第210回国会 参議院 内閣委員会 第6号 令和4年11月24日
FATF審査 法案提出理由と取り組みについて
三浦信祐君
公明党の三浦信祐です。
マネーロンダリング、テロ資金供与、拡散金融対策のために国際協調を図る上で重要な役割を担っている金融活動作業部会、FATFは、令和三年、二〇二一年の六月に開催された全体会合において、第四次対日相互審査報告書を審議、採択の上、八月に公表されております。
この報告を踏まえ、国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法の一部を改正する法律案として今回審議をすることになりました。
本法律案を提出をする意義、重要性と本法律案の早期成立の必要性について、谷大臣に伺います。
国務大臣(谷公一君)
委員御指摘のとおり、本法案は、昨年夏に公表されたFATF第四次対日審査報告書を踏まえ、国連安保理決議に基づく資産凍結措置、暗号資産への対応、マネロン対策等のそれぞれについて強化を図るものでございます。
日本との金融取引に対する信頼性を確保し、国際金融センターとしての地位を向上させるとともに、マネロン対策等で日本が抜け穴となることによって不正な資金の流れに関与することを防ぐ観点から、本法案は重要かつ早急な対応が必要であると考えております。
本法案につきましては、二〇二四年四月のFATFへの最終フォローアップ報告書提出時点で施行されていることが必要でございます。そうなると、本法案は事業者の体制整備等時間を要する取組を含み、こうした取組は法律成立後、施行までの一年半程度の周知、準備等の期間も必要とすることを踏まえれば、今臨時国会での法案成立が是非とも必要であると、そう考えているところでございます。
三浦信祐君
重要性について整理をしていただきました。
FATF第四次対日相互審査報告書において、法令整備状況、法制度の有効性でそれぞれ評価がなされた結果、二〇〇八年の相互審査以降、指摘事項に対するこれまでの取組が評価をされている項目がある一方で、三分類、すなわち通常フォローアップ国、重点フォローアップ国、観察対象国のうち、重点フォローアップ国とされました。
政府としてこの評価をどう受け止めているのでしょうか。また、これに伴って、報告書にて指摘された事項について、改善状況、三年間毎年報告義務が付けられております。これに対してどのように取り組んでいくのでしょうか。
政府参考人(内野洋次郎君)
お答え申し上げます。
日本、御指摘のとおり、第四次対日審査において重点フォローアップ国とされたところでございます。この審査報告結果につきましては、日本のマネロン等対策の強化に向け取り組むべき重要な課題を示されたものと、そのような受け止めをしてございます。
これを受けまして、政府としましては、審査報告書の公表と同日に関係省庁で構成します政策会議の設置及び行動計画を公表、関係省庁で緊密に連携して、マネロン等対策の強化に向け精力的に現在も取り組んでいるところでございます。
また、御審議いただいておりますFATF勧告対応法案は、FATFから法改正すべきと勧告された事項を盛り込んだものでございます。
これらの取組を着実に進めまして、我が国がむしろこのマネロン対策をリードいたしまして国際社会における安全保障や健全な経済活動を確保していくべきであると、このような気概の下で我が国のマネロン等対策の強化に向け取組を進め、可能な限り全てのFATFの指摘事項の改善につなげていくということが重要かと考えております。
三浦信祐君
しっかりと取組を進めるべきだと思います。
政府がFATF勧告に対応する、今御答弁のありました法的対処、また実効性確保がなされた場合、重点フォローアップ国から通常フォローアップ国への昇格の見通しとその時期判断はどのようになっていくのでしょうか。テロ予防等、対加盟国として対策推進というのは当然のことではありますけれども、第四次審査の結果、FATF加盟国三十か国のうち通常フォローアップ国は八か国であり、半分以上の十九か国が重点フォローアップ国となっております。
分類が上昇することによる世界的評価とメリットは、改めての確認でありますが、どこにあるのでしょうか。
政府参考人(内野洋次郎君)
お答え申し上げます。
FATFの仕組み上、個別の評価項目につきましては、フォローアップを受けまして評価が改善されるということはあるわけでございますが、御指摘の三つの大きなくくりであるこの重点フォローアップ等が、これがこの第四次審査の枠内で通常フォローアップ国になるとかそういった格上げがあるという、そういう仕組みにはなってございません。
したがって、この通常フォローアップ国になるかどうかという見通しという点につきましては、これは将来の話になるわけでございまして、具体的には二〇二五年以降、各国に対して順次行われる第五次審査、こちらがあるわけでございます。この第五次審査も視野に入れたところで私どもこの政策会議を設置しまして、もちろん審査基準もまだ、FATFの中で議論が進んでおるわけでございますが、そこにも積極的に関与して、マネロン等対策の強化に向けてしっかりと対応していくというところでございます。
また、こういったそのカテゴリーが上がることがどういう評価やメリットを持つかという御質問でございます。
この取組を進めてカテゴリーが上がるということは、そもそもそのFATFというところから評価される云々以前の問題といたしまして、やはり犯罪収益やテロ資金、大量破壊兵器に関係する資金等の移転を徹底的に封じ込めている極めて安全、安心なシステムを持った国であると、このような国際的な評価を得られると同時に、さらに、これを封じ込めることを先導し、各国にこれを慫慂していくことによりまして、我が国自身の安全保障や健全な経済活動の実現にも貢献することができると、ひいては、これがまさに国際金融センターという我が国が持っておる目標の、そういった地位向上の一助にもなっていくものと、このように考えてございます。
マネロン対策について
三浦信祐君
まさに国民の皆様に、この結果がイコール世界的な日本の評価につながり、そして生活安全のところにつながっていくと、こういう周知もきちっと大臣も含めてしていただきたいというふうに思います。難しい内容ではありますので、それがどう生活実感の中にあるかというのはなかなか分かりづらいことでありますけれども、その安心というのがこういう努力によって成し遂げられる、そして皆さんに協力をいただかなければいけないということ、これをしっかりとまた広めていっていただきたいと思います。
次に、マネロン対策について伺います。
FATF勧告では、マネロン罪の法定刑上限を、少なくとも日本で犯罪収益を最も頻繁に生み出す重大な前提犯罪と同水準に引き上げることに優先的に取り組むべきであるとしております。本法案ではマネロン罪の法定刑引上げをすることとしておりますが、この法定刑の合理性と必要性について政府に伺います。
政府参考人(保坂和人君)
委員御指摘のとおり、FATFからの勧告の中で、マネーロンダリング罪の法定刑の上限を、詐欺罪や窃盗罪、これは今の現行法で上限が懲役十年といずれもなっておりますが、それと同水準に引き上げるようにという勧告を受けたところでございます。
その上で、国内のそのマネーロンダリングに関する犯罪動向といたしましても、グローバル化、デジタル化に伴いまして、資金移転手段等の多様化によってマネーロンダリングの誘因ですとか発覚の困難性が高まっているという状況がございます。また、我が国の組織犯罪の実態としまして、いわゆる特殊詐欺事案を典型として、多くの事案でその犯罪収益のロンダリング、マネーロンダリングが行われているという、こういう実態もございます。
これらを踏まえますと、やはりマネーロンダリングに対しては、国際社会と協調しながらより強力に抑制を図るべき重要性がますます高まっていると認識しておりまして、この度のFATFからの勧告も契機といたしまして、より一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して、それによって強力に抑止、防止していくことが必要であると考えたことから、今回の法案におきましてはマネーロンダリング罪の法定刑を引き上げるということとしたところでございます。
三浦信祐君
そうしますと、日本における近年のマネロンの受理人員数、また没収金額はどうなっているのかということをまず確認をしておく必要があると思います。
その上で、マネロン事犯として、組織的犯罪処罰法の法人等経営支配、また犯罪収益等隠匿、犯罪収益等収受及び麻薬特例法に定める薬物犯罪収益等隠匿、また薬物犯罪収益等収受が犯罪化をしているというふうに整理をされていると承知をしております。
近年のマネロン事犯の検挙件数、推移はどのようになっているんでしょうか。これが、届出事項が増えていって数字が仮に増えたとしても、下げられるかどうか、この抑止力が効いたかどうかということに比例すると思いますので、是非御答弁いただきたいと思います。
政府参考人(猪原誠司君)
組織的犯罪処罰法と麻薬特例法を合わせましたマネーロンダリング事犯の検挙について御答弁いたします。
マネーロンダリング事犯の過去三年の検挙件数は、令和元年で五百三十七件、令和二年で六百件、令和三年で六百三十二件となっており、令和三年は過去最多となっております。
政府参考人(保坂和人君)
法務省からは、検察において受理した件数という形で御紹介いたしますと、令和三年までの三年間、先ほどと同じ期間ですが、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法のマネーロンダリング罪、今委員から御指摘のあったマネーロンダリング罪で検察当局が受理した人員というのは合計で一千三百七十五人でございます。
三浦信祐君
没収金額はいかがでしょうか。
政府参考人(保坂和人君)
失礼いたしました。
没収・追徴金額につきまして、同じく令和三年までの三年間におきまして、これはマネロン罪には限りませんけれども、通常第一審判決で組織的犯罪処罰法の犯罪収益等あるいは麻薬特例法の薬物犯罪収益等について没収、追徴が言い渡された人員数はまず一千二百七十三名、合計の金額は約六十七億円でございます。
三浦信祐君
決して少ない金額ではありませんので、この抑止力を図るということは、今回の法改正、そして実効性を担保するという意味では極めて重要だと思いますので、引き続き対応をお願いしたいというふうに思います。
FATF勧告の中で、NPOがテロ組織などに悪用されることを防ぐ法整備が、四段階中、最低評価となる不適合、NCとなっております。この不適合とされた評価の受け止めと、この評価を受けるに至った分析は必須でありますので、具体的な課題整理の結果はどのようになっているのでしょうか、谷大臣に伺います。
国務大臣(谷公一君)
御指摘のNPOの悪用防止に関する項目については、昨年八月のFATFの対日審査報告書において、一つはテロ資金供与に悪用されるリスクに基づいて監督をしているわけではない、二つにはテロ資金供与に関するNPOに対するガイダンスも最小限であるといった指摘を受けており、その結果、御指摘のように、一番低い不履行、NCとの評価になったものと承知しております。
これらの指摘を踏まえ、政府といたしましては、昨年八月に策定した行動計画において、一つは、NPOがテロ資金供与に悪用されるリスクについて適切に評価を行い、リスクに応じたモニタリングを実施すること、二つには、高リスク地域で事業を実施するNPOの活動の健全性が維持されるよう、テロ資金供与リスクとテロ資金供与対策の好事例に関する周知を行うことを政策課題として掲げ、関係省庁連携の下、必要な措置を講じているところでございます。
三浦信祐君
NPOは社会を大きく支えていただくために重要なところであります。一方で、これがテロ組織などに悪用されるということはあってはいけませんので、この実効性をしっかりと担保していただきたいというふうに思います。
本法案では、組織的犯罪防止処罰法の改正にて、犯罪収益等における没収できる財産の対象の拡大を図ることとしております。
没収対象財産の拡大することの合理性とその理由について伺いたいと思います。また、犯罪収益等の財産形態はどのように整理されているのか、確認をさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。
政府参考人(保坂和人君)
組織的犯罪処罰法第十三条一項におきましては、犯罪収益などを没収することができるということを定めておりますけれども、現行の規定は、その財産が不動産若しくは動産又は金銭債権であることが要件とされております。
他方で、近年、情報通信技術の進展や普及に伴いまして、財産の取得、保有、移転が暗号資産を始めとする新たな形態で行われるようになった一方で、取得、移転の容易性や匿名性の高さといった特性から、これが犯罪に悪用されて、犯罪による利益が新たな形態の財産として取得、保有、移転されることがございますが、こうした新しい形態の財産は、今申し上げました不動産、動産及び金銭債権のいずれにも当たらないとして没収の対象にならないという場合がございます。
そこで、犯罪収益等として保有されている財産につきましては、その種類を問わず没収することができるように、その不動産、動産、金銭債権という限定を削除するという形での改正をお願いしているところでございます。
この改正によりまして没収が可能になるわけでございますが、今申し上げた不動産、動産、金銭債権以外の財産といたしましては、暗号資産のほかには、例えば振替株式ですとか、あるいは電子マネーの一部についてが考えられるところでございます。
暗号資産対応、トラベルルールについて
三浦信祐君
今御答弁ありましたけれども、この暗号資産、そしてトラベルルールについて更に伺っていきたいと思います。
暗号資産取引は、世界的に広がりを見せる中で、インターネット等を活用した非対面取引が主であり、匿名性の高さゆえにマネロン、テロ資金移転に用いられる悪用リスクが高いとされております。
暗号資産交換業者が暗号資産移転を行う際に課せられる通知義務、すなわちトラベルルールについて、本法案では犯罪収益移転防止法改正によって規定をされることになっておりますが、具体的な通知事項、手順並びに義務違反の際の対処方法はどのようになっていくのでしょうか。また、加えて、トラベルルールの監督手法、金融庁の検査体制はどのようになっているのでしょうか。実効性確保の観点で御答弁いただきたいと思います。
政府参考人(柳瀬護君)
お答え申し上げます。
トラベルルールによって通知すべき事項は、FATF勧告及びそのガイドラインで定めておりますところ、これらに倣った形で犯罪収益移転防止法施行規則で定めることを検討してございます。
このFATF勧告等で定められている通知事項というのは送付人情報及び受取人情報でございまして、そのうち、送付人情報については、自然人の場合は氏名、住所、暗号資産のアドレス、法人の場合は名称、本店又は主たる事務所の所在地、暗号資産のアドレス。受取人情報については、自然人の場合は氏名、暗号資産のアドレス、法人の場合は名称、暗号資産のアドレスが定められております。
この通知の手段についてでございますが、こちらは暗号資産の移転を行う際、また事前に行う必要があるところ、これを適切に実行するため、送付元暗号資産交換業者において顧客の個人情報の安全が確保され、かつ受取先の暗号資産交換業者に適切に通知が行われる専用システム、いわゆるソリューションを導入することが想定されております。
また、義務違反の際の対処方法等についてでございますけれども、当庁における検査監督において暗号資産交換業者が通知義務を適切に実行していないことが判明した場合は、まずは必要な指導や助言を行うことが想定され、これによっても改善が見られない場合には法に基づく是正命令を発出することが考えられます。仮に命令によっても改善されない場合には罰則に処するといった厳格な措置を行うこととなります。
最後に、当庁としての監督事項についてでございます。
当庁といたしましては、今後の暗号資産交換業者に対するモニタリングにおいて国際的に協調して実効性のあるマネロン対策等を実施する観点から、トラベルルールに関しては、暗号資産の送付人である自らの顧客から必要な情報を取得するシステム等の体制が十分か、暗号資産の受取人となる顧客を管理するほかの暗号資産交換業者のマネロンリスク管理態勢の十分性を的確に評価しているかといった点をしっかりと検証してまいりたいと考えておりまして、このようなモニタリング、あるいは場合によっては立入検査に必要な人員についても適切な、適切な数を確保していくと考えております。
三浦信祐君
やはり最後、人の重要性でありますので、我々もしっかりと支えていきたいというふうに思います。
暗号資産取引は、国内間だけではなくて、国境のないインターネットを活用すれば海外との取引が生じるのは当然であります。その際、日本が整備するトラベルルールが世界で整備されているとは限りません。未整備や法解釈、体系が異なることも想定をされます。
本法改正によって、関連して、トラベルルールがない国との取引における対処方法はどのように整備されるのでしょうか。
政府参考人(柳瀬護君)
お答え申し上げます。
トラベルルールは、現時点では世界多くの国・地域で整備されている状況にはございませんで、我が国は比較的早いタイミングで法制化を行うこととなります。
こうした中で、仮にトラベルルールが実施されていない国・地域に存在する暗号資産交換業者との取引を禁止すると、暗号資産交換業者の業務の執行が困難になり、事業者に多大な負担を課すこととなります。このため、トラベルルールが実施されていない国・地域に存在する暗号資産交換業者との取引の禁止を求めることまでは予定しておりません。
一方で、そのような国・地域に存在する暗号資産交換業者から暗号資産の移転を受ける場合、トラベルルールに基づく通知を受けていないことから、必要な本人確認、本人特定事項が送られていないこととなります。このような状況はマネロン対策の観点から望ましくないことから、疑わしい取引の該当性について適切な判断を行わせるため、我が国の暗号資産交換業者に対し、暗号資産の移転元が誰なのかについて自らの顧客から情報を収集する等の方法で確認することを求めていくことを検討しています。
なお、各国・地域はFATF勧告にのっとってトラベルルールの整備を進めているものと承知しており、トラベルルールに基づく暗号資産交換業者間の取引は着実に増加していくものと考えております。
三浦信祐君
セキュリティーの部分でトラベルルールは、世界に先駆けているということは大変重要なことだと思いますので、しっかりとこれの実効性も担保できるようにやっていただきたいと思います。
トラベルルールは、暗号資産取引の業界が本年四月から自主規制を定め実施をしていると承知をしておりますが、そのような状況下であえてトラベルルールを法律に規定することの必要性、そして審査報告書、報告義務付けとの関係はどのようになっているのでしょうか。
政府参考人(柳瀬護君)
お答え申し上げます。
御指摘のとおり、業界団体である日本暗号資産取引業協会では、今回の法改正に先立ち、二〇二二年四月に自主規制規則に基づくトラベルルールを開始しております。これは早期にマネロンリスクの低減を図るための重要な取組であると考えていますが、トラベルルールの一部の取組を試行的に行うものと位置付けてございます。
FATFからは、昨年の第四次対日相互審査における指摘として暗号資産交換業者をトラベルルールの対象とすることを求められておりますが、このような対応を漏れなく、かつ実効性を担保する形で進めるためには法整備により対応する必要があると考えてございます。
三浦信祐君
法整備に際し、暗号資産取引業者が介在した取引の場合にトラベルルールを適用することができるものの、個人間取引の場合には対象範囲に入りません。ここへの適用は困難が伴うと考えております。
そこで、暗号資産取引での個人間取引の実態把握の状況、体制はどのようになっているのでしょうか。調査自体大変難しいと私は考えております。その上で、犯罪の温床リスクを回避するために、不正防止対策をどのように進めているのでしょうか、伺います。
政府参考人(柳瀬護君)
お答え申し上げます。
暗号資産の個人間取引については、現在、本人確認等の義務等、金融庁の監督の対象と法令上なってございません。このため、取引の全体を把握することは困難でございます。
ただし、現時点におきましては、暗号資産は直接の支払手段としての普及は限定的でございますことから、暗号資産での多額の支払等は最終的には業者を経由して法定通貨に換金されることが一般的と考えられます。
このため、現在、FATFとしては、顧客と接点を持つ事業者に対してFATF基準を早期に実施することにより、業者間及び業者と個人の間の取引のリスクを低減し、現在においても取引の決済の軸となる法定通貨の扱いを適正なものとすることができると考えております。我が国においても、このような観点から、暗号資産交換業者における適切なマネロン対策等の確保に注力しているところでございます。
今後とも、暗号資産に係るマネロン対策等の強化に向けて、FATF等における国際的な議論の動向も踏まえつつ、しっかり取り組んでまいる所存でございます。
三浦信祐君
しっかりと合理的に取り組んでいただきたいと思います。
暗号資産取引において消費者トラブルが生じた際、消費者庁等に相談があっても、現実的な対応は警察の皆さんが実施をすることになると思います。暗号資産トラブルの相談を受ける警察庁の体制状況と今後の整備について伺います。
政府参考人(友井昌宏君)
三浦委員の御質問にお答えいたします。
暗号資産をめぐるトラブルについては、金融庁、消費者庁と連名でトラブルに対する注意喚起を行うとともに、当庁のホームページでも、暗号資産に関連した投資名目でお金をだまし取られたとの相談を紹介し、困ったときは警察等へ相談するよう呼びかけております。
警察の相談窓口としては、専用電話シャープ九一一〇を全国統一番号として設置しており、いただいた相談内容に応じて関係する部署が連携して対応することとしておりますが、暗号資産をめぐる相談が寄せられたときは、これを捜査の端緒とするほか、他の専門機関を紹介するなどしております。
警察庁といたしましては、引き続き、金融庁や消費者庁等関係機関と緊密に連携するとともに、各種研修等を通じて相談や捜査に従事する警察職員の知識、能力を高めるなど、暗号資産をめぐるトラブルに適切に対処できるよう都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。
疑わしき取引について
三浦信祐君
是非、これまでになかったようなことがあった場合には相談をしっかりと受けていただける、そして、人員確保のみならず、体制を整えていただくということは不断にやっていただきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。
次に、疑わしき取引について伺います。
先ほどもありましたけれども、本法律案ではマネロン対処並びに疑わしい取引についての届出義務を課す対象において拡大がなされております。行政書士、公認会計士、税理士を対象追加としたことの狙いはどのようなところにあるのでしょうか。これについて伺います。
政府参考人(猪原誠司君)
今回の法改正におきましては、令和三年八月に公表されましたFATF第四次対日相互審査報告書におきましても、士業者が疑わしい取引の届出義務の対象になっていないことは日本のマネロン、テロ資金対策の有効性を著しく損なう旨勧告されているなどの状況にあることを踏まえ、法制定時の附帯決議や士業者に対する疑わしい取引の届出義務に係る懸念にも配慮した上で、疑わしい取引の届出等について士業者に対して義務を課す規定を整備するものであります。
三浦信祐君
犯罪収益移転防止法に基づく疑わしき取引の届出事例の受理件数が増加をしていく中で、どのように捜査に活用されているのでしょうか。また、届出義務拡大に伴って件数増加に対応できることも想定し、警察庁の対応可能体制について十分な備えを図るべきだと考えますが、いかがでしょうか。
政府参考人(猪原誠司君)
令和三年中における都道府県警察等の捜査機関等に対する疑わしい取引の届出に関する情報の提供件数は、五十二万四千四百六十二件となっております。提供を受けた都道府県警察におきましては、疑わしい取引に関する情報を犯罪による収益の発見、犯罪組織の実態解明及びマネロン犯罪等の捜査に活用しているところであります。また、現在、警察庁に置かれている日本のFIUであるJAFICは約百人の職員により構成されておりますが、これらの要員によって、これまで年間五十万件超寄せられる疑わしい取引に関する情報の分析を的確に行っております。
疑わしい取引に関する情報の分析にAIを活用し、業務を合理化するなど効率的な対応に努めており、今後の情勢の変化にも対応できるよう、引き続き、能力向上、体制整備に努めてまいりたいと考えております。
今後の取り組み、対策について
三浦信祐君
最後に伺います。
今回の対応は第四次対日相互審査に基づくものでありますが、必ず次の審査が実施をされます。現状、二〇二五年以降実施の第五次対日相互審査への対応について、政府として検討している課題、対処の想定等についてどのように取り組むのでしょうか。谷大臣に伺います。
国務大臣(谷公一君)
第五次審査では、まあこれからのことでございますけれども、FATFの勧告の改定や審査基準の厳格化のほか、マネロン、テロ資金供与、拡散金融対策が効果的に機能しているかという有効性評価が更に重視されることとなると承知しているところでございます。
引き続き、関係省庁において、マネロン対策等のために設置した政策会議の枠組みを適切に活用し、将来の来るべき第五次審査に向け、政府一丸となって我が国のマネロン対策等を強化、発展させていくことに全力を挙げてまいりたいと考えております。
三浦信祐君
有効性評価が多分問われるということでありますので、この法律改正によって体制整えていただいて、しっかりと取り組んでいただきたいということをお願いさせていただいて、質問を終了します。
ありがとうございました。