養護施設者とする意義

 そこで、給付型奨学金の創設を含め、奨学金制度の充実がもたらす意義とその効果について、松野文部科学大臣の見解をお伺いいたします。
 給付型奨学金制度の支給対象者について伺います。
 平成二十七年度の文科省学校基本調査では、全世帯の大学等への進学率は七三・二%であるのに対し、平成二十六年度厚生労働省調査による児童養護施設出身者の進学率が二二・六%と著しく低くなっています。生活困窮状態が進学率への影響を及ぼし、進学の夢を持つことがはばかられてきました。総理の宣言を実現するためにも、本当に支援を必要としている人に手厚くすべきと考えます。制度上では、社会的養護を必要とする学生に対し特別な配慮をするとしております。給付対象者をどのような考えに基づき選び、どう配慮をするのでしょうか。また、制度上、どう担保されているのでしょうか。お聞かせください。

高卒認定試験合格者及び既卒者の給付型奨学金採用

 次に、高校卒業程度認定試験合格者及び既卒者の給付型奨学金の採用について伺います。
 高校卒業程度認定試験は、様々な事情で高校等を卒業していない方が高等学校卒業者と同等以上の学力があるかどうかを文科省が認定する試験です。平成二十八年度は約二万五千人が受験して、約九千人が合格し、大学など高等教育機関への受験資格が得られています。
 今回の給付型奨学金は、高校等からの学校推薦により選考された方を対象としています。しかし、本試験合格者は、給付型奨学金受給対象であっても推薦が得られません。高校を卒業した既卒者の方も、給付型奨学金受給対象の条件に該当する厳しい経済状況下で受験に挑戦している方もおられると思います。厳しい中で頑張っている方に進学機会の後押しとして本法案があるならば、高卒認定試験合格者及び既卒者についても給付型奨学金の選考対象とすべきだと考えますが、松野大臣、いかがでしょうか。
 奨学金返還について伺います。

所得連動返還型奨学金制度

 現行の定額返還型制度では、返還の過程で所得が減少している場合、負担感は考慮されておりません。毎月固定の返還額が生活を圧迫することで返還に苦慮し、ひいては滞納へと陥ってしまうことが見られます。
 今回、現行制度に加えて、時の経済状況によって低賃金や不安定雇用のとき、資格試験受験や学び直し等、新たな挑戦のときにおいて収入が低い場合に対応する所得連動返還型奨学金制度の導入が検討されております。セーフティーネットとして大変評価すべき制度だと思います。本制度のメリットについて伺います。
 一方、所得が低い場合、返済期間が長期化し、連帯保証人の返還能力が担保されないことが想定されるため、本制度では全員が機関保証に加入することを義務付けています。現行の機関保証制度では〇・六九三%と保証料率が高く、在学期間中の奨学金から保証料が引き去られるため、学生生活が圧迫されているのが現状です。今後、所得連動返還型奨学金を選択した生徒が増えた場合、保証料収入は増大が見込まれ、保証料率を低減することは可能だと考えます。松野大臣の見解を伺います。

減額返還制度の理解促進

 所得連動返還型奨学金は、来年度新規採用の貸与者からとされており、現在、返還を開始している既卒者の方には恩恵が及びません。経済的理由でやむを得ず返還が困難になっている方もおられるため、既卒者への拡充が期待されます。一方、今回、既卒者対象の減額返還制度の拡充が盛り込まれております。本制度の意義について伺います。

労働教育とブラックバイト相談体制の確立

 奨学金は、基本的に学資として貸与され、授業料等の学業に充てられています。親からの仕送りなどが期待できない学生の多くはアルバイトにて生計を立てています。しかし、いわゆるブラック企業では、雇用弱者となる学生が劣悪な労働環境の中で不当なアルバイトを強いられているとの報告が多数あります。その結果、本来の学生の本分である学業に影響を及ぼしているとの実態も明らかになりつつあります。
 過重労働やパワハラなどにより、精神的に追い詰められ、ブラックバイトであると判断できなくなっている場合もあります。高校や大学において、アルバイト環境についての相談、対応支援体制の強化が望まれます。と同時に、労働についての基本的な知識があることで防げる場合は数多いと思います。労働法に関する知識が少ないことに付け込み、法令違反が疑われる賃金未払や労働契約の未提示などの事案を防ぐため、高校や大学等において、労働法や過去のブラックバイトの事例と解決方法を含めた労働教育を学生及び教職員関係者に推進すべきと考えますが、松野大臣、いかがでしょうか。

本制度の周知徹底

 最後に、奨学金制度の周知について伺います。
 高校生が進学を希望し、判断するのは、高校三年生では遅い場合も多いと思います。高校入学後の早い時期に、進学希望か就職希望かによるコース分け、文系か理系かの選択など、将来進路の選択、判断が求められるのが現状です。本制度の情報提供は、進学の気持ちをつくる、経済的な理由により諦めない契機になると期待できます。奨学金の制度周知と徹底の仕方、時期はどう考えるか、松野大臣に伺います。
 本法律案が可決することで、奨学金は貸与型のみからの脱却が図られます。教育への投資が未来への投資です。誰もが経済的理由により進学を断念することのない社会づくりのために邁進することをお誓いし、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣松野博一君登壇、拍手〕

国務大臣(松野博一君)  三浦議員から七つの質問がありました。
 初めに、給付型奨学金の創設を含む奨学金制度の充実の意義と効果についてお尋ねがありました。
 文部科学省では、これまで貸与型の奨学金の拡充により大学等進学者の経済的負担の軽減に努めてきましたが、今般、誰もが希望すれば進学できる環境を整えるため、給付型奨学金の創設を含む奨学金制度の抜本的拡充を図ることといたしました。給付型奨学金制度は、意欲と能力がありながら経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しするため、我が国として初めて返還不要の給付型の奨学金として創設しようとするものであります。
 また、無利子奨学金については、住民税非課税世帯の子供たちに係る成績基準を実質的に撤廃するとともに、基準を満たしながら予算上の制約により貸与を受けられなかった残存適格者を解消し、必要とする全ての学生が奨学金を受けられるようにしてまいります。さらに、返還負担を大幅に軽減する所得連動返還型奨学金制度も来年度から導入することとしております。こうした一連の施策を進めることで、経済的に困難な状況にある子供の大学等への進学を大きく後押ししてまいります。
 次に、社会的養護を必要とする学生についてお尋ねがありました。
 社会的養護を必要とする生徒に関しては、進学後に個人が置かれる経済的状況が厳しいのはもちろん、親族などの頼ることができる者が不在であるなど、特に厳しい状況に置かれることとなります。このため、これらの生徒については、一定の学力・資質要件を満たしていれば高等学校からの推薦を受けられるようにするとともに、支給の額を定める政令において入学金相当額の費用として二十四万円を追加給付することを規定することとしております。
 次に、高等学校卒業程度認定試験の合格者や既卒者も給付型奨学金の選考対象となるのかについてお尋ねがありました。
 文部科学省としては、高等学校卒業程度認定試験の合格者や、一定の要件は付されますが既に高等学校を卒業された方に対しても、経済的な理由で大学等への進学を断念することがないよう、給付型奨学金の選考の対象とすることを予定しています。
 具体的な手続としては、貸与型奨学金と同様、高等学校卒業程度認定試験の合格者又は出願者については、直接、日本学生支援機構に申込みができることとし、また、既に卒業された方については、高校卒業後二年以内であれば各高校に対して申込みができることとする予定です。
 次に、新たな所得連動返還型奨学金制度についてお尋ねがありました。
 新たな所得連動返還型奨学金制度は、卒業後の所得に連動して返還月額が決定されることによって、所得が低い状況でも無理なく返還することを可能とする制度であり、平成二十九年度進学者から導入するものです。
 例えば、私立大学自宅生では貸与月額が五万四千円であり、その場合の返還月額は定額で一万四千四百円となりますが、所得が低い場合には最低で二千円という返還月額となり、大幅に負担が軽減されることとなります。これにより、将来の奨学金の返還について極力不安を取り除き、意欲と能力を有する者の高等教育機関への進学機会の確保につながるものと考えています。
 また、機関保証料については、この度の新たな所得連動返還型奨学金制度の導入に合わせて、加入者数が増加することを前提に、二十五年後まで安定的に運用するためのシミュレーションを行った上で、無利子奨学金の機関保証率を〇・六九三%から〇・五八九%へと約一五%分引き下げることといたしました。今後についても、機関保証制度の安定的運用を図りつつ、運用状況を見ながら適切な保証料となるよう検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、減額返還制度の拡充についてお尋ねがありました。
 既に返還を開始している方に対する負担軽減策については、有識者会議において検討を行い、当面、減額返還制度を拡充することが望ましいとされています。具体的には、返還月額を二分の一から例えば三分の一に減額し、より長い期間を掛けて返還できる制度へ拡充するよう検討を進めています。この拡充により、経済的に困難な状況にある返還者の負担が更に軽減されることになると考えています。
 次に、労働教育と相談体制についてお尋ねがありました。
 高校や大学においては、教員、学生支援担当課、学生相談窓口等がアルバイトに関する相談に対応しています。また、各都道府県労働局では、若者相談コーナーでの対応や大学等への出張相談を実施しているところです。また、生徒、学生が労働法制に関する知識や実際のトラブル事例を知ることも非常に重要であり、各学校において、働くときのルールを取り上げたハンドブックの活用や都道府県労働局からの講師派遣によるセミナーの開催、高校においては、学習指導要領に基づく公民科における労働問題についての指導、大学においては、日本学生支援機構と厚生労働省が連携した学生支援担当教職員を対象としたセミナーの活用といった取組が行われています。
 文部科学省としては、今後とも厚生労働省と連携し、高校や大学におけるアルバイトをめぐる問題や労働関係法規に関する理解促進に取り組んでまいりたいと考えています。
 最後に、制度の周知についてお尋ねがありました。
 給付型奨学金を含め、奨学金事業について生徒や保護者、教員等にしっかりと周知を図ることは大変重要なことと認識しております。
 このため、平成二十九年度予算においては、資金計画を含めた奨学金の利用について生徒や教員等の理解を促進するために、スカラシップアドバイザーの派遣に係る経費などを計上しております。また、大学進学を含む進路については、早い時期から考えておくことが重要であり、この際、奨学金を含む教育費の支援策を理解しておくことはとても大切なことと考えます。具体的には、説明会やセミナーの開催、新制度に係るチラシの配布など、奨学金事業全体の周知、広報をしっかりと進めてまいります。(拍手)
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