学校での児童や学校関係者の「食」の教育について
三浦信祐君 公明党の三浦信祐でございます。
今村先生、中村先生、天笠先生、今日は、貴重な御意見を頂戴しまして、誠にありがとうございます。
生きていく上で絶対に欠かすことができない食で、また、食の安全があってこそ、健全な社会、生活の礎となっていくものだと思います。政治はしっかりその生活を守っていくことが大切な仕事だと思います。その点から何点か教えていただきたいと思います。
私は今子育ての真っ最中で、子供の食の安全については大変気になるところであります。そこで、大学の教育現場におられる今村先生、中村先生に、食の安全について敏感な子育て世代の代表として伺わせていただきたいと思います。
子供が将来にわたって健康に生活していくために、また、食文化の継承や社会性の涵養の観点からも、学校における食に関する指導の充実が求められています。
現在、学校給食は、教育活動の一環として位置付けられております。学校給食法では、第二条に学校給食の目標として七項目規定をされています。中でも、一号では適切な栄養摂取による健康の保持増進を図ること、七号では食料の生産、流通及び消費について正しい理解に導くこととなっております。
さらに、学校給食の現場では、学校給食法の目的とは別に、食中毒の問題や近年では食物アレルギーへの対応など、教職員や栄養士は様々な食の安全に向き合わなければなりません。まさに、先ほど今村先生がおっしゃられました、生活の中でのリスク分析の枠組みの中にあると思います。
今回のTPPの審議の中では、食の安全として、輸入食品に係る農薬や添加物の規制の在り方、肥育ホルモンや遺伝子組換え食品などへの懸念などが議論をされております。
学校給食だけではなくて、家庭での食事や外食における食の安全は社会でも関心のあるところですけれども、今後、教職員や栄養士も、このTPPを契機として食の安全を意識して子供たちと接することが重要と考えます。給食の場合には、そこに表示もなければ、安全なものであるという信念に基づいて皆さんは食べられるわけだからです。これには、このところに関わられる養成課程の段階から食の安全についての知識を身に付けていくことが大切だと思いますけれども、この点について今村先生、中村先生に御所見を伺えればと思います。
参考人(今村知明君) 御質問ありがとうございます。
学校での食の教育についての御質問ということで、今、学校教育の中では昔に比べれば食についての教育が随分充実してきてはおりますけれども、まだまだ不十分の状況であります。
例えば、典型的な事例としまして、先ほどジャガイモの事例を示しましたけれども、各学校でジャガイモの栽培の実習をやっているケースが多々あります。その結果として、そのジャガイモを食べた結果、食中毒を起こす学校が毎年あります。それはなぜかというと、青芽が出ている状態のジャガイモを食べるからですね。なぜ青芽が出るかというと、収穫してすぐ食べるわけではなくて、少し置いておくと芽が出てしまって、食べてしまうから起きるんですね。これは、食育の教育をし始めているいいことに対して、食の安全性についての認識そのものがまだまだ学校に浸透していないというふうな事例だというふうに思います。
そういった意味で、食の安全、食の提供に関しての教育が重要だということは分かりつつもまだ浸透していないという状況で、これをいかに実りあるものにしていくかというのが今後の課題だと思いますし、現実に一生食べ続けるものについての知識をもっと正確にやっぱり知っていただく必要があると思いますので、何が毒性があって何が毒性がないのかということも含めて、例えばキノコなんかでも、山に入ってキノコを食べて亡くなる方というのは毎年のようにおられます。じゃ、そんなものを食べていいんですかということをやっぱりちゃんと子供の頃から教えていくということがとても重要だというふうに思います。
以上です。
参考人(中村幹雄君) 私たちは薬剤師を教えているんですね。僕も食品安全学とそれから数学をやっているんですが、学校薬剤師というのが学校教育の中にありまして、薬剤師たちに何を教えているかというと、あなた方はほかの方々からは食品について知っていると思われているけれども、本当は知らないんだよということを教えているんですよ。
すなわち、どういうことかというと、加工食品は表示見たって分かりません、表示されていないものが山ほどあるんですね。やっぱり、学校の中で不幸にして亡くなった、アレルギーの亡くなった事例もありますけれども、実際、加工食品を見たときに、表示されていないけれどもアレルギーになるような例えば添加物、増粘多糖類なんかあるわけですね。だから、今の表示制度であれば、分からぬものが、隠れているものがいっぱいあるから、アレルギーになったということでプリックテストをやってほしいと医者へ持っていったとしても、その加工食品を見たって薬剤師ですら分からないんだよと、まずそこを教えているんですよ。
だから、そういう実情だということを学生が覚えて更に勉強していく、そして学校薬剤師としてお役に立てるという、そこを目指していると、こう申し上げたいと思います。
消費者の食品表示を含めた今後の食品安全への理解について
三浦信祐君 ありがとうございます。
そういう点からおきますと、実は私の問題意識としては、消費者への食品添加物、また食料品購入に際しての選定について理解するための方法の現状と課題認識、この辺が大事なんじゃないかなというふうに思います。消費者が、もう売っているものは安全なものだと信じて購入しますし、それを調理して食べることになると思います。
一昔前、合成保存料、合成着色料は一切添加されておりませんという表記があったことは記憶に新しいと思います。それを見て、ならば安心だとして商品選択をした記憶も私自身ございます。しかし、何がどう健康に影響するかなどについて決して理解があったわけではありません。消費者が、食の安全について漠然と入ってくる情報だけではなくて、正確に判断できる情報を得る、学べる機会が重要だと思います。
今回のTPPの協定締結において、現在表示されている食品表示について私は理解が進むチャンスだと捉えております。そうでなければ、例えば海外から入ってきたものは不安、国産品が安全と、このような認識のままでは消費者の食料選択において正確性を欠いていくものではないかと思います。
一方で、食品表示が複雑となってしまえば、生産者、製造者及び流通・小売業者にも大きな負荷を与えてしまいかねません。加えて、合理性に問題が生じて、WTOであったりISDS条項に抵触するなどの議論にまで発展しかねません。
今後どのようにすれば消費者が食品表示を含め食品安全についての理解を深めていけるか、天笠先生、中村先生、そして今村先生の順番にお伺いできればと思います。
参考人(天笠啓祐君) どうも御質問ありがとうございます。
大変重要な問題だと私も思っておりまして、消費者の立場からしましても、やっぱりこれは本当に一番今関心の高い課題だというふうに考えております。そういう意味では、やはり食品表示というのが消費者にとってみますと、食品表示というのは、最終的にといいますか、最初であり最後である、こういう非常に決定的なものであります。そういう意味では、本当に厳格な表示というものをするという、そういうことがやっぱり大事だと思うんですね。それによって、それがない限りやはり選択する権利ができませんので、ですから食品表示をきちっとしていただきたいなというのがあります。
特にやはり消費者の要望の強い食品表示というのが、先ほどから繰り返し出ております遺伝子組換え食品の表示制度ですね。これはやはり非常に関心が高いわけですね。現在のところ、本当に僅かな食品しか表示されていないという現実があります。それから、加工食品の原料原産地表示ですね。これについては今、国会の方で審議されておられますけれども、そういう加工食品の原料原産地表示。それから食品添加物の表示ですね。この三つはやはり非常に関心の高い領域であります。これは直接食の安全につながる表示ですので、これをやはりきちんと表示していただくという仕組みづくり、それが前提、それがない限りやっぱり消費者は選べませんので、幾ら消費者教育をやったとしても駄目だと思うんです。
それから、やはりもう一つ食品表示で問題になってくるのは、外食、レストランですとかあるいは対面販売で表示されていないことなんですね。これもやはりレストランに行ってどこも表示が出ていないわけです。実は昨日スイスの方が来られまして、スイスではいわゆるレストランのメニューに原産地表示があるんです。そういうような取組、こういうのも是非とも、やっぱりこれは国会でなければできないものですので、是非皆様方のお力で実現していただけると有り難いなと思います。
参考人(中村幹雄君) 食品添加物を事例にして申し上げたいと思います。二点です。
一点は、いわゆる全面表示ということになったけれども、日本はコーデックスのルールに比べたら完全におかしいというのか、国際的なルールを逸脱している表示制度なんですね。すなわち、コーデックスでは物質名表示と用途名を併記する、香料とか加工でん粉を除いてはそれが大原則です。日本は消費者の要求が、用途が知りたいと、着色料使っている、保存料使っている、それが知りたいから用途だ用途だと消費者はおっしゃったんですね。だから、表示制度は、用途が前面に出ていて物質が後ろに行っちゃっているという表示制度なんですよ。だから、国際的に逸脱したというおかしな制度になっちゃっていますから、それは最初の予定というのか、全面表示をしっかりやってほしいと。
それと併せて、先ほどの天然添加物ですけれども、平成七年の国会の附帯決議がありまして、既存添加物の安全性については速やかに確認することとなっているんですね。平成七年で、既存添加物名簿ができたのは平成八年です。二十年たちました、速やかにやるということになっていますが。これ行政に言ったら、国会のそういった附帯決議は指針にすぎないんだと、こうおっしゃっておられまして、そういえば、ともかくとして、速やかにやっぱり安全性確認をして国際的にも通用するような添加物にすると。要は、添加物、今何本か分かれていますからね。指定添加物、既存添加物、一般飲食物添加物、香料と分かれていますから、そうじゃなくて、添加物は一本にするということで国際的な基準に早く合わせると。元々それが平成七年の国会、食品衛生法大改正の目的だったはずなので、早く実現していただきたい。
最後にですけれども、事業者が一々負担が多いといいますが、私、事業者だったんですね。私どもの会社は二万アイテムのものを販売していました。全部コンピューターでやっていますから、全然負担ないですよ。何が変わったって、原料が変わったって、ぱっぱっと全部できちゃいますよ。だから、負担負担とおっしゃるけど、おかしいと僕は思っています。
こういうように僕みたいにやれるという人が委員に全然、食品表示部会でも呼んでもらえないから。実際やれるんですよ。事業者でやれるんだから、やれるという人を事業者の中から選んでもらうと。利害関係者を公平に選んでほしいというのが意見ですね。
食品表示法をやったときに、添加物業界が誰もあそこに入っていなかったんですよ。だから、今の基準めちゃくちゃですよ、僕が言うのも変ですけれども。めちゃくちゃな基準作っちゃっています、添加物のところは。誰も知っている人いなくて議論やっているんですもの。もう一度あれもちゃんとやり直していただきたいと思っています。
誠に口幅ったくて失礼しました。
参考人(今村知明君) 食品表示、どう持っていくかという御質問ですけれども、私、昔、食品表示の行政に携わっていた関係がありまして、皆さんとも御縁があったと思います。もう外れて十五年以上たっているので、昔の話等も含めて考えていきたいと思います。
昔に比べて食品表示は今はるかに複雑になっていまして、ちょっと勉強したぐらいではあれは理解できないという状況であります。実際、学校教育であれを教え切るのは極めて困難という状況であります。先日、表示のある本を書いたんですけれども、そのためにも物すごい勉強量が必要で、複雑怪奇な制度になっていると思います。
これは、できるだけたくさんのことを厳格に書くべきだという全く原則のとおりのことなんですけれども、いや、それをやればやるほど書く量が増えていくと。一番難しい表示は幕の内弁当だと思うんですけれども、普通に全部ルールどおりに書いたら中身が見えないぐらいの表示になってしまうという状況で、それをぐっと書ける範囲に抑えるということが今表示が抱えている最大の課題なんですね。
じゃ、何で絞っていくんですかというと、私は、基本的には追いかけられるものでないと、空文化してしまうと意味がないと思います。代表的なものとしては、ちゃんと検知ができて、ちゃんと処罰ができるようなルールがあるもの、そしてもう一つは、ちゃんと追いかけられるようなものを、そういうものにちゃんと絞っていくべきだと思うんですね。むやみやたらに何でも書いたらいいというふうにはならなくて、それはより表示制度を駄目なものにしていくと思うので、厳格な制度として運用できるもので、そして余り表示が大きくなって本体が見えなくなるようなことがないような表示に抑えることということがとても重要なことだと思います。
それが制度上の問題で、それはさておき、実際に複雑な表示になっていますので、学校ではもっと食品表示について教えるべきだというふうに思います。それは、教えられる人も今ほとんどいないという状況なので、より食品表示について解説したことを国民に対して国も発信していってほしいというふうに思います。
今後の食品衛生や農製品の安全性の確保について
三浦信祐君 TPPを議論するに当たって、やっぱり様々な問題があるということも分かりました。しかし、これをしっかり進めていくことによって人口減少社会に対応していく、そのTPPを推進するという立場で、一つ今村参考人に伺いたいと思います。
TPPによって自由貿易が加速をしていきますと、日本の食品を、また攻めの農業で農産品を世界へどんどん輸出していこうということが期待をされております。国際競争にさらされていく中で、国際的な食品安全規格に対応することも当然求められてくることになります。しかし、食品安全基準が必ずしも世界の中で日本が最も厳しい分野と言えるとは言えないというのも事実だと思います。
食品安全基準への生産過程での対応が遅れていることも様々報道されていると思いますけれども、これによって輸出が困難になってしまうという事例が出てくる可能性があります。具体的には、グローバルHACCPに対応しているかどうか、またグローバルGAP、これもちゃんと対応できているかどうかという課題が生まれてくると思います。
この食の安全を担保する上でも、また積極的な輸出戦略を描く上でも、日本の農水産業、また六次産業化も進んでいる中で、食品産業がこれらに対応していく手だてが重要だと思います。当然、予算措置も必要だというふうにも考えますけれども、今先生の中で現状の把握と今後の展望、その辺について御意見を伺えればと思います。
参考人(今村知明君) 御質問ありがとうございます。
今後の食品衛生や農政の安全性の確保についてということなんですけれども、私は、日本は世界に比べれば食品安全の基準が非常に厳しい国だというふうに思います。アメリカも厳しい面はあるんですけれども、あのFSMAという法律ができるまでは国を統一した安全法というのはなかったんですね。そういう意味じゃ、日本よりもアメリカは全体としては遅れていた。進んでいる州は進んでいるんですけれども、遅れている州は果てしなく遅れていたという状況で、平均で見たら日本の方が進んでいるというふうに思います。
じゃ、その日本の平均的な姿とアメリカの進んだ州とを比較したときには、例えばHACCP一つを取ってみても、日本は全ての事業所がHACCP的に動いているわけではありません。HACCPを入れるかどうかという大前提として、心構えの問題が大変重要で、HACCPというのはあくまで手順書であって、食中毒や事故を起こさないための心構えをいかに手順に落とすかというのがHACCPの考え方なんだと思います。その考え方が日本全体に浸透していくということがとても重要だと思いますし、それは、農業でのGAPを行う際にも、手順、あれも手順書なんで、その中でどれだけHACCP的な考え方をGAPの中に取り入れていくことができるかということが日本全体の大きな課題だというふうに思います。
現実にGAPとHACCPは独立して動いているので、でも農産物はGAPからHACCPに本来つながっているものですから、これはちゃんとつながった制度になっていくということがとても重要なんじゃないかというふうに思います。
三浦信祐君 ありがとうございます。
今のGAPからHACCPにつながっていく、こうでないと、例えば六次産業、いい食べ物ができたとしても、HACCPのところで影響を及ぼして輸出ができないであったり、また、HACCPは対応しているけれども、その製造プロセス、生産プロセスが分からないということによって生産者に利益が行かないようなことがないようにするために今後もしっかり検討しなきゃいけないということを教えていただいたと思います。
今後、食の安全については、TPPがこの一つのきっかけとなって社会全体で食の安全を追求できるようなところにしっかり汗を流していきたいと思います。
今日は大変貴重な時間をいただきました。ありがとうございました。