参議院 内閣委員会

第211回国会 参議院 内閣委員会 第10号 令和5年4月20日

感染症対策の物品確保、経済支援等の備えについて

三浦信祐君
公明党の三浦信祐です。

国民の皆様の健康と安全を守るため、来るべき新たな感染症に対応する備えを不断に整え、強力な司令塔機能が必要です。そのための本法改正です。

実効性を確保する視点から総理に質問させていただきます。

感染症対策に不可欠な物品の確保は平素より取り組む必要があります。物品確保に当たり、設置される感染症危機管理統括庁の役割、そして国家安全保障局、NSS経済班の役割、両者の連携についてどのような関係で整理されるのでしょうか。重要物質の指定も関係してまいりますので、サプライチェーンチェックの枠組みも平素から整え、先手を打つ備えをしていただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(岸田文雄君)
新型コロナウイルス対応に関する有識者会議の報告書において指摘されておりますように、平時から医療品物資、医薬品、医療機器の安定的な生産及び供給ができるような仕組みづくりが必要であり、輸入依存度の高い医療用マスクなどの個人防護具については、経済安全保障の観点から、サプライチェーンの把握と一定の国内生産体制が必要であると考えております。

その点、この御指摘の統括庁と国家安全保障局経済班の役割ですが、統括庁の役割は、その司令塔機能を発揮し、各省庁における平時の準備を充実させる等であり、統括庁の総合調整の下、物資の需要状況を把握するなど、平時から感染症対策に必要な物資、物品の確保、万全を期してまいります。

また、国家安全保障局経済班の下、経済安全保障の観点から、国民の生存に不可欠であり、外部依存度が高い特定重要物資について、平時からサプライチェーンの把握に努め、強靱化を図っています。この感染症分野の取組においては、抗菌薬を特定重要物資に位置付けて、平時から事業者を支援する、こういったことにしております。

このように、両者は平時よりそれぞれの知見や制度を生かすことによって、有事の際には必要な物資が不足することがないように取り組んでいく、こうした連携が重要であると考えております。

三浦信祐君
まさに今回組織ができ上がりますので、この連携強化をしていただきたいと思います。

コロナ禍において、国民の皆様に行動制限への御協力をいただきました。飲食店を始め多くの事業者が経営持続性にダメージを受けたことを踏まえ、支援体制の必要性と適切性が今後の課題と言えます。

感染症発生下における行動制限等に伴う休業要請が生じた際、支援策、経済対策等の支援スキームについて、今後どのように検討がなされるのでしょうか。財源と平素からの準備について、今回の教訓を踏まえ対策はどのようにするのか、総理に伺います。

内閣総理大臣(岸田文雄君)
今回の新型コロナ対応については、特措法に基づく休業要請等の措置による影響を受けた事業者に対し、協力金等による必要な支援を行うとともに、特措法に基づく措置による影響を受けた事業者に限らず、国民生活や事業活動を守るため、累次にわたる経済対策等によって実質無利子無担保融資や持続化給付金等の支援策、これを講じてきたところです。

次の感染症危機への備えとして、今後特措法に基づく政府行動計画の改定に取り組むこととしており、今回の新型コロナ対応の経験を踏まえ、経済面での支援策の在り方についても計画に盛り込み、有事において適切な支援を迅速に講ずることができるように準備をしてまいりたいと考えております。

民間救急事業者の位置付けと質の向上について

三浦信祐君
国民の皆様の安全という視点で、是非それ取り組んでいただきたいと思います。

コロナ禍で、政府として、感染患者の移動に公共交通機関を使用しない要請によって、コロナ感染者の自宅、施設から宿泊療養施設、病院へ、あるいはその逆における搬送に民間救急事業者が活躍をしていただきました。事業認定は道路運送法にのっとっており、搬送能力と体制は大きな格差があるのが実態であります。加えて、民間救急の感染症対策は、現状、消防局単位での講習ベースのみであり、質の確保も欠かせません。

今後、民間救急事業者の活躍を想定するならば、感染症対策における役割、連携体制、位置付けの明確化を図るべきだと私は思います。総理、御対応いただけませんでしょうか。

内閣総理大臣(岸田文雄君)
今般の新型コロナ対応を踏まえると、感染症法に基づく入院勧告、措置に係る患者の移送については、平時から関係者間の役割分担、連携が重要であると考えます。

昨年十二月に成立した改正感染症法に基づき、国の基本指針において、医療機関への移送は保健所や消防機関との連携に加えて民間事業者への業務委託を図ること、平時から関係者を含めた移送訓練を実施することが望ましいこと、こういったことを盛り込む予定であります。

これを踏まえて、都道府県は予防計画において患者の移送体制の確保に関する記載事項を追加し、都道府県、消防機関、地域の関係者等から構成される都道府県連携協議会を通じて関係者間の連携を強化してまいります。

また、患者の移送業務を行う民間事業者の感染症対策の質の確保についても、民間事業者を始めとする関係者の意見をよく聞きながら、具体的な対応を考えてまいりたいと思います。

日本版CDCの能力向上と平時の連携体制について

三浦信祐君
御明言いただきまして、ありがとうございます。

次に、本法改正により、国立健康危機管理研究機構、すなわち日本版CDCが設置されます。日本版CDCによる科学的知見の政策反映へのスキームはどのようになるのでしょうか。平時からの情報集約と、大学、民間研究機関との連携が必須であります。日本版CDCの能力、信頼性、発言力と情報収集力、集約力、これを確たるものにするため、総理、どのように取り組んでいただけるのでしょうか。

内閣総理大臣(岸田文雄君)
まず、現在は、この感染症に関する情報の分析、研究については、国立感染症研究所や国立国際医療研究センターにおいて、国内外の大学や病院、民間企業と連携して行っているところですが、今回の法案では、この両者を統合して、国立健康危機管理研究機構、いわゆる日本版CDCを創設することにより、基礎から臨床までの一体的な研究基盤等により獲得した質の高い科学的知見を内閣感染症危機管理統括庁や厚生労働省に迅速に提供し、その政策決定に役立てる枠組みを構築することとしております。

日本版CDCにおいては、昨年の感染症法改正により強化される全国的な情報基盤の活用や地方衛生研究所等との連携により情報収集力を一層強化するとともに、外部専門家の研究成果や参画を積極的に受け入れることにより分析、研究の精度や発信力を高めることとしており、こうした取組を通じて科学的知見の質の向上、図ってまいりたいと思います。

保健所と医療機関との連携におけるDX化と統括庁の役割について

三浦信祐君
最後に、保健所と医療機関との連携におけるデジタル化が感染症対策の際のタスク軽減に直結をします。コロナ禍で得られた課題と知見、必要な具体策はいかがでしょうか。

その上で、統括庁が平時において新感染症への備えとして演習、訓練を行い続けていく中で、医療DXの進捗を把握することも必要だと考えます。現場と連携の上、必要な医療DX化への取組を支えるべきと私は考えますけれども、総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(岸田文雄君)
有識者会議の報告書では、新型コロナ患者の発生届は、当初は保健所がファクスで医療機関から情報を集めて集計しており、HER―SYSを導入して改善を図ったものの、感染症対応に必要なデータ入力に対応できない医療機関が存在した、こうしたことから、今後とも、新型コロナ対応にとどまることなく医療DXを推進し、平時からデータ収集の迅速化及び拡充を図るとともに、デジタル化による業務効率化やデータ共有を通じた見える化を推進することが必要である、こういった指摘を受けております。

これを受けて、昨年十二月に成立した改正感染症法等において、医療機関における発生届の電磁的方法による入力を努力義務にするなど、DX化、促進することとしております。

統括庁においては、厚生労働省と連携して、保健所と医療機関との連携におけるDX化の状況、これを確認するとともに、次の感染危機に備えるため、政府行動計画等の内容の見直しや訓練等を通じてPDCAサイクルを着実に推進することにより、計画的に感染症対応のデジタル化、これを推進してまいりたいと考えております。

三浦信祐君
終わります。

ありがとうございました。