重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案について
三浦信祐君 公明党の三浦信祐でございます。
今日は、三人の参考人の先生方々から貴重なお話をいただきました。順次御質問させていただきたいというふうに思います。
まず、吉原参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
様々議論を重ねていただいた結果、今こういう法案として出てまいりましたけれども、本法案の、シンプルに聞きますけれども、安全保障上、国の安全を阻害する行為を抑止する抑止力、そういう視点での効果、これをどうお考えになられていますでしょうか。
参考人(吉原祥子君) 抑止力になると確信しております。
これは、一キロ以上、一キロより遠いところで問題が起きたらば対象にならないので使えないじゃないかという声も当然あると思います。しかし、この有識者会議でも、まずは規制の範囲は最小限にして必要最低限のところから始めようと、それが妥当、必要であると。私権制限については、あるいはプライバシー権の保全ということについては、非常に委員の皆さん、まずそれが、プライバシー権の保全とそれから私権制限は最小限にとどめるということ、それが大前提となっていました。
その中で、自由な経済活動を保障し、そしてその土台としての安全保障を実現する上では、こうした基礎的な調査が行え、そして、万々が一何か起きたときには規制を行える手だてというものを持つということそのものが抑止力になるだろうということは、その委員会の会議の中でも繰り返し議論がありましたし、私はそのように確信をしております。
三浦信祐君 同じく半田参考人にも、様々安全保障についての御知見があるという視点で、国の安全を阻害する行為を抑止するという部分で抑止力というふうに今単純に使っておりますけれども、抑止力にはいろんなやり方があると思います。当然、正面装備を強化をする、人的リソースをきちっと整える、法的基盤を整える、そういう観点から置いたときのこの法案の抑止力ということについての御知見を是非伺いたいと思います。
参考人(半田滋君) およそこの抑止力と今回の法案との関係というのは余りないのではないかというふうに私は見ています。
というのは、今日述べましたとおり、防衛省が既に六百五十か所の土地をちゃんと調べた上で自衛隊の運用、機能を阻害するものはなかったということをおっしゃっていますし、そのうち七筆ですかね、外国人の土地もあったということも認めています。しかし、実際に機能を阻害する理由、事態というものが起きたことはないと。
実際のところ、まず、我が国には普通に警察機構があって、そしてまた、自衛隊の皆さんも自分たちの土地をしっかり守るというような体制を取っているわけですね。したがって、現在の自衛隊の在り方や現行法の警察組織の在り方などからも、実際のところ、この土地取引をめぐる不穏な事態というものは、既にもうそこは心配は要らないのではないかというふうに思っています。
むしろ、やはりここで懸念されるのは、土地の流動性が落ちることによってその土地価格の下落などの財産の目減り、そちらの方が心配だし、それより何より、やはり個人情報が誤って不当に収集されていくということの方がより大きな問題であろうと。備えあれば憂いなしという言葉がありますけれど、この法律に関しては全く当てはまらないというふうに思います。
三浦信祐君 お互い違う意見をはっきり明確に分かったところでありますけれども、世界がワクチン接種が進んで経済回復が日本より先に進んでいくという視点のときに、日本の経済回復をしっかり図るということは当然ですけれども、土地の位置付けがどう世界から見られるかということから考えると、ありとあらゆるバランス感覚を持って経済活動と安全保障を考えなければいけないというのは、従前の延長線上で考えてはいけない世界が来ているという視点は私は絶対に持ち合わせるべきだというふうに思います。
その上で、吉原参考人に伺いたいと思います。
安全保障と経済活動のバランスは極めて重要だと思います。片方がウエートが付き過ぎればどちらかを反対側に揺り動かすという働きが連続するということになり過ぎると、これは日本の立ち位置というのも大変難しくなってくるんだろうなというふうに思います。その上で、安全保障という位置付けと経済活動をバランスを取るという位置付けにおける本法律の果たす役割、これについての御知見を是非いただければと思います。
参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
安全保障と経済活動というのは相反するものではなくて、両輪だと思います。あるいは、安全保障こそ、安全保障があってこその経済活動であると思います。
安全保障によって守られるのは何も自国民だけではなくて、日本に来てくださる、住んでくださる外国の方、投資をしてくださる方、そうした方も、日本の安全保障が守られることによって安全な生活や投資活動というものが行われるわけですから、安全保障というのは、もちろん自国民を第一とはしていても、この地域で一緒に暮らしていく人たち、投資をしてくださる方々全てにとっての有益、必要なものだと思います。それがあってこその自由な経済活動だと思いますので、どちらかがプラスに転じればどちらかがマイナスになるというものではないというふうに思っております。
三浦信祐君 はっきり分かりやすくお話をいただいて、ありがとうございます。
従来、日本における土地利用というのは善意の経済活動であり、これは今後も変わらないというふうに思います。本法案では、ここに規制を掛けていくわけであります。骨抜きではなくて、実効性の確保がここまでやる以上は重要なことなんだというふうに私たちは考えております。
すなわち、立法する、そして運用していく過程で、実際には期間とか時期が不明瞭だったり、調べると言っておきながら全然調べられない、徹底がなされない、国民の理解も得られない、そういうことがあることの方がむしろリスクであって、調査範囲を膨大にしてしまうと実効性も危ぶまれてしまうであろうというのが僕は大事なポイントなんではないかなというふうに思います。
だからこそ、今回は範囲をきちっと絞った上で、見直し規定も入れ込んで、やり過ぎてはいけないと、そして、必要なことが発生するならば、きちっとそれを国民にオープンソースの中で議論をしていくということが大事で、そして、これがどこの地域になるかというのはこれからの過程の中で、官報でもきちっと公表されていくということだと思うんですけれども、安全保障上重要な土地だったり重要なインフラの範囲を絞り実行していくことが、これが今議論の中であると思うんですけれども、現状、日本が持ち合わせているリソースでどの規模が現実的かなというところ、これ、吉原参考人、是非お伺いしたいと思います。
参考人(吉原祥子君) それは大変難しい御質問でして、私にはこれといった確答がございません。申し訳ありません。
ただ、これはあくまでも調査を行うための法律であって、調査のための調査ではなくて、安心するための調査でもあると思います。調査をした結果、やはりほとんど何も問題なかったじゃないかということも当然あるわけです。それで国民がああよかったというふうに思えればいいわけですし、何か規制をすることは最初の目的ではなくて、あくまでも安心をするというためのものであるというふうに考えております。
そして、不動産登記簿というものは公開情報です。誰であっても、私であっても、数百円の手数料でインターネットを使って登記簿情報というものは入手ができます。そうした公開情報をまずは活用しながら、それでも分からなければその先の調査権限を行政に持っていきましょうということでして、実はそうした、例えば固定資産課税台帳を調査に使えるといったことは、空き家対策や農地の対策、所有者不明土地対策などにおいては、必要な限度においてそうした行政が持っている情報を使えるということは既にできるようになっております。今回のこの法律では、そうしたことを安全保障上でも必要に応じできるようにしていきましょうということだろうと思います。
御質問に戻りますと、その明確な範囲というものは私ではお答えしかねます。申し訳ありません。
三浦信祐君 まさにその範囲ということが我々国会としてきちっと議論をする機会を今後また改めてつくっていかなきゃいけないということを逆に御指摘をいただいたと思いますので、政府に丸投げをするつもりは更々ないと。ましてや、私たちもきちっとそこを整える必要があるということを逆に教えていただいたというふうに理解をします。
その上で、三人の参考人の先生方々に端的にお答えをいただければと思うんですけれども、土地利用目的把握というのが本案のポイントになると思うんですけれども、的確な情報を得る実効性と経済活動への負担を掛け過ぎないようにするということ、利用目的の整理が私は必要だというふうに考えております。
その上で、土地利用者の負担となる報告徴収は限定的に行うとの答弁が、私も本会議で大臣からありました。
その上で、土地利用についての報告を求める際の目的表現の詳細の程度、追加調査をする際の判断基準についてというのがこれ大事なんだというふうに私は思います。例えば、住居に処するというふうに書いただけでは何も分からないという可能性もなきにしもあらずだと思いますので、この辺については是非御知見を御披露いただければというふうに思います。
委員長(森屋宏君) 三名の方にお聞きしますか。
三浦信祐君 はい、お願いします。
参考人(吉原祥子君) その報告徴収を求める際の明確な、依頼の際のその目的の言い方ということですか。もう少し御説明をいただいてもいいですか。
三浦信祐君 例えば、インターネット上でプルダウン式で三つぐらいしか選択肢がないような表現では、とてもその調査をした形にはならないと。要は、目的を得るとしたときに、どういう表現をしっかりと整理をすべきなのかと。この土地を何に使いますかという目的表現についての、どこまで細かいところを求めるべきなのかということについて、何か御知見があればと思って、お伺いしたいと思います。
参考人(吉原祥子君) それは、例えば北海道庁などが、あるいは林野庁が行っている調査において、資産保有を目的とするとか現状維持といった回答が多いということからの御質問なのでしょうか。
そうなりますと、やはり実態を把握をすることが趣旨ですので、そうしたどうとでも取れるような回答では、安全保障の観点から守ると、観点から必要な情報を得るということの達成にはならないと思いますので、そこについてはもうちょっと具体的な回答が必要なのではないかなというふうに思います。
ただ、そこもやはりその個人のプライバシー権の問題が強く関わってきますので、そうした回答を求める際に、どのような文言が適切で、また、どのような回答範囲が許容されるのかということは、まさに行政法の先生とか法律の専門家の知見が必要なところであるというふうに思います。